映画を観る前に知っておきたいこと

【追憶の森】富士の青木ヶ原樹海×渡辺謙×マシュー・マコノヒー×ガス・ヴァン・サント

追憶の森

日本の青木ヶ原樹海で出会った二人の男を通じて、死と生との向き合い方を語るミステリードラマ。

社会からはみ出た叛逆的なマイノリティーを描く『ミルク』『エレファント』のガス・ヴァン・サント監督のスピリチュアルな死生観を描いた映画だ。彼の映画は、瑞々しく美しい映像の中にリアリティとファンタジーが同居する唯一無二の魅力を持つ。

日本では、名実共に日本を代表する俳優である渡辺謙と『ダラス・バイヤーズ・クラブ』の怪演でアカデミー主演男優賞を受賞したマシュー・マコノヒーの共演も大きな話題になっている。

3人目のキーキャラクター、全ての謎の鍵を握る主人公アーサーの妻を演じるのは『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『ヴィンセントが教えてくれたこと』のナオミ・ワッツ。


  • 製作:2016年,アメリカ
  • 日本公開:2016年4月29日
  • 上映時間:110分
  • 原題:『The Sea of Trees』

予告

あらすじ

富士山の北西に広がる青木ヶ原樹海。

自殺の名所としても名高いその場所にアーサーというアメリカ人がやってきた。ここで人生を終わらせようというのだ。
追憶の森絶望の淵に樹海をさまよう彼は、そこで出口を探してさまよう日本人タクミと出会う。怪我を負って寒さに震えるタクミを放っておけず、アーサーは原生林が生い茂る樹海を抜け出すためにタクミと行動を共にすることに。
追憶の森しかし、歩けど歩けどたどり着く先は行き止まり。森は二人を嘲笑うかのように風に葉を鳴らすのだった。

方向感覚を失い、いよいよ体力も限界を迎えようとしていた。そんな過酷な状況で生死を共にしているうちに、アーサーは少しずつタクミに心を開いていく。

やがて、彼を絶望へ追いやり、樹海へ導いたある出来事について語り始める・・・。


映画を見る前に知っておきたいこと

美しすぎるホラースポット「青木ヶ原樹海」

追憶の森富士山の青木ヶ原樹海は自殺の名所としても有名だが、樹海探検の観光名所としても人気のスポットだ。

自殺の名所として「死」の一文字が焼きついた目の前に広がる光景は、生に満ちた自然の美しさ。根をむき出しにした木々が大地と共に生を湛えるそのふもとには、遺留品かと思われるようなバッグや衣服が半分埋まっていたりする。

死と生が奇妙な調和するこの光景を人は不気味だと感じながらも、自然が作り出す手付かずの美しさに息を呑まずにはいられない。ガス・ヴァン・サント監督は、そんな青木ヶ原樹海を舞台に死生観をスピリチュアルに描いたと語る。

個人的な願望を付け加えると、『The Sea of Trees(原題)』と名付けたからには“樹海”の恐ろしさと美しさを十分に感じさせてくれる作品であってほしいと思う。

カンヌ国際映画祭で起きたブーイング

しかし、そんな監督の思惑は期待通りとはいかなかったようだ。

「自殺をするために日本に行く」という設定に納得がいかず、初上映となったカンヌ国際映画祭ではブーイングでもって迎えられた。

日本と違い作品の出来に素直な反応を見せる海外でも、しかも観賞後のスタンディングオベーションが慣習になっているカンヌでブーイングが起こるのはさすがに珍しいようで、「どんな変な映画なのか逆に見てみたい」という意見もある。

批評家たちには世界中の紙面で「ガス・ヴァン・サントのワースト・ムービー」「ストーリーが陳腐で馬鹿げている」「ファンタジックなほどイライラする“お涙頂戴もの”」などなど、散々な言われよう。

Rotten tomatoesでは12個のレビューのうち、そのうち誰もFleshをつけていないという結果に。

確かに、絶望に追い込まれてこれから死のうとしている人間に、わざわざ日本に行くほどのバイタリティがあるとは思えない。

これに納得がいかないとなると、観客は冒頭で「なぜ日本に行くのか?」という疑問に答えを待ち続けたままエンディングを迎えてしまったということになる。

これでは作品中にどれだけ深遠な人生哲学を盛り込もうとも、その全ては「“なぜ日本に”という疑問にとって十分な解答かどうか」という点に見方が限定されてしまい、正直それどころではない。

しかし、これは「樹海=死」の連想が日本ほど当たり前に受け入れられなかったのではとも考えられる。それが証拠に、日本での評価は海外で言われているほど悪くはない。

ともあれ、カンヌで賞を取ったから面白い作品だとは限らないように、カンヌでブーイングをされたから面白くない作品だとは限らない。映画の面白さの要は聞き手と語り手の噛み合わせである。

そこで、もしこの映画に少しでも興味を持った人の中に「カンヌでブーイングされているからやめておこう」と考えている人がいたら、そんな話は無視してぜひとも観てほしいと思う。

「興味が持てる」ということはそれだけで価値のあることだし、何よりも大切なのは他人の意見ではなく自分自身の興味なのだから。

コメント4件

  • 宮本年起 より:

    私はこの映画に深く感銘した。主人公が「妻を世界一愛していた。僕が悪かったんだ、僕が」と号泣するシーン。今思い出しても涙を禁じえない。

  • ミヤ より:

    今日見てきました。良かったです。
    ああーそうかあ!って感動しました。
    突っ込みどころはあるのでしょうが、おそらくそこは伝えたい事じゃないので、カンヌの評判は無視してフラりと見に行くことをオススメします。
    心が温かくなりましたよ。

  • やまぐちさちよ より:

    渡辺謙の演技が素晴らしかったです 顔を見てるだけで思いが伝わってきました 登場人物も少なく一見単調なようですがのめり込んで見いってしまいました 日本人だからこそ共感できる映画だと思います

  • 今川 幸緒 より:

    感想ありがとうございます。カンヌ国際映画祭でのブーイングとは逆の意見が多く、必ずしも海外での評価と映画のおもしろさは一致しないのだと改めて実感します。きっと国によっても捉え方が違うのでしょうね。

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