映画を観る前に知っておきたいこと

イタリアは呼んでいる 美しい景色、極上の美食と大爆笑―。

投稿日:2015年4月3日 更新日:

イタリアは呼んでいる タイトル

”年老いること”というメランコリーを背景にジョークを、ユーモアを重ねてイタリアを旅をする中年男2人組み。たったの3館での公演の予定が、口コミで話題になりあっという間に世界中で上映されることに。綺麗なロケーションと、美味しい料理と、陽気で知的な英国俳優2人と、さまざまなテーマについて考えて、笑い合う1時間半。

  • 製作:2014年,イギリス
  • 公開日:2015年5月1日
  • 原題:『The Trip to Italy』
  • 上映時間:108分

予告

あらすじ

イギリスでは知らない人はいない人気コメディアン、スティーヴ・クーガンとロブ・ブライドン。2人は数年前にイギリスの湖水地方のレストランを巡り、そのグルメ記事を書くという仕事をしたことがあった。それが好評だったらしく、今度はイタリアでという依頼が舞い込んでくる。
イタリアは呼んでいる
ロブは仕事もうまく行っており、年の離れた妻とまだ幼い子供がいる順風満帆の人生を送っていた。日々の忙しい仕事や、父親としての責任から解放されるイタリア旅行に心をときめかせる。一方、スティーヴはコメディアンとしてよりも今は俳優として仕事をしている。ロサンゼルスで撮影していたTVシリーズも打ち切りとなり、ちょうど仕事がない時期だ。この仕事はスティーヴにとっては“おいしい”仕事。長い間離れて暮らしている家族のことも気がかりだが、逃す手はない。

レンタルした黒いミニクーパーでイタリアを北から南へ美食の旅。パスタ、ジビエ、シーフード、そしてスイーツ。料理も景色も超極上。そして気の置けない友人との会話は最高のスパイス。そして2人は旅をしながら、イギリスのロマン派詩人バイロンとシェリーの足跡を辿る。放蕩の末、イギリスを追放され、イタリアで退廃の日々を送ったバイロン、イタリアの地で没したシェリーの詩は喧騒を離れてイタリアを旅する中年男の感傷を刺激する。
イタリアは呼んでいる

あらすじ ※ネタバレ

若い男女の楽しげな様子を見ながら、もはや中年男の自分たちは眼中にないことを憂いてみる2人は、船でバイロンが泳いだという“詩人の湾”に向かう。哀愁の漂うこの土地のせいか、それとも中年期に差し掛かった歳のせいか、美しい湾を一望しながらも感傷的になるロブとスティーヴ。200年後、自分たちはどう人の記憶に残るだろう。もし、どちらか一人でも忘れられていなければ、だけれど・・・。

イタリアは呼んでいる“詩人の湾”で出会った女性ルーシーとちょっとしたアバンチュールを味わったロブ。そんなロブにアメリカ映画への出演依頼の話が飛び込んでくる。自室でオーディションに向けての練習をしながら、まだ自分はイケるという思いと「アメリカでは無名の」二流俳優の自分なんか・・・という卑屈な思いに葛藤するロブ。一方で、仕事もプライベートも踊り場状態のスティーヴにとっては、ロブの挑戦が胸をざわつかせる。そんな日は、ドライブのお供として散々イジってきた歌手アラニス・モリセットの歌だって心に響いてしまう。「大丈夫、うまくいくさ」。

ローマで、スティーヴのマネージャー・エマと、女性カメラマン・ヨランダの2人と合流することになった。4人はローマの街を歩きながら、ローマを舞台にした名作映画に思いを馳せる。実は前回のイギリスでのグルメ取材で、スティーヴはヨランダと一夜の関係を持っていた。気まず~い再会ではあったものの、ちゃっかりと親密な気持ちを抱くスティーヴ。ロブはロブで、“詩人の湾”で関係を持ったルーシーから「また会いたい」と連絡を受けていた。罪の意識はもちろんある。でも、あの解放感をもう一度・・・。とてもシンプルな生の悦びに満ちたイタリアは、少しずつ彼らに変化をもたらしていくのだった。
イタリアは呼んでいるエマたちと別れて再び2人きりになったロブとスティーヴはポンペイ、カプリ島の絶景が望めるというホテルへ車を走らせる。イタリアの旅も終盤にさしかかり、スティーヴは息子のジョーに対して「きちんと父親としての役目を果たしたい」と考え始めていた。早速元妻に連絡し、ジョーとナポリで落ち合う約束をとりつける。だが、ナポリに行くにはロブが敬愛するアル・パチーノの『ゴッドファーザー』シリーズゆかりの地、シチリアには立ち寄れない。スティーヴはその事を詫びる為、ロブの部屋を訪れる。

