映画を観る前に知っておきたいこと

海は燃えている イタリア最南端の小さな島
2017年最重要ドキュメンタリー

海は燃えている イタリア最南端の小さな島

ぼくたちの海を、
命をかけて渡る人たちがいる

イタリア最南端の小さな島、人口わずか5,500人のランペドゥーサ島に、過去20年間で40万人の難民と移民が上陸した。すくい上げてもシチリア海峡に沈んでゆく1万5千の命。アフリカや中東から命がけで地中海を渡り、ヨーロッパを目指す多くの難民・移民の玄関口であるこの島。そこにある生と死を対比させるかのように、美しく詩情溢れる映像で島の“真の姿”を浮かび上がらせてゆく。

『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』で2013年ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したジャンフランコ・ロージ監督が、再びドキュメンタリー映画で世界三大映画祭を制した静かな衝撃作。

2016年ベルリン国際映画祭金熊賞受賞。2017年アカデミー賞外国語映画賞イタリア代表作品。


予告

あらすじ

イタリア最南端に位置する北アフリカに最も近いヨーロッパ領の小さな島。12歳の少年サムエレは、友だちと手作りのパチンコで遊ぶのが大好きな普通の子どもだ。家々のラジオからは音楽が聞こえ、漁師は海へ出かけ、雷の日には老女は家で刺しゅう糸に針を通す。それがランペドゥーサ島の日常に流れる風景。

海は燃えている イタリア最南端の小さな島

© 21Unoproductions Stemalentertainement LesFilmsdIci ArteFranceCinema

しかし、アフリカや中東に広がる紛争は、この島にもうひとつの日常をもたらした。この数十年間、移民や難民にとってランペドゥーサ島はヨーロッパの玄関口であった。

巨大な無線施設、多くの救助艇が停泊する港、平和と自由を求め命懸けで海を渡る人々。一度難民たちが乗った船から救難要請の連絡が入ると、無線とヘリコプターが飛び交い、サーチライトが夜の海を照らす。

海は燃えている イタリア最南端の小さな島

© 21Unoproductions Stemalentertainement LesFilmsdIci ArteFranceCinema

決して交わることがない島の生活と難民たちの悲劇。両者を結ぶのは、島でたったひとりの医師のみだった。島の人たちを診察する傍ら、島にやってきた多くの難民たちの死を看取る。

この島にある2つの日常に、カメラは静かに寄り添う……


映画を観る前に知っておきたいこと

2017年アカデミー賞外国語映画賞イタリア代表となったこの映画は、オスカーの可能性を十分に感じさせる。

知る人ぞ知るドキュメンタリー映画の名匠ジャンフランコ・ロージ。彼は常に、報道では決して伝えられない真実に目を向けてきた。それは問題そのものではなく、そこに在る人間の感情だ。

各国を代表する作品たち(英語以外で撮られた映画)としのぎを削るこの賞を、ドキュメンタリー映画として受賞することは容易なことではないが、彼の才能にはその資格がある。

本作の公開がスタートした2週間後の2月26日にアカデミー賞の結果が発表される。

ジャンフランコ・ロージ

1993年、彼の処女作『Boatman』はサンダンス映画祭、ロカルノ国際映画祭、トロント国際映画祭、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭など名だたる国際映画祭で上映され、華々しいデビューを飾った。

しかし、20年以上のキャリアでロージ監督が手がけた作品は、短編フィクション1本、中編ドキュメンタリー1本、長編ドキュメンタリー4本だけだ。彼のカメラが捉えてきたのは、その土地とそこに暮らす人々の姿だった。入念な取材と時間をかけることで浮かび上がる真のリアリティ、そんなスタイルが彼を寡作なドキュメンタリー作家へと仕立て上げてしまったのだろう。

ロージ監督監督の作品が日本でも紹介されるようになったのは、前作『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』(13)からだった。

ローマを取り囲む周囲68.2kmの無料の環状高速道路、グランデ・ラッコルド・アヌラーレ一帯で暮らす人々の生活を、彼は2年間もバンで生活しながら見つめ続けた。たえず外部へと広がろうとする首都ローマ、そこにある土地と住人の関係は、都市そのものが生み出す欲望と混沌までを映し出していく。喜び、怒り、哀しみ、夢、スポットライトを浴びることもなく懸命に生きる人々の人生は、まるでイタリアの行く末を暗示するかのように。

イタリアが誇るベネチア国際映画祭の70周年に最も相応しい出来栄えだったこの映画は、その年の金獅子賞に輝くこととなる。ドキュメンタリー映画での最高賞受賞、それは同映画祭で初の快挙だった。

そして、ヨーロッパが抱える最も切実な問題に切り込んだ本作でも、ドキュメンタリー映画として初めてベルリン国際映画祭の最高賞に輝いている。

当時のイタリア首相マッテオ・レンツィも、2016年3月に行われた移民政策が議題のEU首脳会談にて、「人々を、数ではなく、ひとりひとりの人間として描いている。この映画を観たら、違った視点での議論ができるはず」と、本作のDVDを27人の全首脳に手渡したという。それほど逼迫する移民問題は、ロージ監督の過去にも関係している。

彼もまた、エチオピア・エリトリア国境紛争の際、13歳で両親をエリトリアに残したままイタリアへと移住した過去を持つのだ。こうした悲劇は、いまヨーロッパ中の至るところに転がっている。

彼にとって痛みを伴うほどのリアリティが滲み出るこの作品が、2017年最も重要なドキュメンタリー映画であることに疑う余地はない。

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