映画を観る前に知っておきたいこと

美しき天才グザヴィエ・ドラン
彼の映画のスタイルと撮影技法に迫る!

投稿日:2015年5月4日 更新日:

グザヴィエ・ドラン

映画『Mommy/マミー』が公開され、日本でも知名度を上げてきているグザヴィエ・ドラン。2009年のカンヌ国際映画祭で彗星のようにデビューして以来、発表する作品は常に世界中の注目を集めてきたカナダの新鋭だ。監督としてだけでなく、脚本、制作、主演、編集、衣装、ヘアメイク、音楽、マルチに映画に携わるこの超美形は一体何者なのか!?


グザヴィエ・ドランとは?

グザヴィエ・ドラン、彼は今最も注目される若手監督の一人です。その存在の異質さが際立つのはなぜか?

彼自身のアイデンティティ、撮影技法からヒントを得ていきます。彼のスタイルに多くのファンが魅了される理由がそこにあります。

どのような作品を経て『Mommy/マミー』に至ったのか、最後に過去の作品を簡単に紹介しておきます。

グザヴィエ・ドランのスタイル

「“変わってるわね”と口にする人たちは、違いを理解する知性に欠けている。」

これは『Mommy/マミー』に先駆けて公開されたミニドキュメンタリー『グザヴィエ・ドランのスタイル』の冒頭のセリフだ。

わずか10分程の映像だが、そこでは彼の映像技法の凄さが十分に伝えられていた。しかし、僕にとっては映像技法よりも、グザヴィエ・ドランという人間そのもののスタイルが印象に残った。

そう、彼は同一化を憎む。

カンヌの授賞式でのスピーチでも、同じような事を言っている節があった。

自分と同じ若い世代に向けて、夢を持ち続けて突き進めというスピーチの中で語られたこのセリフにも”人と違う事を忌む人を嫌う”彼の精神性がよく現れている。

そんな彼が映し出す映像は実にユニーク。それでも奇をてらうわけではなく、熟慮され、吟味され、必要だと思われて採用されているのがよく分かる。新世代の象徴として見られるカリスマ性も、突き抜けたユニークさも、自分の好きな事を胸を張って好きだと言える「知性」によって支えられている。

「誰しも自分が好むことをする権利があるにも関わらず、あなたのやることを嫌悪し、あなたを忌み嫌う人たちもいるでしょう。」

グザヴィエ・ドラン

カンヌ国際映画祭のスピーチより

グザヴィエ・ドランの撮影手法

ドランの映画がキャッチーで分かりやすいのは、何もポップな色調や音楽がそうさせているのではない。彼の撮影手法が観客の感情を有無を言わさずコントロールするものだからだ。ミニ・ドキュメンタリーでも語られていたが、ドランの撮影手法は不安、恐怖、恍惚、鬱屈、解放、ありとあらゆる感情に観客を無理矢理巻き込んでいく。ワンカットそれぞれがさながら絵画のように。

細かい技法についてはドキュメンタリーの中で語られているので割愛するが、グザヴィエ・ドランは間違いなく芸術家である。同一化を蔑視する彼の表現はまさしく個としての”自由”の探求であり、見た目や名声ではないその”自由”の響きに、僕らは惹かれているのだ。

カンヌ国際映画祭では、「しばらくは普通の25歳の生活をしたい」と語っていたが、ジェシカ・チャスティンのアプローチを受け、現在はハリウッドデビュー作品となる次回作『The Death and Life of John F. Donovan』の撮影を行っている。天才グザヴィエ・ドランが、さらなる進化を遂げて世界を騒がせる日が楽しみだ。

グザヴィエ・ドラン監督作品

『マイマザー』(2009)

マイ・マザー(字幕版)処女作が2009年のカンヌ国際映画際に出品され、若干20歳の若い監督に注目が集まった。ドランが17歳の時に脚本を書いた、ゲイの高校生が母親との関係に悩むという作品だ。半自伝的な作品で、ドラン自らゲイであることをカミングアウトしている。

