映画を観る前に知っておきたいこと

ギヴァー 記憶を注ぐ者
530万部越えのSF児童文学を完全映画化

投稿日:2015年8月6日 更新日:

ギヴァー 記憶を注ぐ者

少年は世界を取り戻せるのか?

感情は抑制され、犯罪も戦争も貧困もない近未来の管理社会。記憶を受け継ぐ使命を与えられた一人の少年はすべて記憶を持つ者と出会い、この世界の歪さに気付く ──

アメリカ人作家ロイス・ローリーによる世界で530万部越えのSF児童文学『ギヴァー 記憶を注ぐ者』の完全映画化に、『ソルト』(10)のフィリップ・ノイス監督が挑む。

『マレフィセント』(14)でフィリップ王子を演じたブレントン・スウェイツを主演に迎え、ジェフ・ブリッジス、メリル・ストリープらオスカー俳優が共演する。


予告

あらすじ

いかなる争いも揉め事もない平和な管理社会が築かれた近未来。すべての苦痛は排除され、完全な平等を手にしたコミュニティーはまさに理想郷だった。過去の記憶を一切持たない住人たちは、指定服の着用と感情の高揚を抑制する毎朝の投薬、そして正直であることが義務づけられ、長老委員会が指定する職業に就いていた。

ギヴァー 記憶を注ぐ者

© 2014 The Giver SPV, LLC.

その社会に生きる少年ジョナス(ブレントン・スウェイツ)は、職業任命の儀式で主席長老(メリル・ストリープ)から〈記憶を受け継ぐ者〉=ザ・レシーヴァーに指名された。だが、それは最も名誉ある仕事であると同時に、苦痛と孤独を強いられる辛い職業でもあった。

ギヴァー 記憶を注ぐ者

© 2014 The Giver SPV, LLC.

全コミュニティーの過去の記憶を唯一蓄えている賢者〈記憶を注ぐ者〉=ザ・ギヴァー(ジェフ・ブリッジス)から人類の記憶を日々伝達されることになったジョナスは、この理想郷に隠された真実に気付いていく。彼はついに、この社会から離反を決意する……


映画を見る前に知っておきたいこと

女流作家ロイス・ローリーの原作は、その年の最も優れた児童文学に与えられるアメリカのニューベリー賞を受賞しているものの、既存の児童文学の枠に収まる作品ではない。

いわゆるディストピアものとしてのSF小説に社会風刺や哲学など、多くの要素を含んでいる。とはいえ、物語全体に横たわる寓話性はやはり児童文学らしくもある。映画もだが、それ故あまり考え過ぎると奥深くまで誘い込まれてしまう。

寓話としての原作

この小説には、ロイス・ローリーの少女時代が経験が深く関係している。

第二次世界大戦が終わって間もない1948年から1950年まで、彼女が11歳から13歳までの時間をワシントン・ハイツ(現在の渋谷区代々木公園内に設けられていた駐留米軍将校用の団地)で過ごしている。そこは少女にとって社会から隔絶された空間であり、安全なコミュニティを抜け出すことが彼女の心を高鳴らせたのだという。

自転車に乗って出かける渋谷は、少女の想像力によって危険な場所へと書き換えられ、それが一層彼女の目に、日常とかけ離れた世界として映したのだろう。幼き日のロイス・ローリーは、自身の中でユートピアとディストピアを行き来していたのだ。

物語の根幹にそうした原風景が流れているのだとすれば、やはり『ギヴァー 記憶を注ぐ者』は寓話性に富んだ児童文学なのである。

SFを意識した映画化

モノクロとカラーを使い分けることで世界を隔てる境界線を演出した映画は、視覚的に原作の設定を伝えることに成功しているものの、施された脚色によってエンターテイメントとしてのSF映画に向かっている。もともと多くを語った原作ではないが、児童文学における寓話性を遠ざけた結果、言葉足らずな映画化になってしまった印象を受ける。

ロイス・ローリーの原風景を覗き込むように、教訓を掬い取るように物語を追うことで、ようやく原作と同じメッセージを共有することができる。

-SF
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