映画を観る前に知っておきたいこと

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場
戦争と感情

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アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

現代の戦争
衝撃の実態

罪なき少女を犠牲にしてまでも、テロリストを攻撃すべきか!?現代のドローン戦争の実態から浮き彫りになる正義とモラルを映し出した軍事サスペンス。

監督は、『ツォツィ』(05)でアカデミー外国着映画賞を受賞したギャヴィン・フッド。さらにアカデミー賞俳優コリン・ファースが製作に参加し、『クィーン』(06)でアカデミー主演女優賞に輝いたヘレン・ミレンが主演するという豪華な顔ぶれとなっている。

誰がボタンを押す権限を持っているのか?軍人か、政治家か、法律家か!?しばしば曖昧にされてきた戦争における責任問題。、現代の戦争はそれをさらに助長する!

予告

あらすじ

イギリスのロンドン。軍の諜報機関の将校キャサリン・パウエル大佐(ヘレン・ミレン)は、国防相のフランク・ベンソン中将(アーロン・ポール)と協力して、アメリカ軍の最新鋭のドローン偵察機を駆使して英米合同テロリスト捕獲作戦を指揮する。

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

© eOne Films (EITS) Limited

やがて上空6000メートルを飛んでいるリーパー無人航空機が、ナイロビの隠れ家に潜むアル・シャバブの凶悪なテロリストたちをつきとめ、その映像はイギリス、アメリカ、ケニアの司令官たちがいる会議室のスクリーンに映しだされる。そして、テロリストたちによる自爆テロを阻止するため、任務は殺害作戦へと切り替えられた。

アメリカ、ネバダ州。米軍基地では新人のドローン・パイロットのスティーブ・ワッツ(アーロン・ポール)が、パウエル大佐からの指令を受け、強力なヘルファイアミサイルの発射準備に入っていた。その時、殺傷圏内にはパン売りの幼い少女がいることが判明する。

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

© eOne Films (EITS) Limited

予期せぬ民間人の巻き添え被害の可能性が生じたため、軍人や政治家たちの間で議論が勃発する。たらい回しにされる少女の命。キャサリンは、少女を犠牲にしてでもテロリスト殺害を優先しようとする……

映画を観る前に知っておきたいこと

アカデミー賞監督、スタッフ、俳優が配置されたこの映画。決して商業主義のぬるい作品ではない。

ドローン戦争を単純な悪として描くのではなく、それぞれの立場、視点から道徳的なジレンマを捉えていきながら、タイムリミットが差し迫る緊張感は軍事サスペンスとしてのエンターテイメント性を演出する。

テーマがあまりに重いため、ここで作品を褒めることに道徳的なジレンマを感じてしまう。この映画の評価はRotten Tomatoesに任せたい。満足度95%だ。

一応、映画の見どころの話

今日は、少し好きなことを書かせてもらってもいいだろうか。

そもそも戦争とは、自国に利益をもたらすために起こるものであり、正義の名の下に人を殺しているわけではない。それはひどい時には利権であり、侵略である。映画で描かれているのはテロリスト掃討戦だが、これも自国の脅威を排除するための戦いだ。

イラク戦争は、イラクが大量破壊兵器を隠し持ったテロ支援国家であるとして、国際社会の反対を押し切る形でアメリカの正義の名の下にはじめられたが、結果的に大量破壊兵器が見つかることはなかった。一部ではアメリカのこの戦争の目的は石油利権だったとも囁かれている。

その一方で、アメリカが大きな損失を被った戦争とされ、その後のシリア問題に関するオバマ大統領のテレビ演説では「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」との声明を発表している。

次期大統領であるトランプ氏は、さらに“脱・世界の警察”路線を進めることは明白だ。在日米軍の費用を日本に全額負担させるという話は、今大きな議論を生んでいる。結局、割に合わないと判断すれば同盟国であれ見捨てられる危険性があるのだ。

ただ、これを非難するわけではない。自国の利益を優先して考えるのは国として当然の在り方だからだ。

現代のドローン戦争も、自国の軍隊の被害を最小限に敵を討てるのなら、道徳的な問題を差し置いてでもこの戦法を選択するのは自然な流れである。安全な場所から攻撃することを卑怯と感じるのは個人の感情に過ぎないのだ。

国とは個人の集合体であるはずなのに、戦争となると一切の感情論を受け付けなくなる。国と個人の隔たりが生む道徳的なジレンマこそがこの映画の見どころであり、そこでキャサリンがどういう選択を下すのか?それでも殺すなら、きっと戦争は無くならない。

あとがき

先日、イラク戦争に行ったひとりの米兵を追ったドキュメンタリー番組を見かけた。

テロリストが潜伏しているという情報を基に突入したアパートには、一般の家族しかいなかった。しかし、自分は老婆を壁に叩きつけ、そこにいた子供たちは泣き叫んでいた。

彼は現地での経験を語り、自分たちこそテロリストだと感じたと付け加えた……

-戦争, 洋画
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