映画を観る前に知っておきたいこと

ザ・コンサルタント
自閉症のアンチ・ヒーロー

ザ・コンサルタント

本業、腕利きの殺し屋。
職業、会計コンサルタント。

 田舎のしがない会計士の仮面を被り、その天才的な頭脳で世界中の悪党たちの裏帳簿を仕切る男クリスチャン・ウルフ。本名、所在、私生活、全てが謎に包まれた彼の正体には誰も辿り着けない。

 全米初登場第1位。米国財務省を巻き込みながら裏社会の金と暗部に迫るサスペンス・アクション。総合格闘技を題材にした『ウォーリアー』(11)で知られる監督ギャビン・オコナーが、巨大企業を相手に危険な仕事に身を投じていく新たなアンチ・ヒーローを描き出す。

 主人公ウルフを演じたのは2013年アカデミー作品賞に輝いた『アルゴ』(12)のベン・アフレック。天才的な頭脳と完璧な殺人術を併せ持ち、さらに自閉症に苦悩するという難しい役柄に挑む。また、『ピッチ・パーフェクト』シリーズのアナ・ケンドリック、オスカー俳優J.K.シモンズら豪華キャストが脇を固める。


予告

あらすじ

 田舎町のしがない会計士クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)のもとに、突如舞い込んだ大企業からの財務調査依頼。早速、彼はCFO(最高財務責任者)のエドに15年分の会計帳簿の開示を求めた。翌日、クライアント側の若い会計士デイナ(アナ・ケンドリック)が膨大な量の帳簿を用意すると、なんとウルフはたった一晩で不正な会計処理を見つけ出してしまった。

ザ・コンサルタント

© 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 そう、彼は幼少期に自閉症と診断され感情の抑制が効かない代わりに、数字に関しては天才的頭脳を持ち合わせていたのだ。しかし、彼が重大な不正を発見した矢先、なぜか依頼は一方的に打ち切られる。社長のラマー(ジョン・リスゴー)からは、横領が発覚したことでCFOのエドが自殺したとだけ告げられた。

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 その日以来、ウルフは何者かに命を狙われることとなる。しかし、彼の本当の姿は世界で最も危険な顧客を抱える会計士にして、正確無慈悲な暗殺術を身に付けた“裏社会の掃除屋”だった。自らの命を狙う賊を次々と返り討ちにしていく中、彼はデイナの身にも危険が迫っていることに気づくが……


映画を観る前に知っておきたいこと

 表の顔は田舎のしがない会計士、裏の顔は腕利きの殺し屋。いや、このクリスチャン・ウルフという男そう単純ではない。自閉症の人間が特定の分野で優れた能力を発揮することがあるというが、彼もまた感情の抑制が効かない代わりに驚異的な数学脳を持ち合わせる。そして、物事をどこまでも突き詰める自閉症特有の性質が、完璧な殺し屋としての彼を形成する。さらに、心に深く刻まれた幼少期に遡る原体験によって、その数奇な人生が決定づけられる。

 一切が謎に包まれたウルフの人物像を紐解いていく物語は、幾つものヒントをパズルのように繋ぎ合わせることで、徐々にその核心部へと迫る。過去と現在を行き来しながらウルフの原体験を浮かび上がらせる緻密な構成は、もはやアクション映画というよりミステリー映画に近いかもしれない。映画の見せ場となるはずのアクションシーンさえも、自閉症であるウルフの精神構造を物語る一つのピースとして、躊躇なく消費される。

 かつてないほど複雑な心理基盤の上に立つ異質なヒーロー、クリスチャン・ウルフ。社会のルールを逸脱した男の正義は一体どこからやって来るのか。ウルフの過去に秘められた父親の歪んだ愛情と血を分けた弟の存在。そして、彼を背後から操る謎の女性。全てが解き明かされるラストシーンでは、幼少期のウルフの如く、パズルの最後のピースを嵌めた時のようなカタルシスが観客にもたらされるだろう。

自閉症のアンチ・ヒーロー

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© 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 この手のアクション映画としては控えめな4,400万ドルという製作費。自閉症の性質を色濃く反映したウルフの戦闘シーンには、見せ場となるド派手なアクションは一切ない。その天才的な数学脳によって導き出されるのは、敵を仕留めるための最速最短の手順だけだ。狙いを定めて撃ち抜くだけのガンアクションからは、無駄を嫌うウルフの神経質な一面が垣間見えると同時に、その病的なまでの完璧主義が表現される。彼はすでに絶命した相手にもとどめのヘッドショットだけは絶対に怠らない。

 ヒーローと呼ぶにはあまりにも異質な神経。しかし、そんなウルフの中にも憧れのヒーロー像が確かに存在する。それは劇中の様々なキーワードから読み解くことができる。幼少期のウルフが組み立てるパズルに描かれた伝説的ボクサー、モハメド・アリ。ウルフの寝室に飾られた絵画の作者であり、抽象表現主義を代表する画家ジャクソン・ポロック。そして、ウルフの仕事上の偽名ルー・キャロル。これは『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロルから取られたものだ。

 ウルフが敬愛していることを思わせるこれらの人物は皆、彼と同じように精神疾患に悩まされていたことでも知られる。自閉症を抱えるウルフは、自分と似た精神構造を持つ偉大な存在たちに近づくべく、あえて危険な仕事に身を投じて大金を稼ぎ出す。その真の目的が明らかになった時、ハリウッドに新たなアンチ・ヒーローが誕生する。映画以外にも様々な社会活動に取り組むベン・アフレックが、嬉々としてこの役を演じるのも頷けるだろう。

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