「新撰組」や「白虎隊」に比べあまり知られていない「彰義隊」。江戸から明治へ、時代が移り変わる過渡期を彰義隊・隊士として生きた3人の若者の運命を描いた、杉浦日向子の同名コミック実写映画化。
「誰も知らない」の柳楽優弥、「僕は友達が少ない」の瀬戸康史、「麦子さんと」の岡山天音共演。共演にオダギリジョー、「愛の渦」の門脇麦。監督は、本作が劇場用公開作品デビューとなる小林達也。「天然コケッコー」などの人気脚本家・渡辺あやが脚本を手がけた。
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 原作者・杉浦日向子
- 3.2 現代を生きる若者に捧ぐ
予告
あらすじ
時代背景
1868年、慶応四年の4月11日。第十五代将軍・徳川慶喜(飴屋法水)は、江戸城を明け渡し、退官のうえ水戸へ謹慎。三百年に亘る江戸幕府の時代が終わりを告げた。日本は封建国家から近代国家へと、歴史の歩みを進めたのである。
しかし、これを一般市民がもろ手を上げて歓迎したかというと、必ずしもそうではなかった。権力が大きく動く時の世の常、当時の江戸にも様々な憶測と謀策が飛び交い、陰鬱でどす黒い空気が渦巻いていた。
二人の若者
明治維新の過渡期を生きた二人の若者、秋津極(きわむ/柳楽優弥)と福原悌二郎(ていじろう/岡山天音)。極は悌二郎の妹、沙世(さよ/門脇麦)の許嫁であり、三人は幼なじみだった。
好いて婚約をしたはずの極と沙世だったが、極は福原家に許嫁との婚約を破談にして欲しいと申し入れる。去る極を追いかけ、「妹の気持ちはどうなる」と問いつめる悌二郎。しかし、極には沙世のことを想えばこその理由があった。
彰義隊
幕末の世に将軍の警護と江戸の治安維持のため、有志たちにより結成されていた「彰義隊」。極はその一員に加わっていた。彰義隊は幕府が解体した今、反政府的な集団とみなされはじめていたのである。
極は「彰義隊への咎めが親族にまで及ばぬという保障はない。そこで自分は家督を弟に譲り、上野にある彰義隊の屯所に身を隠すことにした」というのだ。それに対し、「幕府が解体したいま、彰義隊など無用の長物」と持論を展開し、説得を試みる悌二郎。
平行線の議論が進む中、偶然居合わせたもう一人の青年が加わってくる。二人の幼なじみの吉森柾之助(まさのすけ/瀬戸康史)だ。養父の死をきっかけに、養子に入った笠井家を体よく追い出されてしまっていた。偶然出会った三人は、極の求めに応じて写真館でぎこちない記念撮影をするのだった。

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映画を見る前に知っておきたいこと
原作者・杉浦日向子
この映画を語るのであれば、原作者の杉浦日向子について、言及しないわけにはいかないだろう。2015年5月、原作が『百日紅~Miss HOKUSAI』としてアニメ映画化されたことも記憶に新しい。
杉浦日向子がどんな人物だったのか、どういう作品を書いていたのかということについては、こちらのページに詳しく記載しているので参考にして欲しい。
覚えておきたいことを掻い摘んで言えば、凄まじい描画力と演出力、長編連載としての構成力に加え、圧倒的なオリジナリティを携え、江戸の風俗を生き生きと描く作風が多くのファンの心を鷲づかみにしていること。それと、江戸の時代考証に非常に長けた人物であったということだ。
これは江戸時代の終焉である。杉浦日向子にとっては比較的初期の作品ではあるものの、そこにはすでに“江戸の人々の生活”を描く目が光っていた。戦争を描きながら戦争をテーマとせず、時代の過渡期の中にあるただの人間を叙情豊かに描いている。
現代を生きる若者に捧ぐ
そこに至ってこのキャッチフレーズである。今、現代はまさしく時代の過渡期。日々、様々なものが変化し、移ってゆく。
どこに行っても安保法案関連の話題は尽きない。“戦争”のキーワードは一昔前に比べると随分身近になった。何かが大きく変わっている。そういう空気を肌に感じる人も多いだろう。
時代に翻弄され、過渡期を生きた若者の運命は、今この変化の時代に生きる若者の心に何を残すのか。ぜひとも今を生きる若者に見て欲しい映画である。