カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界三大映画祭で主要賞を制覇したポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキ最新作!
午後5時に始まり5時11分に終わる14人の人々と1匹の犬が織り成す群像劇。それぞれの物語りが交錯し、やがて観客の誰もが想像し得ない驚愕のラスト・シーンへと辿り着くリアルタイム・サスペンス。
11分後に何かが起こる!?
- 製作:2015年,ポーランド・アイルランド合作
- 監督:イエジー・スコリモフスキ
- 日本公開:2016年8月20日
- 上映時間:81分
- 原題:『11 minut』
Contents
予告
あらすじ
午後5時前。顔に殴られた跡を残して、警察から自宅に戻ってきたヘルマン。嫉妬深い彼は、妻で女優のアニャと言い争い、その後睡眠薬を入れたシャンパンを飲むと、そのまま寝てしまう。その間に、アニャは面接のため映画監督の待つホテルへと向かう。午後5時。慌てて飛び起きたヘルマンも、アニャを追ってホテルへ。そのホテルの前では、最近、刑務所から出たばかりの男がホットドッグの屋台を開いていた。
一方、バイク便の配達員の男は人妻とドラッグをやりながら情事に耽っていた。彼女の夫が帰宅したため、男は慌ててその場から逃げ出す。
やがて、父親であるホットドッグ屋台の主人に電話で呼ばれ、男もホテルへ向かう。そのホテルの一室には、ポルノ映画を見ている一組の男女がいた。
そして彼らの頭上には、着陸態勢に入ろうとする旅客機の姿があった……
午後5時から5時11分までの11分間、それぞれの運命が絡み合い、やがて迎える結末は!?
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映画を見る前に知っておきたいこと
ポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキ
これまでカンヌ、ベネチア、ベルリンの世界三大映画祭での主要賞を始めとする多くの映画賞を獲得し、1964年の監督デビューから半世紀以上に渡って映画に携わりながらポーランド映画界を牽引してきた巨匠イエジー・スコリモフスキ。
彼は本作で、78歳にしてなお映画表現の新たな地平を切り拓こうとしている。
群像劇を手掛けるのはスコリモフスキ監督にとって初の試みであった。
11分毎に描かれるそれぞれの物語りはスピード感を生み、さらにそれらが一つに繋がっていく事でリアルタイム・サスペンスとしての緊張感も演出されている。
しかし、本作はサスペンスという一つのジャンルで括れる作品ではない。あくまでそれは映画を構成する一つの要素に過ぎない。一切説明されない物語りの背景、限定された抽象的空間、特殊な時間設定などスコリモフスキ監督の映画スタイルは、使い古されたサスペンスという定番ジャンルの様式を見事に破壊している。
それでも運命のいたずらが衝撃的なクライマックスへと導いていく流れは、観客の心を惹き付ける。本作の脚本を手掛けたのもスコリモフスキ監督自身だ。
作品に込められたテーマと群像劇の必然性
革新性を追求するスコリモフスキ監督が本作に込めたテーマも、また現代的なものだった。
人々の何気ない日常を切り取りながら、11分後にはそれが突如変貌してしまう運命を映し出す事で、突然テロに見舞われる不条理な現代社会の比喩としている。
そして見ず知らずの人がとった行動が間接的に他人の運命を変えていく群像劇は、今や当たり前となったSNSでのコミュニケーションを象徴している。ネットに依存する程、バーチャルと現実の堺は曖昧となり、いつしか個人の死生観すらサイバー・スペースやクラウドといった環境に取り込まれていく可能性を示唆しているのだ。
こうした問題に警鐘を鳴らす監督はいるが、あえて難解な手法にこれらのメッセージを落とし込む事は容易ではない。脚本の段階から群像劇にする辺りはテーマに対する必然性も感じられるスコリモフスキ監督の老獪さだ。
「心から信じられる話になるか、逆に信じられない話になれば心強い。」
イエジー・スコリモフスキ
- 1967年『出発』
ベルリン国際映画祭 金熊賞 - 1978年『ザ・シャウト/さまよえる幻響』
カンヌ国際映画祭 審査員特別賞 - 1982年『Moonlighting』
カンヌ国際映画祭 脚本賞 - 1985年『ライトシップ』
ベネチア国際映画祭 審査員特別賞 - 2008年『アンナと過ごした4日間』
東京国際映画祭 審査員特別賞 - 2010年『エッセンシャル・キリング』
ベネチア国際映画祭 審査員特別賞,男優賞