映画を観る前に知っておきたいこと

【犬に名前をつける日】新感覚ドキュメンタリー

投稿日:2015年9月16日 更新日:

犬に名前をつける日

2010年秋、愛犬のゴールデンレトリーバーを重い病気で亡くした監督、山田あかねが、先輩の映画監督に促され「犬の命」をテーマにした映画を撮ろうと思ったことがこの映画の始まりだった。動物愛護センターから犬や猫を救い出している人たちや、東北の震災で置き去りにされた動物を保護している人たちの活動を追いかけた4年間の記録。映像は200時間を超えた。

それらの映像から、福島の原発20キロ圏内で救い出された1頭の犬「むっちゃん」に焦点をあてたドキュメンタリー「むっちