映画を観る前に知っておきたいこと

パリよ、永遠に 光の都パリを救った一世一代の「駆け引き」

投稿日:2015年1月7日 更新日:

時は第二次世界大戦中。この映画はナチスドイツ軍のパリ掃討作戦を巡る物語です。監督はフォルカー・シュレンドルフ。彼は1939年の戦時中のドイツで生まれ、戦後フランスに移住しています。そんな経歴からか、近年の彼の作品は戦時中の仏独の関係をテーマにしたものが多い。
今回はフランスでは有名な舞台を原作とした実話に基づいた物話。パリ掃討作戦が実行に移されるまでのたった数時間の、ウィットに富んみながらも緊迫した駆け引きが、気持ちの良いテンポで楽しめる。

  • 製作:2014年フランス・ドイツ合作
  • 日本公開:2015年3月7日
  • 原作:舞台作品『Diplomatie』シリル・ゲリー作
  • 上映時間:83分

予告

あらすじ

1944年、8月25日。第二次世界大戦中、ヒトラーはある命令を下した。「パリは、廃墟以外の姿で敵に渡すべきではない」命令を受けたのはパリ防衛軍を率いるコルティッツ大将。レジスタンスの蜂起、連合軍の進軍に追い詰められたドイツのパリ防衛軍はパリ破壊作戦の準備を進めていた。

対峙するコルティッツ将軍とノルドリング領事

そこへ説得にやってきたのはスウェーデン総領事、ラウル・ノルドリンク。パリで生まれ、パリで育った彼はパリを救いたい一心でコルティッツの説得を試みる。一方、妻子を人質に取られ作戦を実行せざるを得ないドイツ軍将校。長い一夜の話し合いが始まる―。

映画を見る前に知っておきたいこと

当時のパリの情勢

当時のパリはレジスタンス軍とドイツ軍の戦闘真っ只中。レジスタンスは劣勢ですぐにでも鎮圧されてようとしましたが、そこに休戦協定を結ばせたのがスウェーデン総領事館のノルドリングでした。そんな中ついに連合軍がパリ進軍を開始。コルティッツは防衛は無理だと察し、ヒトラーにパリの郊外で防衛することを提案します。ですがヒトラーは「パリは敵の手に落ちるくらいなら廃墟にするべき」と言いパリ市街での応戦を命令しています。
手に入らなければ破壊しようとまでするヒトラー。開放のため進軍する連合軍。パリを破壊から救いたいノルドリングとそれぞれの思惑に揺れるコルティッツ将軍。第二次世界大戦中のあの時、世界中がこだわったパリとは一体どんな都市なのでしょう。

ナチス占領下のパリ

1900年代のパリは特別だった

パリは世界屈指の観光都市として「芸術の都」というイメージを打ち出た通り、美術、音楽、演劇、バレエなど、様々な芸術の中心地として有名です。もちろん当時もパリの名声は世界中に轟き、芸術を愛するたくさんの人達を惹きつけていました。
それだけではなく、1900年代に入ってからのパリは経済的にも急激な発展を遂げており、産業革命で有名なロンドンと肩を並べるほどの近代都市に成長します。人々はパリを「光の都」と呼んで、その華やかな繁栄に憧れました。今でも当時のことを振り返り、ベル・エポック(よき時代)と呼んで回顧するほどの特別な時代です。

1900年のパリ万国博覧会の様子1900年のパリ万国博覧会の様子

ところで、パリには最近まで市長が置かれなかった事をご存知でしょうか?1700年代後半のフランス革命から近代1977年まで、パリには市長は置かれていません。(革命後の4人の例外はいますが)それはなぜかというと、パリに市長を置くと権力が強大になりすぎるので、国の権力者がそれを嫌ったためです。パリはそれほどの権威の象徴でした。”パリの支配者”という肩書きはそれだけで世界に大きな影響を与えうるでしょう。
エッフェル塔も、凱旋門も、オペラ座も、ヒトラーは全てを燃やし尽くしたかった。しかし、それは行われませんでした。その夜、一体何があったのか?「パリよ、永遠に」パリを愛し、救いたいと願った男が仕掛ける一世一代の駆け引き。この一夜のおかげで、現在のヨーロッパがあるといっても過言ではありません。

コルティッツ将軍とノルドリング領事の実際の写真当時の写真(左、ノルドリング領事 右、コルティッツ将軍)

監督・キャスト

監督:フォルカー・シュレンドルフ

フォルカー・シュレンドルフ

近年では”独仏の和解がなければ近年の欧州はない”という理念に基づいて、戦時中の独仏の関係をテーマにした作品を多く発表している。その作品は戦争を通して、人の在り方について強烈なメッセージを残す。『ブリキの太鼓』『シャトーブリアンからの手紙』など。

ドレ・デュソリエ:(総領事ラウル・ノルドリンク)

アンドレ・デュソリエ

日本では「美女と野獣」の商人役で馴染みがある人もいるかもしれない。王子が野獣に身を落とすまでの話を描いた作品。「美女と野獣」がフランスとドイツの共同制作というところも少し感慨深い。

ニエル・アレストリュプ:(フォン・コルティッツ将軍)

ニエル・アレストリュプ

代表作は「真夜中のピアニスト」「預言者」ノルドリング領事とコルティッツ将軍をそれぞれ演じるアンドレとニエルは、原作の舞台でも同じ役で共演してる。

-戦争, 洋画

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