映画を観る前に知っておきたいこと

【図書館戦争 THE LAST MISSION】SFと恋愛が融合したエンターテイメント

投稿日:2015年10月4日 更新日:

図書館戦争 THE LAST MISSION

原作は2006年に発表されて以来シリーズ累計600万部という驚異的な大ヒットとなった小説。本が自由に読めない世界で自由を守るために戦う“図書隊員”の熱い戦いを描き、コミック化、アニメ化、映画化とメディアミックスで次々とファンを拡大していった。その中でも映画は、原作者である有川浩が「自分が小説を書くよりも先にこの世界が存在していたかのよう」と言うほど、その世界観が忠実に表現されている。実写映画化した『図書館戦争LIBRARY WARS』の待望の続編となる。

監督は前作に引き続き『GANTZ』シリーズを手掛けた佐藤信介が務める。ヒロインの郁を榮倉奈々、上官の堂上を岡田准一が演じ、原作のキャラクターを忠実に再現してみせる。

    • 製作:2015年,日本
    • 日本公開:2015年10月10日
    • 上映時間:120分
    • 原作:ベストセラー小説「図書館戦争」有川浩

予告

https://youtu.be/9cZIQ9gXQls

あらすじ

舞台となるのは「昭和」から「正化」へと歴史を進めた近未来の日本。国家による思想検閲や、メディア規制が横行する社会となった時代、検閲に対抗し「本を読む自由」を守っているのが“図書隊”だった。そこに所属する笠原郁(榮倉奈々)は、検閲で取り上げられそうになった大事な本を取り返してくれた憧れの図書隊員を追って入隊、図書特殊部隊(ライブラリータスクフォース)所属となった。鬼教官である堂上篤(岡田准一)の罵倒とシゴキに耐え、上官の小牧幹久(田中圭)、同期の手塚光(福士蒼汰)や柴崎麻子(栗山千明)らと共に厳しい訓練と図書館業務の日々を過ごしていた。図書館戦争 THE LAST MISSIONそんなある日、堂上らタスクフォースにある指令が下る。それはこの世に1冊しか現存しない“自由の象徴”「図書館法規要覧」の一般展示が行われる“芸術の祭典”会場の警備。それは一見簡単な任務に思えたが、実は、図書隊を解散させる事で、歪んだ社会を正しくしようと考えている手塚の兄・慧(松坂桃李)が図書隊壊滅を目論み仕組んだ罠だった。手塚慧の狙い通り、検閲実行部隊「良化隊」による急襲を受け、成す術もなく1人、また1人と凶弾に倒れていくタスクフォース達。図書館戦争 THE LAST MISSION堂上たちは無事に本を守り切れるのか?仲間たちを守り切れるのか?いま命運を懸けた図書館隊が史上最大の戦い“LAST MISSION”に挑む!

映画を見る前に知っておきたいこと

前作『図書館戦争LIBRARY WARS』とドラマ『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ』のあらすじ

本作は2013年に公開された映画シリーズ第1作目『図書館戦争LIBRARY WARS』の続編となるので、予習の意味も含め簡単なあらすじを紹介しておく。ちなみに地上波放送された『図書館戦争LIBRARY WARS』はテレビ特別編集版なので、劇場版に比べると15分程度カットされているので本当に楽しみな人はレンタルの方が良いと思う。

また映像化されたものは、本作『図書館戦争 THE LAST MISSION』と第1作目『図書館戦争LIBRARY WARS』の他に、テレビドラマ特別企画『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ』がある。この3作を見れば映像化された『図書館戦争』シリーズは終わりとなるのだが、本編のスピンオフとなる『レインツリーの国』が2015年11月21日に公開される。『図書館戦争 THE LAST MISSION』が完結編と思い、寂しく感じていた人には『レインツリーの国』が立て続けに公開されることは朗報だ。こちらは『図書館戦争』の作中に登場した架空の小説であり、独立したストーリーなので見逃しても問題はない。ただ『図書館戦争』ファンは抑えておくべき作品だ。SFの要素はないが、『図書館戦争』シリーズの恋愛部分を切り取ったような世界観で、そこが好きという人にとってはハマる作品だと思う。

とりあえずこれで『図書館戦争』関連の映像化は一段落すると思うので、このタイミングで4作品を一気に見てみたらどうだろうか。

『図書館戦争LIBRARY WARS』あらすじ
西暦2019年となる正化31年は、国がメディアに対する検閲を強化し、それが正当化されている時代だった。あらゆるメディアを取り締まる法律「メディア良化法」が施行され30年が過ぎた日本では、法律に基づき秩序を乱す表現を取り締まるために、「良化隊」と言われる国家権力で銃器を手にした組織によって検閲が行われていた。 しかしそんな中、「良化隊」に対抗し自由を守るために「図書隊」と言われる自衛組織があった。彼らは「図書館の自由に関する宣言」をもとに制定された「図書館法」に沿って“本を自由に読むことのできる喜び”を守ろうとしていた。

