映画を観る前に知っておきたいこと

【ヘイトフル・エイト】タランティーノ×マカロニ・ウェスタン!

ヘイトフル・エイト

クセもの8人、全員ウソつき。生き残るのは誰だ!

クエンティン・タランティーノ監督最新作はウエスタン仕立ての密室ミステリー。大雪でロッジに足止めを食らい一晩を一緒に過ごすことになった見知らぬ8人、そこで起こった密室殺人。全員訳あり、全員曲者、全員嘘つき。閉ざされた密室で繰り広げられる嘘と嘘。生き残るなら嘘をつけ!

『パルプ・フィクション』以降のタランティーノ監督作品で御馴染みのサミュエル・L・ジャクソンをはじめ、カート・ラッセル、ウォルトン・ゴギンズ、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーンら過去の作品に出演した俳優が顔を揃え、相変わらず先が読めない展開のタランティーノ節も健在だ。

『ニュー・シネマ・パラダイス』(88)『海の上のピアニスト』(98)などのジュゼッペ・トルナトーレ監督作品で音楽を手がけてきたエンニオ・モリコーネが本作で2015年アカデミー賞作曲賞受賞。


予告

あらすじ

南北戦争から10年、雪の降るワイオミング。賞金稼ぎのジョン・ルースの馬車はレッドロックへと向かっていた。その中には、彼が捕まえた1万ドルの賞金首、女囚人デイジー・ドメルグが乗っていた。

道中、連邦軍兵士上がりの悪名高き賞金稼ぎのマーキス・ウォーレンと、町の新しい保安官だと言う南軍の裏切り者のクリス・マニックスに出会い、馬車は4人を乗せて再びレッドロックを目指しはじめる。

しかし、大雪が4人を乗せた馬車を足止めする。とりあえずレッドロックの中継地にある店へと避難する4人だったが……
ヘイトフル・エイト

© Copyright MMXV Visiona Romantica, Inc. All rights reserved.

その店には店主がいない。代わりに留守番のボブ、レッドロックの絞首刑執行人オズワルド・モブレー、 南軍将軍サンフォード・スミサーズ、カウボーイのジョー・ゲージの4人がいた。吹雪が激しさを増す中、ロッジに集まった訳アリの8人の男女。
ヘイトフル・エイト

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しかし、偶然集まったように見えたこの8人の過去には意外な繋がりがあった!?

「誰かが、ここの全員を殺すぞ!」

ヘイトフル・エイト

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そして、そこで起こる密室殺人!閉ざされた密室でぶつかり合う嘘と嘘。事態は予想もできない方向へ……


映画を観る前に知っておきたいこと

タランティーノ監督最新作が気になるのは映画ファンの宿命かもしれません。『ヘイトフル・エイト』にまつわる脚本流出事件や、前作『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)からモチーフにされているマカロニ・ウェスタンと作品の関係性について紹介しています。脚本からは相変わらずのタランティーノ節が伝わる本作ですが、映画を観る参考にしてみてください。

脚本流出事件

実はこの映画、一度製作が白紙になっている。

2014年、『ヘイトフル・エイト』の脚本がネットで流出する事件が起こった。それにショックを受けたタランティーノ監督は映画の製作を中止。

当時、6人の人間がこの映画の台本を持っていたという。もちろん、その6人はタランティーノ監督に近しい人間であり、この流出事件は身内の裏切りであったことは明白だった。

笑い話ではないが、映画の全容が明らかになるに連れてなんだか滑稽な出来事のように思えてきた。6人の誰かが嘘をついているのだから。

実際はこの脚本流出事件は、訴訟にまで発展している。結局犯人はわからず終いだが、ネット上に不法アップロードされたファイルのリンクを米国ネット系メディア”ゴーカーメディア”が一般に公開してしまった。これが流出を決定的なものにしたため、タランティーノ監督は”ゴーカーメディア”を告訴したのだ。

