アメリカとメキシコの国境地帯で行われる麻薬戦争では人の命は虫けらのように奪われていく。最前線に身を投じたFBI捜査官ケイトは麻薬組織ソノラ・カルテルの壊滅ミッションに挑むが、手段を選ばぬやり方に戦慄を覚えるのだった。そして、善と悪のボーダーラインすら曖昧になっていく。通常のニュース報道では決して知ることのない麻薬戦争の実態を浮き彫りにしたクライム・サスペンスアクション。
監督は『灼熱の魂』(2010年)のドゥニ・ヴィルヌーヴ。キャストは『イントゥ・ザ・ウッズ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のエミリー・ブラントを始め、『トラフィック』でアカデミー助演男優賞と第51回ベルリン国際映画祭男優賞に輝いたベニチオ・デル・トロ、『ノーカントリー』『ミルク』などで高い評価を得ているジョシュ・ブローリンと主演級3人が顔を揃える。
第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作品。第19回トロント国際映画祭正式出品作品。第88回アカデミー賞3部門ノミネート。
- 製作:2015年,アメリカ
- 日本公開:2016年4月9日
- 上映時間:121分
- 原題:『Sicario』
- 映倫区分:R15+
Contents
予告
あらすじ
アメリカとメキシコの国境の町フアレス。そこは麻薬と汚職にまみれた無法地帯と化していた。肥大化するメキシコの麻薬組織ソノラ・カルテルを壊滅させるためアメリカ国防総省特別部隊に選抜されたFBI捜査官のケイト。特別捜査官に召集された彼女は、ソノラ・カルテル壊滅ミッションのため、あるコロンビア人と行動を共にすることに。しかし、そのミッションは仲間の動きさえも掴めない通常では考えられないような任務であった。人命が虫けらのように簡単に奪われるような状況下に置かれ、麻薬カルテル壊滅という大義のもと、超法規的手段を駆使することは、合法的に悪を裁くケイトの理想を打ち砕いた。
フアレスで麻薬捜査をすることは町全体を敵に回すことを意味し、もはや犯罪の域を超えた麻薬戦争の得体の知れない闇へと飲み込まれていくケイト。そして、さらなる想像を絶する真実を目の当たりにするのだった……
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映画を見る前に知っておきたいこと
ヒューマンドラマとアクションのボーダーライン
この映画はただのクライム・アクションではない。現実のかなり根深い問題をテーマとして扱うことで、登場人物の内面にスポットを当てた人間ドラマとして楽しめる作品となっている。第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されたのはこの部分が大きいと思われる。
タイトルの『ボーダーライン』はアメリカとメキシコの国境線を表すと同時に、善と悪の境界線も意味している。エミリー・ブラント演じる主人公のFBI捜査官ケイトは麻薬カルテル壊滅のため合法な手段だけでは状況が改善されないことから善と悪の境界線を見失う。そしてベニチオ・デル・トロ演じるアレハンドロも復讐に捕われながら葛藤を抱え、やがて目的は手段を正当化していく。登場人物すべてが善人か悪人かの判断が難しいことが、本作をただのクライム・アクションからよりメッセージ性の高い作品へと昇華させている。
娯楽的なクライム・アクションを求める人には向かない、受け手の判断を要求するような作品なのでそこは注意が必要であると同時に、最大の見所とも言える。
もはやただの麻薬犯罪検挙という域を超えて戦争と呼ばれるほど、悪化しているアメリカとメキシコの国境に存在するこの問題をテーマとして扱うことで、もちろんアクションとしても十分機能しているのは言うまでもない。また、『ノーカントリー』や『007 スカイフォール』を手掛けたロジャー・ディーキンスが撮影監督を務めたことと、第88回アカデミー賞では撮影賞にノミネートされていることからもそれは伺える。
ヒューマンドラマとアクションのボーダーラインを判断しろ!
「本作は秘密工作やメキシコの麻薬カルテルの世界を直視する作品であると同時に、アメリカン・ストーリーでもある。つまり、他国の問題に対処する時の理想と現実の衝突を描く。」
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
「これは選択を描く映画だ。」
ベニチオ・デル・トロ
「ケイトはこの世界に魅せられる。ルール通りに行動しても表面をかする事しかできないことに気付き、自分は事態の改善に向けて力になれると信じたいと願っている。でもルールに背かなければならなくなったケイトは、世界が根底から覆され何が何だかわからなくなる。」
エミリー・ブラント
「観客が自らつかみ取り、各々に解釈できるヒューマン・ミステリーだ。サスペンスに富み、感情を揺さぶるパズルだ。」
ジョシュ・ブローリン