「あなたは必ず2回見る」「最後の5分、全てが覆る」のキャッチコピーで話題の恋愛映画『イニシエーション・ラブ』。とりあえず1度目の観賞を終えて、「え……?」となっているあなたにイニシエーション・ラブのネタバレ解説。
Contents
- 1 あらすじ
- 2
2回目を見る前に知っておきたいこと
- 2.1 「たっくん」は2人居た
- 2.2 Side-A、Bは同じ時間の出来事
- 2.3 イニシエーション・ラブの意味
あらすじ
物語は「Side-A・大学生編」と「Side-B・社会人編」の2部構成で話が進む。
Side-A
鈴木夕樹と成岡繭子は大学時代に合コンで運命的な出会いを果たす。お互いに本が好きで、本の貸し借りをするうちに仲良くなり、2人は交際を始める。
夏、最初のデート。「もっとオシャレに気を使うように」というマユの言葉を聞いて、夕樹はマユに見合う男になる為に自分を磨くことを決意する。2度めのデートではマユは夕樹の”夕”の字をカタカナの”タ”に見立て、彼のことを「たっくん」と呼び始める。
季節は秋に移り変わる。順調に交際を進める2人、お互いにとっての初体験。そしてやってくる恋人たちのクリスマス。偶然キャンセルが出た静岡ターミナルホテルで、2人は幸せな恋人同士の時間を楽しむのだった。
Side-B
たっくんは東京本社で勤務することになり、静岡から一人上京する。マユとは遠距離恋愛。離れた2人の心はすれ違っていく。
たっくんは同じく新入社員として入った同期の石丸美弥子に徐々に惹かれるようになっていた。積極的にアプローチしてくる美弥子だったが、たっくんは「マユを裏切ることは出来ない」と傾く気持ちに必死にブレーキをかける。
そんな状況の中で、マユが妊娠している事が発覚。既に妊娠3ヶ月目だった。迷った末に堕ろさせることを決意する。それをきっかけに、静岡からは足が遠のいてしまうのだった。そしてついに美弥子との関係をもってしまう。
巡り巡った秋、たっくんはマユの事を「美弥子」と呼び間違えてしまう。これが原因で2人は破局。そして今年もまたクリスマスがやってくる。たっくんはマユと過ごすために取っていたホテルをキャンセル。今年は石丸家で家族と過ごすことになった。
そしてラストシーンで美弥子はたっくんに呼びかける。
「辰也……」
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2回目を見る前に知っておきたいこと
ここまでが映画の大まかなストーリー。一見、よくある恋愛ものの様に見えるのだが、『イニシエーション・ラブ』はラスト5分でどんでん返す。このタネ明かしに130万人もの人が度肝を抜かれた。「辰也」そう、たっくんは2人居たのだ。
「たっくん」は2人居た
誠実で真面目な男「たっくん」。しかし「たっくん」は社会人編で酒を飲んでは暴れる粗暴な性格になっている。実はSide AとSide Bの「たっくん」は全くの別人・鈴木辰也である。つまり、成岡繭子は鈴木辰也と最初から付き合っていて、二股を隠すために2人のアダ名を統一したかった。そのため鈴木夕樹を強引に「たっくん」と呼んでいたのだ。
ちなみにSide-Aでは「たっくん」は富士通に内定が決まっていると書かれているが、side-Bの「たっくん」は慶徳ギフト静岡に勤めている。
Side-A、Bは同じ時間の出来事
さらに、Side-A、Side-Bは同じ時間の出来事である。大学生「たっくん」が社会人「たっくん」になったのではなく、2人の「たっくん」は同じ時間の中に存在している。よって物語の構成は”Side”で表される。
つまりこの物語は、夕樹とマユがすれ違っていく様子を描いているわけではなく、マユと辰也が同時に二股をかけるという話だ。物語の中心人物は夕樹ではなく、マユと辰也なのだ。
物語を時系列で追う
マユの一人目の彼氏は鈴木”辰也”。マユは辰也からルビーの指輪をプレゼントされた。ここから物語は7月から12月までの6ヶ月間。
夕樹とマユが合コンで出会う。マユは辰也から贈られた指輪をしている。この時、辰也は既に東京に行っていて遠距離恋愛になっている。
マユは夕樹を強引に「たっくん」と呼び始める。言うまでもなく二股対策。一方の辰也も美弥子にさらっと告白され、こちらも二股を開始。ここから2人の二股事情は複雑に絡み合う。
マユが妊娠していることに感付き、既に3ヶ月が経過している事が確定。マユは堕ろすことを決意する。夕樹との初デートはマユは妊娠中。この時、彼女は煙草を勧められるが断っている。堕ろすことを決意したマユは急遽病院へ入院するため、夕樹とのデートを体調が悪いという理由でキャンセルする。
マユは堕胎し、退院。その後、夕樹とのデートで初体験。もちろんこの時初体験なのは夕樹だけ。
「初めての相手がたっくんでよかった。」
この時のマユはやつれて見えるのは退院してから日が経っていないからだ。夕樹には、便秘で一泊入院したと説明している。妊娠していた時には控えていた煙草も吸うようになった。
辰也の名前の呼び間違いにより浮気が発覚。マユと辰也は破局を迎えることに。ルビーの指輪をこの時返却。クリスマスに夕樹に「ルビーの指輪はなくした」と説明している。
酔った辰也が破局したマユに電話をかける。マユは「たっくん?」と何とも普通な様子で電話に出るが、それは夕樹と勘違いしていた為。辰也はその普通さに驚いて、破局したことを分かってないのではと勘違いをしている。
辰也はクリスマスをマユと過ごすためにホテルを予約していたが、キャンセルすることに。このキャンセル部屋を同じタイミングで電話した夕樹が確保。
マユと夕樹はホテルで、辰也と美弥子は石丸家で、2組のカップルがそれぞれのクリスマスを過ごす。
イニシエーション・ラブの意味
Initiationとは通過儀礼という意味。辰也とマユはお互いを「Initiation love:通過儀礼の恋愛」として、それぞれが新しい恋に進んでいった。映画を観る前にこのタイトルの意味を知っていれば、物語のカラクリに気付けたかもしれない。
原作者・乾くるみが語る「映画ならではの騙しのテクニックを使った先駆的な作品」という意味を理解した時、初めて映画を見た105分までとは真逆の感情で、2度目の観賞が楽しめる。
個人の感想に拠るところは大きいが、1度目はラブストーリー、2度目はサスペンスへと変わる新たなジャンルスイッチ・ムービーである。
>>以上を踏まえてもう一度見に行くと、1回目と全く違う気持ちで2回目を楽しめるだろう。最初は「マユ・・・頑張って・・・」と思っていた人も、もはや「こいつ・・・ぬけぬけとよくも・・・」と思ってしまうに違いない。
そういう見方も否定しないが、「イニシエーション・ラブ」通過儀礼としての恋愛という概念に、少しでも自分の恋愛体験が重なる人にとっては、特にバブル前後を経験した世代には一種の恋愛アルアルとして、マユにも辰也にも共感してしまう部分が大きい。