日本とタイが共同製作をしたロードムービー。王位継承のプレッシャーに悩まされているルーベル王国のアリエル王子と、日々に流されて生きている一般市民リサ。そんな二人の短い逃避行。
アリエル王子を演じるのはタイの人気バンド「August Band」のメンバーのチャーノン・リンクスラガーン。リサを演じるのは「子宮に沈める」の伊澤恵美子。タイの人気女優セリーナ・ウィースマン、篠井英介、忍成修吾らが出演。
- 製作:2015年,日本・タイ合作
- 日本公開:2015年7月11日
- 上映時間:70分
- 原題:『HAND in the GROVE』
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 自由と規範の対比
- 3.2 August Band
予告
あらすじ
ルベール王国のアリエル王子と付き人のクリスは、お忍びで休暇を過ごすため熊本のホテルを訪れる。アリエルの父の友人であるヒデが総支配人を務めるホテルだ。これを機に『自由』を体験したいアリエル王子は、到着早々勝手に街を出歩こうとするが、クリスに見つかってしまいホテルの部屋に連れ戻される。
「王族らしい節度ある行動を」とアリエルを諌めるクリスだが、日々”王位継承者”の責任やプレッシャーと戦っているアリエルの気持ちも分からなくはない。そこでクリスは、ヒデに監視人として”公認のデートの相手”を探すように依頼する。
そこで、ヒデは時間と立場を持て余していたリサを紹介し、アリエル王子と監視人の公認のデートが始まる。
映画を見る前に知っておきたいこと
自由と規範の対比
アリエル王子の笑顔は、”王位”のもつ責任の重さとの対峙を避ける、自分を守る武器。泣いたり落ち込んだりすると余計に深刻になるので、アリエル王子は笑ってその場をやり過ごす。彼は社会の規範やルールにガッチガチに縛られて身動きがとれない人のメタファーとして描かれている。
一方で、自由な時間を持て余しているリサは、アリエル王子とは正反対。一見何のしがらみもない自由な人生を送っているようで、縛られないのはそれはそれでしんどいものだ。
個人的には自由と規範の対比が描かれているように感じているが、そういう見方が正しいかどうかは分からない。監督自身はアリエル王子やリサのあり方そのものには興味がなく、「自分が現代を生きている実感や気分」を映画にしたかったと語っている。
現代を生きるというのは、なんとも窮屈な気分にさせられる。だが決まり事や常識というものに寄り添ってなければ、一瞬にして瓦解してしまうのがまた社会というもので。
そんなジレンマを笑い飛ばすような、気だるく気持ちのいい淡々とした音楽のリズム。それがまたこの映画を象徴しているような気がする。
August Band
最後に、折角なのでAugust Bandの楽曲を紹介して終わりにしようと思う。何曲か聞いた感じ、全体的に洒落てて甘い。