「驚き、感動、衝撃。私たちが求めていたこれら全てを与えてくれたのは『さよなら、人類』だけだった」ヴェネチア国際映画祭の審査員長を務めた作曲家アレクサンドル・デスプラに絶賛され、アカデミー賞作品『バードマン』を抑え最高賞である金獅子賞を受賞した不条理コメディ。
監督はスウェーデンのロイ・アンダーソン。『散歩する惑星』『愛おしき隣人』に続く3部作の最終章として4年の歳月をかけて完成させた本作は、39シーンすべてがスタジオ撮り。ブラックでシュールなエピソード群にエンターテイメントの全てが凝縮されている。
- 製作:2015年,スウェーデン・ノルウェー・フランス・ドイツ合作
- 日本公開:2015年8月8日
- 上映時間:100分
- 原題:『En duva satt pa en gren och funderade pa tillvaron』
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 リビングトリロジー
- 3.2 『実存を省みる枝の上の鳩』
- 3.3 壮大なアナログ巨編
予告
あらすじ
面白グッズを販売する為にさまざまな人々を訪ねて歩く、冴えないセールスマンコンビのサムとヨナタン。
ワインを開けようとして心臓発作を起こしてしまう夫と異変に気付かない妻、船酔いするからと理髪師に転職した船長、天国まで持っていくと宝石入りのバッグを手放さない亡くなる直前の老女などなど。彼らの行く末に語られるのは実に滑稽で切ない人生を生きる人たちのエピソード。
映画を見る前に知っておきたいこと
リビングトリロジー
この作品は、ロイ監督が人生に関連する三部作「リビング・トリロジー」の最終章。“リビング”とは生きていくこと、“トリロジー”は三部作を意味する。発想は、前作の『愛おしき隣人』の製作中。第一作目である『散歩する惑星』と合わせてこの三部作の構想を思いついたのだという。
1作目『散歩する惑星』
構想20年、製作4年の超大作。舞台は不条理な出来事が次々と起こるとある惑星。不幸な出来事が絶えない現実から、我先にと逃げ出そうとする人たちのブラックコメディ。
2作目『愛おしき隣人』
北欧のとある町で生きる人たちの日常を描いた、これまたブラックなユーモア満載のコメディ。
『実存を省みる枝の上の鳩』
原題をそのまま訳すとこうなる。どういう意図でこのタイトルをつけたのかは、それこそ映画を見終わった時のあの浮遊感に包まれながら考えるのが良いと思う。絵だけで頭に浮かべると、なんとも滑稽。
基礎知識としては、この映画は絵画の影響を強く受けていることが関係している。公式サイトによると、ロイ・アンダーソンはさまざまな絵画から想像力を膨らませてこの映画を製作しているという。最も重要な画家にオットー・ディクス、ゲオルグ・ショルツ、ピーテル・ブリューゲル、イリヤ・レーピンの名前をあげている。
その中のピーテル・ブリューゲルの「雪中の狩人」では、鳥が枝の上で人々の営みについて思案しているように見えることにインスピレーションを受けたのだとか。
実際に絵画を見てみると、言われなければスルーしてしまう程細かい描写。想像力の力おそるべしである。そうして想像力を膨らませて作られた『さよなら人生』。きっと何度見ても新しい発見がある、まさに絵画のような映画になっているのではないだろうか。
壮大なアナログ巨編
予告動画にもあったこのキャッチコピー。この映画、本当にとことんアナログである。ロイ監督が所有する「Studio24」というスタジオで全てのシーンを撮影。野外撮影は一切ない。野外に見える風景はほぼ絵。建物はミニチュア。
常勤のスタッフはたったの10人。しかもこれまで詳細な脚本は存在したことがなく、脚本の製作から編集作業に至るまでは全て「会議室の壁」で行われている。
は?と言いたくなるような話だが事実である。なので、人にどんな話かを明確に説明できないため、資金集めにもの凄く苦労したのだとか……
詳しいことは公式サイト面白く見るための7の事柄に紹介されているので、興味がある人は足を運んでみてはどうだろう。