高校時代に図書隊に救われ、強い憧れを抱いて自身も図書隊に入った笠原郁は、鬼教官・堂上篤の厳しい訓練を受け、女性隊員として初めて図書特殊部隊(ライブラリー・タスクフォース)に配属されることになった。個性的な仲間に囲まれながら日々の業務に励む郁は、かつて自分を救ってくれた憧れの隊員とは正反対のはずの堂上に惹かれ、次第に気になっていく。

その堂上には、郁に絶対言えない秘密があった……

『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ』 あらすじ
笠原郁は、検閲で取り上げられそうになった大事な本を取り返してくれた図書隊員を追って戦闘職である図書特殊部隊、通称ライブラリー・タスクフォースとなる。配属され、鬼教官である堂上篤の班に配属され、きついシゴキにも耐える日々を送っていたは、ずっと顔も覚えていない“王子様”を捜しいたはずなのに、なぜか自分を罵倒する堂上のことが気になり始め、戸惑っていた。

そんなある日、郁は図書館で聴覚障害のある女子高生・中澤毬江と出会う。毬江は堂上班の先輩・小牧幹久の幼馴染だった。小牧におすすめの本を教えてもらい、それを読んでいた毬江を見て、郁は毬江の中に小牧へ淡い恋心を感じていた。その頃、図書館の窓口業務をする柴崎麻子は、朝比奈修二と名乗る学芸員の男と頻繁に会うようになっていた。麻子のことが気になっている手塚光は複雑な想いを抱えていた。

そんな時、小牧が検閲機関である良化隊に突然身柄を拘束される。小牧が毬江に教えた本が障害者に配慮しておらず不適切だという理不尽な理由だった。それに怒りを感じる堂上や郁ら図書隊員たちは“本を自由に読むことのできる喜び”を守る義務に改めて気付くのだった。

図書館戦争 予告編
https://youtu.be/UJpZfBH5M2k

SFではなく恋愛小説として認知されている原作

原作は2006年に発表されて以来シリーズ累計600万部という驚異的なヒットとなっている。その理由として、映画の予告などを見ても一見SFの要素が強いが、実は良質の恋愛小説として評価されているのだ。「ダ・ヴィンチ」2009年1月号に掲載された「BOOK OF THE YEAR 2008」では、恋愛小説ランキングに第1位に「別冊 図書館戦争Ⅰ」をはじめ、5位以内に合わせて4作品が選ばれるほど恋愛小説として認知されている。

原作者の有川浩は、デビュー当時は主にSF・ミリタリー色の濃い作品を執筆していた。自衛隊と未知の物体・生物との接触をテーマにした作品、陸上自衛隊の「塩の街」、航空自衛隊の「空の中」、海上自衛隊・海上保安庁・機動隊の「海の底」は自衛隊三部作と呼ばれている。後の「図書館戦争」シリーズでは、恋愛を軸にもともと得意としたSF・ミリタリー色を融合させたことで支持を集めた。もちろん恋愛だけではなくエンターテイメント小説としても評価が高いので、それはSFと恋愛のどちらの要素もバランスよく融合している証拠と言える。

ちなみに2015年11月21日に公開される『レインツリーの国』においては、原作は完全な恋愛小説である。一応「図書館戦争」シリーズのスピンオフに当たるが、SF要素もなく純粋なラブストーリーだ。こちらも88万部のロングセラーとなっていることから、有川浩はSFを得意としながら、同時に一流の恋愛小説家でもあると言える。

小説「図書館戦争」シリーズ
図書館戦争(2006年2月)
図書館内乱(2006年9月)
図書館危機(2007年2月)
図書館革命(2007年11月)
別冊 図書館戦争I(2008年4月)
別冊 図書館戦争II(2008年8月)
レインツリーの国(2006年9月)「図書館内乱」に登場する小説を実際に小説化した作品

映画の評価

原作がヒットしている中で映画化されるとどうしても酷評も出てくるのだが、本作に関しては肯定的な意見が多かったように思う。まったく原作を知らずに純粋な映画として見た人もそうだが、原作を読んでから映画を見た人からも評判は良かった。ぴあ映画初日満足度ランキングでも本作は1位となった。

それは原作者の有川浩が「自分が小説を書くよりも先にこの世界が存在していたかのよう」と言った通り原作に忠実な仕上がりが、映画のそうした評価に繋がったと思われる。もちろん映画の尺なのでカットされているシーンやセリフはあるものの、実際アニメ版やコミック版の「図書館戦争」よりも手が加えられた部分は少なく、映画が最も原作に忠実であったと思う。とりわけ上官の堂上を演じた岡田准一は前作から好評だった。そして小説では味わえない迫力のアクションシーンも前作よりさらに強力になっている。

原作がおもしろくて原作ファンも納得なら、もちろんおもしろいはずだ。

-SF, 恋愛, 邦画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。