映画を観る前に知っておきたいこと

八重子のハミング
現代日本における最も切実なテーマ

投稿日:2016年11月18日 更新日:

八重子のハミング

いつか来る夫婦の別れ。
ゆっくりと二人で歩む“ありがとう”の人生 ──

山口県・萩市を舞台に描く、夫婦の純愛と家族の愛情にあふれた12年の物語。

原作となったのは、山口県萩市在住の陽 信孝さんが四度のがん手術を経験しながら、若年性アルツハイマー病の妻を介護した4000日に渡る記録を綴った手記『八重子のハミング(原題:雲流る)』。そして、その長い闘いの日々に感動したのが、同じく山口県出身の映画監督・佐々部清だった。『半落ち』(04)で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した監督が、高齢化が進む現代日本における最も切実なテーマに挑む。

佐々部作品『群青色の、とおり道』(15)にも出演した升毅、28年振りの映画出演となった高橋洋子。二人の演技が夫婦の強い絆と深い愛情を表現する。

2017年5月6日(土)より有楽町スバル座ほか全国順次公開。

予告

あらすじ

山口県のとあるホールで行われた「やさしさの心って何?」と題された講演。白髪の老人、石崎誠吾(升毅)がそこで語ったのは、妻・八重子(高橋洋子)の介護を通して経験したこと。それは、12年間に及ぶ介護生活の中で感じた妻が記憶をなくしていく辛さ。そして、在りし日の妻との思い出だった。

八重子のハミング

© Team「八重子のハミング」

ガンが見つかった誠吾が入院し闘病生活に入る一方で、かつて音楽教師だった妻の若年性アルツハイマーが判明する。ガンと闘いながら八重子の介護を続ける誠吾。妻は徐々に記憶を無くしつつも、大好きな歌を口ずさめば笑顔を取り戻すこともあった。

八重子のハミング

© Team「八重子のハミング」

そして、妻を介護していくうちに、誠吾はあることに気づく。妻がゆっくり時間をかけ、自分に別れを言おうとしているのだと。家族に支えられながら、誠吾は夫婦の思い出を心に刻みつけようと力強く歩み始める……

映画を観る前に知っておきたいこと

原作の手記を綴った陽 信孝さんの故郷、山口県での先行ロードショーを皮切りに、じわじわと全国公開まで拡大されたこの映画は、現代日本にとって最も切実なテーマを扱った作品と言える。実話ベースゆえ、目を背けたくなるような現実を見せられることになるかもしれないが、それでも加速する高齢化社会の中で、介護問題に向き合うこと、関心を抱くことのきっかけになってくれると信じたい。そして、同じような境遇にある人たちのもとへ届けられることを。

もし、この映画を観たならば、そこに運命的な出会いを感じて欲しい。なぜなら、監督の佐々部清の想いなくして、この映画は生まれなかったからだ。

人と映画

原作者の陽 信孝さんと佐々部清監督は、同郷ということもあって旧知の仲だった。7年ほど前、陽さんは自費出版した本が映画化されること佐々部監督に伝え、嬉しそうにその本を手渡してくれたのだという。それが「八重子のハミング」と佐々部監督の最初の出会いだ。そして、佐々部監督は内容も知らずに読んだその本の感想を「新幹線の帰路、ずっと涙が止まらずに困ったものでした」と語っている。

翌年、陽さんと再会を果たした佐々部監督は、映画化がまったく進んでいないことを知る。しかも、とっくに映画化の話はストップしているにも関わらず、映画会社から陽さんのもとへは何の連絡もなかったという。これに憤りを感じた佐々部監督は、自ら『八重子のハミング』の映画化を買って出たのだ。

そう、この作品は内容だけではなく、全てが人同士の繋がりや想いによって紡がれている。今でこそ上映館数を増やし、より多くの人の目に触れる映画となったが、一度はその誕生すら危ぶまれた作品なのである。だからこそ、『八重子のハミング』には、同じように介護問題に喘ぐ人たちの背中を支える力があるのだ。

-ヒューマンドラマ
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執筆者:


  1. 匿名 より:

    こんばんは。アークエンタテインメント宣伝の山崎と申します。本作を宣伝しております。ご紹介ありがとうございます。また、先日は『スモーク』でも素敵に映画紹介をしていただきありがとうございました。
    こちらも紹介していただいている事知り嬉しくてコメントを残します。
    全国公開の日程を5/6(土)より有楽町スバル座ほか全国順次公開とリライトくださると嬉しいです。じわじわとなんとか全国公開まで漕ぎ着けました。よろしくお願いいたします。

  2. 今川 幸緒 より:

    お返事遅くなりました。Lucky Nowの今川です。
     
    こうした広がり方をみせる作品は、多くの人がそこに意味を見出している証拠だと思います。作品と同じ山口県出身であることを少しだけ誇らしく感じる今日この頃です。

    より多くの人の目に触れるといいですね。

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