映画を観る前に知っておきたいこと

ロブスター
不条理なほど滑稽で癖になる怪作

投稿日:2016年2月9日 更新日:

ロブスター

ここでは、45日以内にパートナーを見つけなければ、
あなたは動物に変えられます ──

2009年に『籠の中の乙女』でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリを受賞したギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスが仕掛ける、あまりにも野心的なロマンチックコメディ。独身が罪となる近未来を舞台に、とあるホテルに集められ45日以内にパートナーを見つけなければ動物にすると言い渡された独身者たちの運命を追う。

コリン・ファレルを筆頭に、レイチェル・ワイズ、ジョン・C・ライリー、レア・セドゥ、ベン・ウィショーら国際色豊かな実力派が、ランティモス監督独自の感性に呼応するようにこの奇妙な物語を支える。


予告

あらすじ

独身を罪とするその街では、独身者は身柄を拘束され郊外にあるホテルへと送られる。妻に捨てられ独り身になってしまったデヴィッド(コリン・ファレル)もまたそんな一人だった。

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© 2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film, The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.

そのホテルで45日以内にパートナーを見つけられなければ、独身者たちは動物に姿を変えられ森へと放たれる。猶予が迫る中、充満する狂気に耐え切れなくなったデヴィッドは独身者たちが潜んでいる森へと逃げ込むのだった。

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© 2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film, The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.

独身者が暮らす森にはリーダー(レア・セドゥ)が定めた恋愛禁止のルールがあった。しかし、デヴィッドはそこで出会った近眼の女(レイチェル・ワイズ)に心を奪われる ──


映画を見る前に知っておきたいこと

2015年カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞してみせたこの映画は、SF的な設定とブラックユーモアから生まれた突拍子のなさにも、現代社会を風刺する鋭さはまさに真剣そのもの。それが殊更奇妙に映るのだが、どこか他人事ではないような世界観が癖になる怪作だ。

ディストピアからディストピアへ

少子化が囁かれる日本から眺めるこの映画に、人間の自然の営みを強制する法律の恐ろしさを垣間見る。かつて中国で行われた一人っ子政策もそうだが、人間本来の在り方を捻じ曲げると必ずそこには歪みが生じ、問題をさらに根深いものにしてしまうのが常である。

日本にはそうした法律こそないものの、婚活やコミュ障などという言葉を頻繁に耳にするようになった今の社会は、“ぼっち”ではいけないという強迫観念が、時に法律以上の強制力を持ってしまっている。デヴィッドが送られたホテルも、逃げ出した先の森も、全くおかしなルールによって縛られていたように、僕たちの日常も気づかないうちに得体の知れないものによって支配されているのだ。

だからこそ、どうにかパートナーを見つけようと躍起になって他人に合わせる独身者たちの姿は皆滑稽に映り、ディストピアからディストピアへと逃れたデヴィッドが例え街に戻れたとしても、そこにはまた別の不条理が潜んでいることを予感させる。

妻に捨てられ独り身になった男が恋に落ちたことが、この映画で描かれる人間の自然の営みとして存在し、目に見えない精神世界の中でこそ人は自由で在れることを暗喩する。

「この映画のアイデアはある議論から生まれた。常に人間関係の中にいなければならないとしたら、人はどう感じるか。人間関係を作れない人を他の人はどんなふうに見るか。誰かと一緒にいることができなければ落第者と見なされるのか。誰かと一緒にいるために費やされる期間。恐れ。パートナーになろうとするとついてくる、そのようなありとあらゆることについて話し合った」

ヨルゴス・ランティモス

出典:www.fashion-press.net

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