湘南・鎌倉を舞台に描かれる家族の物語。離婚直前の夫婦、離れ離れになる家族を前に、娘の入院をきっかけに家族の再生を考える父と息子のロードムービーだ。
監督は、サッカードキュメンタリーの『クラシコ』で異例のヒットを飛ばしたで樋本淳。今回が初の長編映画で脚本も彼が務めている。
キャストには父親役に監督の20年来の友人である株式会社小林組代表取締役社長、小林敬を起用。自身も2児の母となって休業していたが、本作で母親役としてスクリーンに帰ってきた佐伯日菜子。二人の息子役には監督の実子というアットホームな配役にも注目。
家族とは何か―。時には重くのしかかり、時には救いにもなるこの人生の大きなテーマについて、鎌倉のゆったりとした空気感を背景に観想させられる。
- 製作:2015年,日本
- 日本公開:2015年12月12日
- 上映時間:93分
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 この映画独特のありふれた感
- 3.2 日常から切り離される瞬間
- 3.3 音楽について
予告
あらすじ
離婚を決めた夫婦。父親は5歳の息子と1歳の娘の親権を妻に譲るつもりでいる。もうすぐ離れ離れ、そう思っていた矢先に娘が高熱を出して入院することになり、妻が病院に泊まり込んで看病をすることに。そうして、男はこれまでほとんど接点を持てずにいた息子と二人きりの一週間を過ごすことになる。
天気の良い日の昼間は海へ、夜は妻に内緒で馴染みのスナックへ。始めての充実した親子の時間。それは息子にとっても、父親にとっても初めての経験だった。もうすぐ妻と娘が病院から帰ってくる。男の心は、家族の再生を考え始めていた―。
映画を見る前に知っておきたいこと
この映画独特のありふれた感
この映画はリアリティとはまた別のドキュメンタリー的なニュアンスを持ったヒューマンドラマだ。
リアリティのあるドラマはそう珍しいものではないが、こういう雰囲気を持つドラマは見たことがない気がする。本作がもつ独特の空気感は、突き詰めればこの“ありふれた感”に集約されるのではないだろうか。
公式サイトの観客の声を読んでいると、映画の独特の空気感が観客の心情にとても素直に重なっているように思う。
大げさな感動大作が大手を振って世界を練り歩く中で、このありふれた感じでそっと寄り添ってくるやり口は新鮮。
日常から切り離される瞬間
重要なポイントは、ひょんなことから日常から切り離されて、それが父の心変わりの原因になっているところだと思う。
忙しい毎日、繰り返される日常に大切な何かを見失う瞬間はあまりにも多い。それがちょっと角度を変えて見ると、思いがけないきっかけで驚くほど気持ちは変化していく。
男は人生の重大な決断を、何も見えていない盲目のまま下そうとしていた。この男の顛末に身に覚えがある人は数え切れないだろう。
この映画を見ることは、自分の人生の日常を改めて見つめなおす良いきっかけになるのではないだろうか。そんなふうに思わせられる映画だ。
音楽について
脚本、演技と溶け合うようにゆったりとした空気感を演出する音楽も好評価。
音楽を担当するのは3ピースギターロックバンド・オトループの作詞作曲を担当している纐纈悠輔。1日3冊は本を読むという読書好きの詩人でもあり、バンドは歌詞に特にこだわっているそう。
映画を入り口にバンドをチェックしてみるのもなかなか乙。