翌日、マネージャーのエマがジョーを連れてスティーヴと合流。4人はカプリ島へと向かう。カプリ島でいよいよこの旅も幕を閉じることになる。仕事、恋、地位、名誉、家族・・・旅を通じて改めて自分と向き合った2人の中年男は、イタリアの最期の地で何を思うのか・・・。

– 公式サイトより –

映画を見る前に知っておきたいこと

”本人役”のスティーヴとロブ

この映画の主役スティーヴとロブを演じているのは、なんと本人。役中だけでなく、2人は実際に仲良いライバルであり、友人だ。スティーヴはコメディアン出身の実力派俳優で、本国イギリスでは知らない人はいないほど。ロブはもともとスティーヴのファンで自分のデモテープをスティーヴに送り、それを気に入ったスティーヴが業界でロブを引き立てるようになったことから2人の関係は始まっている。

実生活でも仲のいい2人の掛け合いは、エンターテイナーのプライドを懸けた真剣勝負。笑いが笑いを呼んで、たった3館での公演が全世界に飛び火、今回晴れて日本で公開される運びとなった面白い来歴を持つバディ・ムービー。

ほとんど即興のモノマネ合戦

実はこの作品はシリーズ2作目。あらすじにもあるイギリスでの仕事は、前作の『邦題:スティーヴとロブのグルメトリップ』の舞台。この作品では脚本のクレジットがなく、2人は何を話してもどこにいっても即興の往年の映画スターモノマネ合戦になってしまう。

一応さらっと探してみたが、今回の作品も脚本のクレジットが見当たらない。たぶん今度の作品も、往年の映画ファンを笑わせる2人のモノマネ合戦が堪能できることと思う。あなたは、何人わかるだろうか・・・!ちなみに僕は名前を聞いてもさっぱりわからない・・・。

年老いることに思いを馳せる

グルメ、旅、とともに並ぶこの作品の大きなテーマはエイジングだ。イタリアの美食と景色を楽しみながら、“中年症候群”の彼らは、哀愁と共に人生に思いを馳せる。イタリアでの至福の旅は、都会の喧騒で堅くなった彼らの頭をやわらかくほぐして、至ってシンプルな心の声に導いていく。哀愁と笑い、生と死の絶妙なバランス感覚で2人の旅を見守る観客の心を打つ。
ドイツのロマン派作曲家リヒャルト・シュトラウス「4つの最後の歌」の「夕映えの中で」がまた映画をほどよくマイルドにしてくれる。

監督・キャスト

監督・マイケル・ウィンターボトム

マイケル・ウィンターボトムイギリスの名匠。、トマス・ハーディ原作の『日蔭のふたり』、ボスニア紛争を描いた『ウェルカム・トゥ・サラエボ』、小粒なドラマ『ひかりのまち』、音楽映画『24アワー・パーティ・ピープル』、SF映画『CODE46』 とジャンルの全く違う作品を次々に手がけ、高い評価を得ている。難民問題を扱った『イン・ディス・ワールド』で、2003年ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞している。

スティーヴ・クーガン:(スティーヴ)

スティーヴ・クーガンナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』でも“ローマ帝国の兵士”役で“カウボーイ”オーウェン・ウィルソンと名バディぶりを見せている英国の渋メン俳優。

ロブ・ブライト:(ロブ)

ロブ・ブライドン自分自身を演じることについて、「自分を食べている感じ」だったという。このロブのコメントを見るに、BBCで放送されたTVシリーズ、その長編映画化の『邦題:スティーヴとロブのグルメトリップ』はどちらかというと演じているというよりは出演しているというニュアンスのほうが強かったのかもしれない。そういう意味でもこの作品は前2作とは一味違う。
ロブを紹介する欄で映画の話をしてしまったけど、尺的にきついのでロブのことはもう割愛する。

感想・評価まとめ

観光名所、おいしそうな料理と旅を楽しむ純粋なロードムービーとしても、2人の掛け合いを楽しむバディ・ムービーとしてもなかなか評価が高い。日本でこれだけ笑えると言うんだから、彼らを身近に知っている英語圏の人はほんとうに大爆笑だったんだろうな・・・。即興モノマネ合戦は往年の映画スターをあまり知らなくても楽しかったという声もあったけど、やはり知っているとなお楽しそう。
感想を読んでいると、概ねが大爆笑。見終わって人生について深く考え込むというよりは、この作品で表現されている哀愁や叙情も笑いのためのコントラストなイメージ。笑いにいきましょ。


 
 

-コメディ, 洋画

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