映画を観る前に知っておきたいこと

カフェ・ソサエティ
アレン流の皮肉は幻想のハリウッド

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カフェ・ソサエティ

ひとりの男と ふたりのヴェロニカ

1930年代、ニューヨークから黄金期のハリウッドへとやってきたごく平凡な青年。彼は美しい二人のヴェロニカに夢中になる。

齢80を超えて衰え知らず、ロマンティック・コメディの名匠ウディ・アレンが紡ぐ、ビタースウィートでゴージャスな大人の御伽話。ハリウッドが本当に夢の都だった黄金期に思いを馳せたアレンが、めくるめく陶酔感と高揚感を今に甦らせると共に、近年の作品では最もゴージャスで彩り豊かなタッチで描き出す。

『ローマでアモーレ』(12)でアレンと組んだジェシー・アイゼンバーグが主演を務め、二人のヒロインとしてクリステン・スチュワートとブレイク・ライブリーが共演。監督が自らナレーションを担当する。

予告

あらすじ

1930年代。もっと刺激的で、胸のときめく人生を送りたい……漠然とそんな願望を抱くニューヨーク暮らしの平凡な青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、華やかな映画の都ハリウッドを訪れる。そこは、全米から明日の成功を目指す人々が集まり、熱気に満ちていた。

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© 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC

スターのプール付き豪邸には、昼も夜もドレスアップした業界のセレブリティが集ってパーティーに興じ、最高級の酒を酌み交わしながらゴシップやビジネス談義に花を咲かせる。そんな中、業界の敏腕エージェントである叔父フィル(スティーヴ・カレル)のもとで働き始めたボビー。彼は叔父の秘書ヴェロニカ(クリステン・スチュワート)の美しさに心を奪われる。

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© 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC

ひょんな幸運にも恵まれてヴェロニカと親密になったボビーは、やがて彼女との結婚を思い描き始めるが、うかつにも彼はまったく気づいていなかった。実は彼女には密かに交際中の別の男がいることを。そんな意気消沈のボビーが次に出会ったもう一人の美女も、またヴェロニカ(ブレイク・ライブリー)だった……

映画を観る前に知っておきたいこと

日本を含む世界中で大ヒットを記録した『ミッドナイト・イン・パリ』(11)で、観客を1920年代ゴールデンエイジのパリへとタイムトリップさせたウディ・アレンが、僕たちをもうひとつの黄金時代へと誘う。それは銀幕のスターが次々と登場し、永遠に語り継がれる映画史上の名作がいくつも生み出された1930年代のハリウッド。しかし、この物語そのものが、まるでアレン流の皮肉の塊のようである。

幻想のハリウッド

これまでアカデミー賞で史上最多となる24回のノミネート経験を持つウディ・アレン。しかし、彼がアカデミー賞の授賞式に姿を現したのはたったの一度だけである。授賞式をすっぽかしてニューヨークのパブでクラリネットを吹いていたという話が語り草になるほど、彼はハリウッドに愛されながら、ハリウッドに背を向けた監督としても知られる。

唯一授賞式に出席した2002年も、前年に発生したアメリカ同時多発テロで犠牲になった人たちに捧げるオマージュ企画に出演するためだったという。出番が終わると、彼は早々にニューヨークに引き上げてしまった。そう、アレンはニューヨークを愛し、ハリウッドに嫌悪感を抱く男なのだ。

ウディ・アレン史上、最もゴージャスに演出された1930年代のハリウッド。かつて誰もが憧れた街で、無垢な若者は映画業界の仕事そっちのけで情事に明け暮れていく。そんな主人公ボビーに、アレンは自身の想いを投影させる。

“夢”や“人生の選択”といった若者に対する煌びやかなテーマ?いやいや、これはハリウッドの輝きは幻しだと言わんばかりのアレン流の皮肉がたっぷりと込められた、“ハリウッドに酔いしれて、ニューヨークに恋をする”大人の御伽話だ。

-コメディ, ラブストーリー
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