映画を観る前に知っておきたいこと

汚れたミルク あるセールスマンの告発
ダニス・タノヴィッチ最大の問題作

汚れたミルク あるセールスマンの告発

子どもたちを守るため、
男は世界最大企業を敵にまわした。

ボスニア紛争を題材にしたデビュー作『ノー・マンズ・ランド』(01)でアカデミー外国語映画賞に輝いたダニス・タノヴィッチ監督が挑む、パキスタンに今も暗い影を落とす実際に起こった事件。

1997年、ある大手グローバル企業がパキスタンで粉ミルクを強引に販売したため、不衛生な水で溶かした粉ミルクを飲んだ乳幼児の死亡率が増加してしまった。それは企業倫理を無視した行為だったのか?社会から引き裂かれた状況下にある人々と大企業に立ち向かう男の闘いにカメラを向けた問題作が、世界で初めて公開される。

ボリウッド映画などで活躍するイムラン・ハシュミが主人公アヤンを演じるほか、『ビッグ・アイズ』(14)のダニー・ヒューストンが出演する。


予告

あらすじ

パキスタンで粉ミルクを販売する大手グローバル企業。営業マンとして会社に従事するアヤン(イムラン・ハシュミ)は、粉ミルクの売り込みで結果を残し、いつしかトップセールスマンとなっていた。

汚れたミルク あるセールスマンの告発

© Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014

しかし、彼は自らが販売した粉ミルクが子供たちの命を奪っている現実を知ることとなる。強引な販売を続ける会社が、粉ミルクを不衛生な水で溶かして飲む乳幼児の死亡率を引き上げてしまったのだった。

汚れたミルク あるセールスマンの告発

© Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014

インフラの整備が遅れている政府の問題だとする企業側の主張。アヤンは己の信念に従い、彼らを訴えようとするが……


映画を観る前に知っておきたいこと

デビュー作『ノー・マンズ・ランド』で脚光を浴びた監督ダニス・タノヴィッチの次の作品でありながら、製作から3年経った2017年に日本で初公開されるという事実が問題作であることを物語っている。

ボスニアの監督である彼がなぜパキスタンのこの問題を映画のテーマとして選んだのだろう。1997年に起こったこの事件は今もまだ解決されておらず、報道もされてこなかったという。あまりにも情報が少ないため、僕たちは映画で直にこの問題と向き合うことになる。

パキスタンにおける女子教育

物語のキーとなるのが、インフラの整備が遅れている政府の問題だとする企業側の主張である。決して毒入りの粉ミルクを販売していたわけではない彼らの最もらしい言い分なのかもしれない。

発展途上国であるパキスタンのインフラ整備が現在も追いついていない大きな原因の一つがテロの脅威だ。

米同時多発テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディンがかつて潜伏していたのがパキスタン北部の都市アボタバードであり、アフガニスタンと国境を接した北西部の山岳地帯の村々は過激派組織タリバンの温床となっている。現在もテロが頻発するこの国の不安定な社会情勢は、海外企業の進出の足を鈍らせ、経済的な発展を遅らせているのだ。その結果、生活が貧しくなるほどタリバンに傾倒していく者も増えるという悪循環を生み出してしまう。

そして、タリバンが女子教育を禁止していることが映画の主題にもつながっていく。パキスタンでは文字が読めない母親が多く、粉ミルクの缶に書いてある説明を読めないことが乳幼児の死亡率に直結しているのだ。

現在はイスラム宗教施設に設置された学校など、パキスタンの女性たちが教育を受けられる機会も増えてきているという。それは先進国が必ず通ってきた女子教育の歴史でもある。

企業と国の成熟度のズレが予想だにしない問題を引き起こすのであれば、それは誰の責任でもないのかもしれない。ここで僕が企業を糾弾することはできないが、国の発展を促しながら自分たちも潤うような関係性を築くことが企業側にも求められていることは間違いない。

少なくとも、問題が発覚した時点で立ち止まることはできたはずなのだから。

現在、12歳前後まで粉ミルクが飲まれる現地の習慣に目をつけた明治や森永乳業などの日本企業が、パキスタンの粉ミルク業界にどんどん参入している。

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