『胸騒ぎの恋人』(2010)

胸騒ぎの恋人(字幕版)ゲイの少年と親友の少女が、同じ男性に恋をして対立するというストーリーで、カンヌ国際映画祭「ある視点部門」に選出された。上の2作品共に、ドラン自信が主演を務めている。

『わたしはロランス』(2012)

わたしはロランス(字幕版)初めて自分が出演しない、22歳のドランにとって”大人”を主人公にした。※トランスジェンダーの男性教師ロランスが、女性になる事を決意。恋人であり、親友である女性との関係を描いた。
※トランスジェンダーとは、ラテン語で「乗り越える」や「逆側に行く」を意味する「トランス」と、英語で「性」を意味する「ジェンダー」の合成語で、異性の社会的性的役割や規範に収まりたい人やグループのこと。

『トム・アット・ザ・ファーム』(2013)

トム・アット・ザ・ファーム(字幕版)初めて他人の戯曲を元に映画を制作したのがこの作品。恋人を亡くしたゲイの青年トムが恋人の兄に「弟がゲイであることを母に隠し通せ」と強要され、心を支配されていく物語である。

『Mommy/マミー』(2014)

ポスター A4 Mommy マミー 光沢プリント息子を守ろうとする母親と、心に傷を負った休職中の女性の3人の愛と葛藤の日々を描いた。この作品はカンヌ国際映画祭で初のコンペティション入り。初コンペにしてパルムドール受賞最年少記録かと期待されるほどの高い評価を得た。彼の作品には決まって、人間同士の対立が描かれる。「他人との違い」に世間が押し付ける不安や恐怖を、パステル調の色彩とキャッチーでポップな衣装や音楽で描いていく。彼の革新的で大胆な作品群は、まさに革新的で大胆な作品群を奨励すべく導入された「カンヌ国際映画祭ある視点部門」の常連であることも頷ける。

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-コラム
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執筆者:


  1. PineWood より:

    目黒シネマでグザヴィエ・ドラン監督の(胸騒ぎの恋人)と(私はロランス)を見ました。若いのに老人をきっちりと描く辺りが心憎い!!ピカソ、マチスなどのように画面への拘りと眼の音楽家のエリック・サテイのような繊細さを併せ持ち、ファッション・センス、デザイン感覚、ヘアーメイクと何でもこなす辺りはあのチャップリンを彷彿させる…。前者では、ダリダの歌がこだましてカーウエイ張りのスタイリッシュな映像決める♪端正さはデザイナーとしての小津安二郎とも共通する!!後者ではナタリー・バイが素顔で登場しドキュメンタリータッチのリアリテイで迫る。ファンタジーとリアリテイつまり夢と現実の交錯がこのカナデイアン映画の醍醐味なのだ。

  2. PineWood より:

    グザヴィエ・ドラン監督作品を始めて見ました。カラックス監督の(ポンヌフの恋人)を見たときのような衝撃が走りました!!(胸騒ぎの恋人)も(私はロランス)も一画面を大切にして練り上げているので画家の仕事なんですね。自画像でありシュールでファンタジックな夢を描いている訳で…。

  3. 萩山 悠太 より:

    コメントありがとうございます。萩山です。
    Pinewoodさんの仰るとおり、夢と現実の交錯が彼の作品の醍醐味なのかもしれません。
    「自分が好きなことをとことんやる」スタイルがまさに夢と現実の往復であり、彼のそんな生き方に憧れてしまいます。

    それにしてもこの若さでレオス・カラックスに迫る衝撃とは……!
    実は僕もカラックスが大好きです。

    それにしてもエリック・サテイ、ピカソ、チャップリンなど引き合いに出されている人が大物過ぎますが、不思議とそこに違和感はありません。

    今後も目が離せない才能ですね。

  4. アヤカ より:

    “私はロランス”の中でグザヴィエドランが出ているシーンがあります。😊

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