映画を観る前に知っておきたいこと

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります
人生のリノベーションを!

投稿日:2015年12月10日 更新日:

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

人生も、リノベーションしてみませんか?

エレベーターがないことから、カーヴァー夫婦は住み慣れた我が家を売るべきか悩んでいた。そんな折に愛犬のドロシーが緊急入院、ニューヨークはテロ騒動で地価が大暴落。二人の最低で最高の週末が始まる ──

『ミリオンダラー・ベイビー』(04)のモーガン・フリーマンと『アニー・ホール』(78)のダイアン・キートン、二人のオスカー俳優が夫婦役で初共演を果たした、明日が少しだけ幸せになる物語。

ロサンゼルス・タイムズから「ほとんど完璧な小説」と評された、カナダ出身の作家ジル・シメントによるロングセラー小説『眺めのいい部屋売ります』をイギリス人監督リチャード・ロンクレインが映画化した。

予告

あらすじ

画家アレックス(モーガン・フリーマン)と元教師の妻ルース(ダイアン・キートン)は愛犬ドロシーと共に、ブルックリンの街を一望できるアパートメントの最上階で暮らしていた。40年間連れ添ってきた夫婦が住み慣れたこの部屋には、ひとつだけ欠点があった。それはエレベーターがないこと。

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

© 2014 Life Itself, LLC

ルースは年長の夫の将来を案じ、部屋を手放すことを決意する。アレックスもまた妻の気持ちをおもんばかって、アトリエのある我が家を売り出すことを承諾した。しかし、お互いのことを思っての決断だったはずが、ついつい言い合いを重ねる夫婦。

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

© 2014 Life Itself, LLC

いよいよ購買希望者の内覧日を明日に控えたその日、愛犬ドロシーが体調を悪くし緊急入院することに。時を同じくして街ではテロ騒動が。

次々とトラブルに見舞われた最低の週末、二人が選んだ最高の決断とは!?

映画を見る前に知っておきたいこと

モーガン・フリーマンとダイアン・キートン、まるで二人が共演するために用意されたかのような原作。夫婦の心の機微に、年をとることは楽しいことなのかもしれないと思わされるほど、この映画のタッチは軽やかで心地よい。

そして、映画を締めくくるヴァン・モリソンの名曲「Have I told you lately」。アレックスの心情とも重なる選曲が、これまた憎い演出だ。

しかしそれらは純粋な夫婦の物語としての感動であり、家の売買、愛犬の危機、テロ騒動、3つのストーリーを巡る物語はもう少し複雑に絡まっているようだ。

愛を紡ぐ物語として

マンハッタンに暮らすユダヤ系老夫婦として描かれた原作から、映画では舞台をブルックリンに黒人と白人、つまり異人種間の結婚をした夫婦へと置き換えられている。低所得者層の多いブルックリンは夫婦の苦節を容易に想像させ、より複雑化したアレックスとルースの関係性が、人種による価値観の違いというメッセージを原作以上に分かりやすく伝えているのだ。

一見、夫婦の日常に関係ないようなテロ騒ぎも、アメリカ社会におけるイスラム教徒に対する偏見を浮き彫りにしながら、アレックスの生い立ちに重ねられることでひとつの物語へと連結されていく。また、二人の子供のような愛犬ドロシーの危機も、老夫婦の若き日々の回想によって初めてその意味を汲み取ることができるようになっている。

家の売買を中心とした夫婦の物語は3つのストーリーを行き来することで、より大きな視野の愛を手に入れながら二人の最高の決断まで辿り着くのである。どこかちぐはぐにも映るそれぞれのエピソードが観客の頭の中でひとつの主題を共有した時、映画は心地よい余韻へと姿を変えるのだ。

ロサンゼルス・タイムズによる「ほとんど完璧な小説」という原作の評価は、映画にも引き継がれている。皆がご満悦のモーガンとキートンの演技を引き出したのは、他でもないジル・シメントの原作だろう。

-ヒューマンドラマ
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