その後、再び『ヘイトフル・エイト』を撮ることとなったわけだが、タランティーノ監督は制作にあたって脚本を書き直している。ファンである僕としては基の脚本はとても興味深い。どこかに流出したファイルがあるかもしれないが、英語ではお手上げだ。

ゴールデングローブ賞では脚本賞にノミネートされているが、ここには少なからず書き直した影響があるのではないだろうか。それが良い方に転がったとは言い切れないが、この先作品の評価が楽しみだ。いや、この一連の事件の結末が楽しみと言った方がしっくりくる。もし、世界で評価されるようならこのプロセスも無駄ではなかったということだ。

言い忘れたが、『ヘイトフル・エイト』の製作再開は、プロモーションのため公の場に現れたタランティーノ監督がファンの質問に答える形でその場であっさりと決めてしまった。まったく先読みできないのは脚本ではなく当の本人である。

「ああ、『ザ・ヘイトフル・エイト』をやることにした。君のためにね。まだ確定じゃなかったけど、今決めた。」

米サンディエゴのコミコン タランティーノ監督

© シネマトゥデイ


クエンティン・タランティーノの脚本

『ヘイトフル・エイト』が長編8作目となるタランティーノ監督だが、実は10作目での引退をほのめかしている。理由は撮影は若者の仕事と思っていることと、10本目の映画で引退するというアイデアを本人が気に入っているからという。

タランティーノ本人がそう語っているが、決して決定事項というわけではない。引退後は脚本を書いたり、本を執筆しながらしながら暮らすことを望んでいるようだが、それもアリかもしれない。

タランティーノ監督は長編デビュー作である『レザボア・ドッグス』(92)で既にその世界観を構築していた。そして、2作目の『パルプ・フィクション』(94)でのカンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)受賞は、確固たる作風の完成を物語っていた。

その頃からファンである僕にとって、当時は革新的だったものが、今では良くも悪くもタランティーノ監督作品という風に映る。あまりにも強い作風ゆえ、『パルプ・フィクション』以降の作品はタランティーノ監督作品という枠の中で完結してしまうのだ。

ただ、相変わらず脚本は素晴らしい。実際『パルプ・フィクション』でもアカデミー賞脚本賞を受賞しているし、それ以降の受賞も脚本賞が多い。最近では前作『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)でもアカデミー賞脚本賞を受賞している。

『ヘイトフル・エイト』も、映画の普及促進に関する活動を行う世界最古の団体であるナショナル・ボード・オブ・レビューで脚本賞を獲得している。また、ゴールデングローブ賞のノミネートも脚本賞だ。そこに関しては全く錆び付くことはない。

クエンティン・タランティーノ監督×マカロニ・ウェスタン

タランティーノ監督作品はそれ以上でも以下でもないが、決して焼き増しというわけではない。

前作『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)から本作へと繋がる西部劇の要素。その源流はアメリカではなく、1960年代から1970年代前半にイタリアからブームとなったマカロニ・ウェスタンだ。

その証拠に、本作ではエンニオ・モリコーネが音楽を手がけている。彼は映画音楽を語る上で欠かせない作曲家であり、『ニュー・シネマ・パラダイス』(88)『海の上のピアニスト』(98)などのジュゼッペ・トルナトーレ監督作品の音楽は今も多くのファンから愛されている。

しかし彼はトルナトーレ監督の盟友となる以前、マカロニ・ウェスタンというジャンルを確立した映画『荒野の用心棒』(64)でも音楽を手がけている。マカロニ・ウェスタンの先駆者セルジオ・レオーネ監督とのコンビでも知られる音楽家なのだ。

そして本作では見事、2015年アカデミー賞作曲賞受賞となった。タランティーノ監督最新作は音楽からも本格的なマカロニ・ウェスタンの息吹を感じることができる。

クエンティン・タランティーノ監督×マカロニ・ウェスタン、映画ファン(マニア)にとってはそれだけ伝えれば十分かもしれない。

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