映画を観る前に知っておきたいこと

光をくれた人
デレク・シアンフランスが映し出す愛と葛藤

投稿日:2017年2月5日 更新日:

光をくれた人

この子を育てることは、過ちですか?
この子を愛することは、罪ですか?

孤島に流れ着いた赤ん坊を我が子として育てる灯台守夫婦。他に誰もいらないと思えるほどの幸福な日々は、ある罪に気付かされた瞬間、苦しみへと姿を変えた ──

M・L・ステッドマンのベストセラー小説『海を照らす光』を原作に、『ブルー・バレンタイン』(10)のデレク・シアンフランス監督が映し出す愛と葛藤の物語。

灯台守夫婦の役に、名優マイケル・ファスベンダーと『リリーのすべて』(15)でオスカー女優となったアリシア・ヴィキャンデル。撮影中に恋に落ちた二人による演技を超えた演技が、映画をより切ないものにする。

予告

あらすじ

20世紀初頭のオーストラリア。悲惨な戦争によって心を閉ざし孤独だけを求め、孤島で灯台守となった男トム(マイケル・ファスベンダー)。しかし、美しく快活なイザベル(アリシア・ヴィキャンデル)の存在が彼に再び生きる力を与えた。結ばれた二人の暮らしは平穏で幸せなものだったが、度重なる流産がイザベルの心を深く傷つけていった。

光をくれた人

© 2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC

ある日、島に流れ着いた一隻のボートが夫婦の人生を変えた。乗っていたのは見知らぬ男の死体と泣き叫ぶ女の子の赤ん坊。その子を娘として育てたいと願うイザベルを、それが過ちと知りつつもトムは受け入れた。きっと良い親になれると信じ、夫婦は秘密と共に生きる決意をしたのだった。

光をくれた人

© 2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC

4年後、ルーシーと名付けられた赤ん坊は健やかに成長し、トムとイザベルは幸せの絶頂にいた。しかし、残酷な運命は彼らと、海で夫と娘を亡くしたという一人の母親(レイチェル・ワイズ)を引き合わせてしまった……

映画を観る前に知っておきたいこと

M・L・ステッドマンの原作『海を照らす光』は世界42カ国で翻訳された230万部を超えるベストセラー小説である。この映画を「ティッシュ会社の株価が上がるほど、観る者は涙するに違いない」と評したのがイギリスのガーディアン紙だったが、原作のことも「並外れた本」と称えている。

この原作にはデレク・シアンフランス監督の『ブルー・バレンタイン』にかつて見たような、愛深きゆえに抗えない運命とそこに抗おうとする心の葛藤がある。誰にもどうすることもできない運命に翻弄されるすべての登場人物たちに感情移入させられる感動作だ。

美し過ぎる物語

シアンフランス監督の洗練された演出は、静かに夫婦を照らす夕日、映画に横たわる沈黙、劇伴、どれをとっても大人びた印象を残す。幸福と喪失が表裏一体となって様々な愛が重なり合うこの物語を美しく肉付けしていくことで、原作以上の涙を誘う彼の手腕は素晴らしい。

もしもこの映画に欠点がるとするならば、その非の打ち所の無さか。あまりにも美し過ぎる物語は、時に歪な心には響かないこともある。僕はどうやらその中間のようだ。

-ヒューマンドラマ
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