何なのかは良く分からないが、何かスゴイ映画が来た。そう思わせるに十分なインパクトとバックボーンを持って現れた押井守の最新作。「日本の映画を変えたい」という夢を追って構想15年、総制作費20億円のアニメでも実写でもない新しいSFが出来上がった。
押井守監督が全編をカナダで撮影した異世界ファンタジー作品。「エイリアン2」のランス・ヘンリクセンら出演は全て外国人俳優で、全編英語で撮影されたが、日本公開にあたり、押井監督の「イノセンス」も手がけたスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが参加し、日本語吹き替え版が制作された。
- 製作:2016年,日本・カナダ合作
- 日本公開:2016年5月20日
- 上映時間:92分
- 原題:『Garm Wars: The Last Druid』
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 押井守とは何者か
- 3.2 世界観から作られる押井ワールド
予告
あらすじ
遥か古代、戦いの星アンヌンには、創造主ダナンが作ったクローン戦士「ガルム」が生息していた。
ガルムはたとえ命を落としても、その個体の記憶をクローンの脳に転写することで、何世代も生き延びることができる。ダナンが星を去り、3つの部族が覇権を争う日々が続くアンヌン。
ある日、それぞれ異なる部族のカラ、スケリグ、ウィドが戦場で出会い、ふとしたきっかけで3人は「ガルムの真実」を探る旅に出る。
映画を見る前に知っておきたいこと
押井守とは何者か
ちょくちょく名前は聞くけれど、実際どんな人物なのかを詳しく知る人は少ないと思う。僕もその一人で、特に若い世代の人は「すごいらしいけど何がすごいのか分からない」という人は多い。
そこで、まずは押井守の最新作というキャッチコピーの凄さが理解できるように、彼がどんな人なのかを簡単に解説したい。
ここでは押井守がどんな映画を撮ってきたのか、どういう作風で評価されてきたのかということを中心に語ろうと思うが、押井守をマニアックなところまで掘り下げたいと思う人は、wikipediaを読むのが早い。
作風
押井守は革新的な手法でアニメの映像表現の枠を広げてきた。手法そのものよりも、その使い方が強い印象を残し、多くの作家に影響を与えている。
また音楽にも並々ではないこだわりをもっていることも有名。
しかし、やはり彼の真骨頂は独自の方法論で作り出される脚本、そして哲学的な奥深いテーマと、それをあらゆる手法で表現しきる映像センスの絶妙なバランスだろう。
代表作
代表作は 『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』シリーズ。続編である『イノセンス』は、アニメ作品で始めてカンヌ国際映画祭のコンペ部門に出品された作品として有名である。
続く『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』はベネチア国際映画祭のコンペ部門に出品された。
クエンティン・タランティーノをはじめ、ジェームズ・キャメロンやウォシャウスキー兄弟など、海外にも多くのファンを持つ世界的な監督だ。
アニメ作品だけでなく実写映画も撮っており、昨年2015は『東京無国籍少女』が公開され、話題を呼んだ。
既存の枠や常識に囚われず、常に新しいものを模索し続けてきた押井守の集大成とも言えるべき作品が、本作『GARMWARS ガルム・ウォーズ』である。
世界観から作られる押井ワールド
映画の脚本は通常、人物→物語→世界観の順に構築されるケースが多いらしいが、押井守の場合は順序が逆になるという。まず世界観ありき、そしてそこに物語があり、それらに絡む人物がいるという見方だ。
「もしこんな世界だったら」
「そこにはどんな物語があるのだろう」
「その物語を描く人物とはどんな人なのだろう」
ふと思うと、これらは観客の目線に程近いように感じられる。特に、現実にはあり得ない想像をする時、その世界観から入る人がほとんどではないかと思う。
その意味で、完全に世界観から練られるという押井守の方法論は、SFとの相性は良いのではないかと思う。
【GARMWARS ガルム・ウォーズ】でも、これまでと同じ手法が使われているかどうかは分からないが、彼の経験則は確実に反映されているだろう。
ともあれ、押井守の最新SFと聞いて期待を膨らませるファンは多い。
脳を移植していき続けるクローン戦士ガルム、部族間で争いを続けているとある星、そしてガルムの謎を追う旅。
あらすじだけを読むと、使い古されたSF設定の様に思えるが、それらを巡るストーリーの複雑な成り行きと明かされる真実、そして何よりもその世界に生きるキャラクターに「押井守の最新作」という期待感がたっぷりと詰まっている。