音楽さえあれば、僕らの楽園は
永遠に続くと思っていた ──
90年代後期、フランスのダンス・ミュージック・シーンが熱かった。“フレンチ・タッチ”と呼ばれるハウス音楽はダフト・パンク、ディミトリ・フロム・パリ、カシアスといったミュージシャンを生み出し、瞬く間に世界へと広がっていった。当時のパリを舞台に、ムーヴメントと共にあった一人のDJの夢と挫折を、フランスの若き女流監督ミア・ハンセン=ラヴが鮮烈に描き出す。
ダフト・パンクが楽曲提供し、これでもかと繰り出されるトラックリストが、あの頃のパリの熱気をそのまま切り取ったようなリアルなクラブシーンへと観客を誘う ──
Contents
予告
あらすじ
エレクトロミュージックが台頭する90年代のフランス。卒論そっちのけでガラージにハマっている大学生ポール(フェリックス・ド・ジヴリ)が親友と結成したDJデュオ“Cheers”は、たちまちパリの熱いクラブシーンで人気の存在となった。

© 2014 CG CINEMA – FRANCE 2 CINEMA – BLUE FILM PROD – YUNDAL FILMS
あっという間に成功の階段を駆け上がっていったポールを取り巻くエレクトロなビートと気の合う仲間。周囲が少しずつ大人になっていく中、ポールの人生の歯車が次第に狂い始める。

© 2014 CG CINEMA – FRANCE 2 CINEMA – BLUE FILM PROD – YUNDAL FILMS
酒とドラッグ漬けの日々から借金をくり返し、ついには恋人との関係も破綻してしまう。そんなポールの生み出す音楽は、少しずつ最先端のクラブシーンから遠ざかっていた……
Sponsored Link映画を見る前に知っておきたいこと
1950年代、フランスに新しい波をもたらした映画運動ヌーヴェルヴァーグの中心的人物エリック・ロメール。その後継者と評されるのがフランスの若き女流監督ミア・ハンセン=ラヴだ。
彼女は映画作家となる以前、ヌーヴェルヴァーグを生み出すきっかけとなった映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」で批評活動をしていた。かつての巨匠たちが辿った道程を行くそのキャリアが、エリック・ロメールと彼女をつなげているのだろう。
そんな彼女が長編デビュー作『すべてが許される』(07)から果敢に挑み続けているのが“喪失や別離をどう乗り越えるか”というテーマだ。自伝的要素が盛り込まれたこの作品は、自堕落な生活を送る夫が11年という歳月を隔て、17歳に成長した娘に会いに行くという物語だった。
そこには時間の経過がもたらす寛容さが丁寧に描き出されていたが、『EDEN エデン』では時間の経過がもたらす残酷さをまざまざと見せつける。
シーンを知る人たちに捧げられた青春映画
一人のDJの夢と挫折を描き出したこの映画は、ミア監督の8つ年上の兄スヴェン・ハンセン=ラヴがモデルとなっている。実際にスヴェンが脚本として参加し、今度は彼の自伝映画という側面を強く持つ。
第1部パラダイス・ガラージ、第2部ロスト・イン・ミュージック、1992年から始まり2013年で幕を降ろす2部構成の物語は、当時のダンス・ミュージック・シーンにあった熱気をそのまま活写することで、主人公ポールの苦悩を炙り出してゆく。
ダフト・パンクの大ヒットナンバー「One More Time」が、時代に選ばれた者と取り残された者の明暗を象徴するかのように流され、聞き飽きたはずのこの曲がやけに胸に痛い。それは、ポールの挫折が90年代後期に“フレンチ・タッチ”に浮かされた世代の青春と重なり合うからだ。
実際のエピソードから描き出されるすべてのリアリティがより残酷に感じられる人たちにのみ、“喪失や別離をどう乗り越えるか”というテーマを共有することが許された青春映画である。
DJでもあり小説家でもあるスヴェン・ハンセン=ラヴの人生は、僕たちと同じように今も続いているのだ。
「終わりは終わりではなく、時は遡る」
ポール
作品データ
原題 | 『Eden』 |
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製作国 | フランス |
製作年 | 2014年 |
公開日 | 2015年9月5日 |
上映時間 | 131分 |
映倫区分 | PG12 |
キャスト
キャスト | フェリックス・ド・ジブリ |
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ポーリン・エチエンヌ | |
ロマン・コリンカ | |
バンサン・マケーニュ | |
グレタ・ガーウィグ | |
ローラ・スメット | |
ゴルシフテ・ファラハニ | |
アルシネ・カンジアン | |
バンサン・ラコスト | |
アルノー・アズレイ |
監督・スタッフ
監督 | ミア・ハンセン=ラブ |
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脚本 | ミア・ハンセン=ラブ |
スベン・ハンセン=ラブ | |
製作 | シャルル・ジリベール |
スベン・ハンセン=ラブ |