岡本喜八監督をプロデューサーとして支え続けてきた妻、岡本みね子が脚本家を目指していた頃の旧姓、中みね子を名乗り初監督に挑んだ。脚本完成に5年をかけ、77歳にして人生初のメガホンを取る。「想いを貫く」というテーマを、一人の女性を通じて、日本のつつましやかな美しさとともに描いたヒューマンドラマ。
- 製作:2015年,日本
- 日本公開:2015年5月23日
- 上映時間:102分
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 想いを貫いた中みね子監督
- 3.2 それはそれ。これはこれ。
予告
あらすじ
ひさしぶりに母の市子(八千草薫)の元を尋ねた進(風間トオル)。しかし、市子は留守で、部屋には宮謙一郎(仲代達矢)という画家についての新聞の切り抜きが残されていた。母の旅を心配し、後を追う進。だが進はまだ知らない。戦後の貧しい時代に封印された母の若かりし日の想いを。
一方、彼の個展の記事を目にした市子は、思い出の一枚の絵画をどうしても見たいと秋深まる軽井沢へ。少女の頃に想いを寄せていた人は、今では国際的な画家となっていた。美術館の職員に思い出の絵について訪ねてみるも、展示されるかは分からないと言われてしまう。
軽井沢で人のぬくもりに触れ、やさしくほどけてゆく市子の心。そんな市子に思いがけない出逢いが訪れる・・・。
映画を見る前に知っておきたいこと
想いを貫いた中みね子監督
体力が必要だとわかっていたが、お歳がお歳なだけに、大声を出すのも指示を出すのも大変だったよう。その時、映画監督は孤独だということも初めて知ったと。それでもこの作品を自信で撮った理由は、他の監督では違う作品になってしまうと思ったからだと言う。
岡本喜八監督が亡くなって10年。八千草薫さん扮する主人公・市子と中みね子監督は想いを貫くというテーマで重なる部分が少なからずある。
それはそれ。これはこれ。
しかし、貫いた想いはそれはそれ。監督の私情で映画を語るのは無粋というものだ。そんな事情は一切捨てて、僕は76歳の日本人女性のセンスに注目したい。岡本喜八監督のそばでプロデューサーとして忙しい日々を過ごした、中みね子監督が見ている世界を体験できる貴重な機会だと思う。
予告動画を見て思ったのは、まず日本語がとても美しいということ。台詞の間、言葉のテンポ、何がそう思わせるのかはわからないが、一言一言が深く染み入る。そして演出。日本人の美的センスの根底にあるのはシンプルではなく、エンプティ(空)だと言った人が居た。日本を代表するグラフィックデザイナー・原研哉だ。彼は『日本のデザイン』という本の中でそう語っている。
何もない空白に描かれた一点に「美」を感じるのは、世界中で僕ら日本人だけらしい。この映画には、そんな美しさを感じる。