映画を観る前に知っておきたいこと

インヒアレント・ヴァイス テンポのズレが気持ち良いオフビートコメディ

投稿日:2015年3月25日 更新日:

インヒアレント・ヴァイス タイトル

愉快でふしだらな謎の親近感。最高のダークユーモアでバランス感覚を狂わせられるオフビートコメディ、それが『インヒアレント・ヴァイス』だ。アメリカ最高の文学者のひとりとして知られるトマス・ピンチョンの小説『LAヴァイス』を、わずか6本のフィルモグラフィで世界三大映画祭すべてで監督賞に輝いた名監督、ポール・トーマス・アンダーソン監督が映画化。

  • 製作:2014年,アメリカ
  • 日本公開:2015年4月18日
  • 原題:『Inherent Vice』
  • 原作:トマス・ピンチョン『LAヴァイス』(新潮社)
  • 上映時間:149分

予告

あらすじ

ロサンゼルスに住む、私立探偵のドックの前に、今も忘れられない元カノのシャスタが現れる。不動産王で大富豪の愛人になったシャスタはドックに、カレの妻とその恋人の悪だくみを暴いてほしいと依頼する。だが、捜査に踏み出したドックは殺人の濡れ衣を着せられ、大富豪もシャスタも失踪してしまう。ドックは巨額が動く土地開発に絡む、国際麻薬組織のきな臭い陰謀に引き寄せられていく。果たして、シャスタの行方は?この事件の先に“愛”はあるのか!?

映画を見る前に知っておきたいこと

アメリカ最高の文学者トマス・ピンチョンの『LAヴァイス』

 トマス・ピチョンはマスコミとの接触をほとんど一切持たず、その素性すら明らかではない覆面作家。その作風は、一見すると散漫で脱線しまくる筋書きの様でその実、奥深い知識に裏打ちされた綿密なストーリーを展開するぶっ飛んだユーモアで知られている。

 『LAヴァイス』は2009年に発表された長編小説。文学ファンの間では、”ピンチョンにしては読みやすい”ともっぱらの評判だ。主人公の寛容さが心地よく魅力的なのだが、本人はただぶっ飛んでいるだけという奇妙なテンポで進む物語は、笑えながらも奥が深い。70年代のヒッピー文化のかなり深いところにまで言及されていて、「それなりに詳しい」程度の人が読んでも何のことやら。当時のアメリカのポップカルチャーに興味がある人には無条件で楽しめる作品だろう。

主人公のテンポのズレが謎の気持ちよさを生みだすコメディ

 見所はまさにそのテンポのズレ。主人公のドックのぶっ飛び具合と、それを取り巻く周りの環境とのズレが物語の方向感覚を失わせる。アメリカの映画批評家たちは、その様を陶酔と表現し、監督のポール・トーマス・アンダーソンの仕事を「誰にも到達できないレベル」と評価した。

 あの有名な超”くだらない話”パルプ・フィクションに近いのかと思いきや、批評家の話によると「風刺的である」という評価もちらほら。アメリカのポップカルチャーを経験していない日本人に、この作品の社会風刺の側面はあまり刺さらないかもしれないが、それでも十二分に楽しい映画なのは間違いない。
インヒアレント・ヴァイス

監督・キャスト

監督・ポール・トーマス・アンダーソン

ポール・トーマス・アンダーソン社会からの疎外や孤独といった社会的なテーマを扱うことが多い。手持ちカメラによる常に移動しながらの撮影など大胆な視覚効果が特徴。

ホアキン・フェニックス:(ラリー・“ドック”・スポーテッロ)

ホアキン・フェニックス1974年生まれ、アメリカ出身。’06『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』でカントリー歌手のジョニー・キャッシュを劇中歌も自ら担当して演じきり、ゴールデングローブ賞主演男優賞とグラミー賞を同時受賞。アメリカを代表する俳優としてそのまま成功の道を歩むかと思いきや、2008年「俳優は疲れた」という理由で突然歌手に転向する。が一瞬で映画界に戻ってくる。代表作は『グラディエーター』『ザ・マスター』『エヴァの告白』『her/世界でひとつの彼女』など。

キャサリン・ウォーターストン:(シャスタ・フェイ・ヘップワース)

キャサリン・ウォーターストーンスティーブ・ジョブスの伝記映画でジョブスの最初の妻、クリスアン役としての出演が決まり、話題の女優。この映画での好演が認められてのことらしい。

エリック・ロバーツ:(ミッキー・ウルフマン)

エリック・ロバーツ1954年生まれ、アメリカ出身。ジュリア・ロバーツのお兄ちゃん。これまで150本近い作品に出演しているが、日本で公開された作品は少ない。2010年には重度のマリファナ中毒を克服するため、リハビリ施設に入所している。近年では『ダークナイト』『エクスペンダブルズ』といった話題作にも出演している。

リース・ウィーザスプーン

リース・ウィーザスプーン1976年生まれ、アメリカ出身。’05『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』で第78回アカデミー賞主演女優賞を受賞。名実共にハリウッドのトップスターとなり、2005年と2007年の最もギャラの高い女優となる。同じく4月公開の映画『グッドライ~いちばんやさしい嘘~』にも主演として出演中。

-コメディ, 洋画

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