映画を観る前に知っておきたいこと

AMY エイミー
エイミー・ワインハウスと27クラブ

投稿日:2016年6月6日 更新日:

AMY エイミー

ここにも27クラブ(27歳で他界した著名なミュージシャンの総称)がいた!どうして人々に愛されたミュージシャンの多くは27歳でこの世を去ってしまうのだろう……

たった2枚のアルバムで1200万枚以上のセールスを記録したR&Bの歌姫エイミー・ワインハウスの素顔に迫る渾身のドキュメンタリー。薬物中毒やアルコール依存症などのスキャンダルの裏に隠された、歌う事を愛し、愛されたいと願う普通の一人の女の子としてのエイミー・ワインハウスまで映し出す。

2015年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を始め、世界中で40以上の賞を受賞した今年最も注目されるドキュメンタリー映画。

  • 製作:2015年,イギリス・アメリカ合作
  • 日本公開:2016年7月16日
  • 上映時間:128分
  • 原題:『Amy』

予告

あらすじ

1983年イギリス・ロンドンのユダヤ系家庭に生まれたエイミー・ワインハウスは幼少期からジャズに親しみ、思春期にニューソウル、ヒップホップ、カリビアン・ミュージックとの衝撃的な出会いを経験する。

AMY エイミー

そして、10代でレコード契約を結び、弱冠20歳で完成させたデビューアルバム『Flank』はイギリス国内で67万枚のセールスを記録した。続くセカンドアルバム『Back to Black』は全世界1200万枚のセールスを記録し、グラミー賞5部門受賞を成し遂げる。

AMY エイミー

50年代のジャズ、60年代のソウル・ミュージックをアップデートした彼女の音楽はレディー・ガガ、ジャスティン・ビーバー、アデルたちからも賞賛された。しかし2011年7月23日、27歳の若さで急逝。死因はアルコール中毒だった。

AMY エイミー

人生をひたむきに駆け抜けたスキャンダラスな歌姫エイミー・ワインハウスの貴重なプライベート映像や未公開フィルム、家族や友人、音楽関係者へのインタビューから彼女の半生に迫り、その心に秘められた真実を明らかにする……

映画を見る前に知っておきたいこと

エイミー・ワインハウス、彼女の歌声に誰もが魅了され、シンガーソングライターとして世界中に多くのファンを持つ反面、そのスキャンダラスな人生は彼女自身を破滅へと追いやった。しかし、今となってはそんな一面も彼女の魅力の一つになっている。僕たちは音楽だけではなく、同じぐらいアーティストの人間性にも注目しているのだ。

エイミー・ワインハウスの死因とスキャンダル

彼女は薬物中毒やアルコール依存症でリハビリ施設に入所したり、マリファナ所持と密輸疑惑や暴行などで何度も逮捕されるなど世間を騒がせていた。このためアメリカに入国するのに必要なビザが発行されずグラミー賞を欠席している。

また、4歳年上のシビルと結婚しているが約2年後に離婚し、半年後にはシビルと再度婚約、さらに数か月後には再度婚約解消するなど、恋愛面でもスキャンダルが多い。

しかし、この一連の騒動からは彼女のシビルに対する異常な執着と愛情を感じる事ができる。程なくシビルは別の女性と結婚し、子供が生まれるのだが、これが彼女の薬物依存に拍車を掛けたと言われている。

そこには歌姫としてのエイミー・ワインハウスではなく、一人の愛に飢えた弱い女性としてのエイミー・ワインハウスがある。

音楽の才能は素晴らしいが、むしろ人間としては欠陥が多い。一度は遅刻したあげく泥酔して2万人のファンが待つコンサート会場に現れ、まともに歌う事もできず「史上最悪のコンサート」と扱き下ろされた事もある。

しかし、そんな自由奔放に振る舞う彼女の姿はなぜか愛おしく感じる。どうしようもない愚かな行動の多くは、決して僕たちに真似できない。

そして、彼女の最期は2011年7月23日、突然訪れる。ロンドンのカムデンにある自宅で発見された彼女の遺体の側には2本の空のウォッカの瓶があった。致死量のアルコールが原因だった。事件性はないとされている。

彼女の素顔を知る事で、その歌声もより切なく、より感情的に僕たちの胸に響く。グラミー賞を受賞した「Rehab(リハブ)」を聴いてみて欲しい。この曲は薬物中毒やアルコール依存症によるリハビリ施設での経験が歌われている。

エイミー・ワインハウス 「Rehab(リハブ)」

27クラブ

どうして著名なミュージシャンたちの多くは27歳で命を落とすのだろう。あまりにもその事例が多いため、彼らを総称して27クラブと呼ばれる。

27クラブの代表的な人物は、ローリング・ストーンズの元リーダーであるブライアン・ジョーンズ。ジミ・ヘンドリックス。ジャニス・ジョプリン。ドアーズのジム・モリソン。ニルヴァーナのカート・コバーンがいる。

27クラブはもともとはこの5人を指す呼び方だった。しかし、本作のエイミー・ワインハウスなど他にも挙げれば切りがない。

これはただの偶然なのだろうか。不気味な運命めいた何かを感じざるを得ない。

5人のうちカート・コバーンだけが自殺で、後は事故や心臓発作、ヘロインのオーバードースが死因だ。自殺だけは自分で死ぬ年齢を決められるが、それ以外はたまたまということになってしまう。

よくミュージシャンを志す若者が「俺は27歳で死ぬ」というセリフを口にする。彼らは27クラブに対する憧れや、27歳で死ぬ事が偉大なミュージシャンの証明になると信じている。

若い頃、バンドをやっていた僕にはその心情がよくわかる。僕が27クラブの中で最も憧れた人物はブルース・ギタリストのロバート・ジョンソンだった。

彼はギター1本での弾き語りだが、一人で伴奏と旋律の両方を同時に奏でる技巧の持ち主だった。

そのプレイから、彼には「十字路で悪魔に魂を売り渡して、その引き換えにテクニックを身につけた」というクロスロード伝説がある。また、一度聴いた曲はすぐに演奏できたとも言われている。

当時の僕は、こんな伝説を結構本気で信じていた。悪魔と契約したから27歳で死んだのだと。27クラブの他のミュージシャンも悪魔に出会ったのかもしれないとか想像したものだ。

ブルースを色濃く感じさせるエイミー・ワインハウスの音楽性は、僕にそんな話を思い出させた……

ロバート・ジョンソン 「Crossroad」

-7月公開, ドキュメンタリー, 洋画
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