映画を観る前に知っておきたいこと

【ヴェルサイユの宮廷庭師】歴史上に実在した“かも知れない”無名の女性庭師の物語

投稿日:2015年9月20日 更新日:

ヴェルサイユの宮廷庭師

ベルサイユ宮殿の庭園建設家として抜擢された女性庭師の物語。美しく華やかな当時のフランスを生きる一人の女性庭師の人生を描いた。主人公は架空のキャラクターながら、歴史上に実在した無名の女性庭師として描かれ、ストーリーは当時を生きた歴史上の著名人たちとの絡ませながら展開していく。

「ハリー・ポッター」シリーズで知られるイギリスの名優アラン・リックマンの監督第2作。監督・脚本のリックマンはルイ14世役で出演もしている。主演は「愛を読むひと」「タイタニック」のケイト・ウィンスレット。

  • 製作:2014年,イギリス
  • 日本公開:2015年10月10日
  • 上映時間:117分
  • 原題:『A Little Chaos』

予告

あらすじ

1682年、フランス。とある田園地方で、サビーヌ・ド・バラ(ケイト・ウィンスレット)は造園家として植物や土をいじる生活を送っていた。ある日彼女のもとに、国王ルイ14世(アラン・リックマン)からの書状が届く。それはヴェルサイユ王宮の庭園建設参加を求めるものだった。

早速、サビーヌは庭園建設の責任者ル・ノートルの面接へと向かった。豪華な衣装とカツラで飾り立てた同業者たちは、サビーヌが女性であることを理由にあからさまな皮肉を口にする。ヴェルサイユの宮廷庭師 あらすじ肝心のル・ノートルとは意見が対立し、あっという間に面談は終了。サビーヌは落選を覚悟していたが、ル・ノートルは彼女の感性に斬新な可能性を感じ、サビーヌは〈舞踏の間〉建築の任を任されることになる。

そこは噴水に囲まれた野外の舞踏場。硅石とアフリカやマダガスカル産の貝を階段状に積み上げたデザインは、伝統と調和を重んじるル・ノートルの知識と、ほんの小さな無秩序(a little chaos)を愛するサビーヌの感性が融合した新しい庭だった。

しかし、水のない土地柄、ヴェルサイユに水を引いて滝を造るという作業は困難を極めた。時間も予算も限られた中で、自然と対峙しながら夢の庭を築こうと奮闘する二人。同じ目的に立ち向かっていくうちに、サビーヌとル・ノートルはお互いに惹かれ合っていく。ヴェルサイユの宮廷庭師 あらすじ一方、国王ルイ14世はマリー・テレーズ王妃を亡くし、とある小庭でカツラを外して悲嘆にくれていた。そこにやってきたサビーヌは、事情を知らず、国王を造園家のムッシュ・ド・ラ・カンティニと間違えてしまう。結果的に、そのハプニングが国王とサビーヌの心を通わせ、国王は彼女をルーヴル宮へと招き入れる。ヴェルサイユの宮廷庭師 あらすじ招かれたサビーヌは、貴族たちの好奇の目にさらされながらも、王の前での心のこもった挨拶で女性宮廷貴族たちをも魅了していく。ル・ノートルも同じく、そんな彼女に魅了されていた。ヴェルサイユの宮廷庭師 あらすじところが、彼には契約結婚によって夫婦となった妻がいたのだ。それは互いに干渉しないと約束したものであり、マダム・ル・ノートルは平然と愛人との逢瀬を楽しんでいた。しかし、夫と身分が違いすぎる女性庭師サビーヌとの仲に気づき、謀を企てる。

一方、サビーヌにも人知れず胸の奥にしまい込んだ悲しい過去があった。仕事中に娘の空耳を聞き、心を乱されるサビーヌ。果たして、二人の関係はどうなっていくのか。〈舞踏の間〉を無事に完成させることが出来るのだろうか――。

映画を見る前に知っておきたいこと

ロカイユの木立「舞踏の間」

本作で取り上げられたヴェルサイユ宮殿に実在する庭は、ロカイユの木立の別名を持つ「舞踏の間」。実際にはアンドレ・ル・ノートルという人物によって造園された。この映画は、「もしあの『ロカイユの木立』が一人の名も無き女性の手によるものだったら」という考えに着想して作られたなんともロマンチックなフィクションである。

ル・ノートルは、主人公サビーヌの師として登場する。無機的で幾何学的なル・ノートルの作品において、「舞踏の間」はとても有機的な色彩に満ちている。脚本家であるアリソン・ディーガンは、その有機的な色彩に人の情愛、女性らしさのようなものを見たのだろうか。

この作品が着想された最初の脳の働きとしては、“ロカイユの木立を見た感想”と言える類のものだと思う。それを当時の貴族社会の文化と人間関係を反映させて、ここまでの物語に昇華させたアリソンの想像力に驚くばかりである。

ヴェルサイユのフランスを時代、世代、あらゆるものを超えて美と愛をテーマにイギリス人が描くというのも感慨深い話だ。

-ヒューマンドラマ, 洋画

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