映画を観る前に知っておきたいこと

パージ:大統領令
最もセンセーショナルなパージ

投稿日:2017年4月3日 更新日:

パージ:大統領令

世界の運命を左右する12時間

1年に一晩だけ、殺人を含むすべての犯罪が許される法律。その是非を問う大統領選の真っ只中、暴力と混沌に満ちた夜が新たに幕を開ける。

『パラノーマル・アクティビティ』シリーズの製作ジェイソン・ブラムと『トランスフォーマー』シリーズの監督マイケル・ベイがプロデュースする新感覚エクストリーム・スリラー。世界興行収入が累計300億円を超える大ヒットシリーズの第3弾。

前作『パージ:アナーキー』(14)に引き続き、主演はフランク・グリロ、監督はジェームズ・デモナコが務める。

予告

あらすじ

オーエンズ牧師(カイル・セコー)率いる極右政権NFFAが支配するアメリカでは、「1年に一晩(12時間)だけ、殺人を含む全ての犯罪が合法になる」という法律パージが定められていた。警察・消防・医療などの救急サービスは全て停止し、国民が溜まった鬱憤を解き放つこの夜こそが、アメリカにおける犯罪抑制の最終手段だった。

パージ:大統領令

© 2016 Universal Studios.

しかし、パージは貧困層や弱者を排除しようとしていると訴える無所属のローン上院議員(エリザベス・ミッチェル)らの台頭により、賛成派と反対派との間で国内は分断される事態に陥っていた。そして、その是非を問う大統領選の真っ只中、世界の運命を左右する12時間が新たに幕を開ける。

パージ:大統領令

© 2016 Universal Studios.

NFFAのオーエンズ牧師は、パージに乗じてローン上院議員の暗殺を計画していた。そして、この夜に彼女の護衛を任されたのは、過去に標的とされた者を守りながらパージを生き抜いた男レオ(フランク・グリロ)だった。しかし、裏切り者によって、二人は暴力と混沌に満ちた首都ワシントンD.C.の路上に放り出されてしまう……

映画を観る前に知っておきたいこと

2016年7月4日、本国アメリカで大統領選の年の独立記念日に封切られた本作は、世界興行収入が300億円を超えるシリーズ中でも最大のヒットを記録した。パージ法に最も時事的な大統領選をぶつけたことで、分断された現実のアメリカ社会を想起させる内容が人々を惹きつけたのだ。

パージ法とまではいかないが、大統領選でのトランプ現大統領の過激な公約に不安を覚えたアメリカ国民は決して少なくなかった。新しく生まれ変わるアメリカ社会を目前に公開されたことで、『パージ:大統領令』はシリーズ史上最もセンセーショナルなパージとなったのである。

物事が悪い方向に向かい、誰にも制御できなくなった時、それを上回る非現実的な恐怖が不安のはけ口となることを監督のジェームズ・デモナコは理解している。これこそがホラーやスリラーの醍醐味だ。

ジェームズ・デモナコの狙い

完全な密室スリラーだったシリーズ第1作目の『パージ』で、“陳腐な政治演説”と批評家から揶揄されながら、続く第2作目『パージ:アナーキー』でも、それを払拭できるほどパージ法の裏側は描かれなかった。

なぜ、デモナコは政治的なリアリティを追求せず、ゾンビ映画のような作品を撮るのか?そこについては、誰もが魅力的な設定を活かしきれていないと感じていたのではないだろうか。

しかし、1作目では富裕層、そして2作目では貧困層、それぞれの視点からパージ法を見つめてきた物語は、その是非を問う大統領選へ向けての布石だったのだ。

2022年のアメリカを舞台とした1作目の冒頭で、2017年からパージ法が施行されていたことが描かれているが、それも現実の大統領選を見越して、作品の中でアメリカ社会の行く末を案じる人々の不安を助長していたのだろう。ここからも、全ては2016年に『パージ:大統領令』を公開することを目的に展開していたことがうかがえる。

パージ廃止を巡って、いよいよシリーズも佳境を迎えることとなった『パージ:大統領令』。アメリカ国民は長いことデモナコに踊らされていたのかもしれない。まったく、彼はオーエンズ牧師のように悪い奴だ。

-スリラー, ホラー
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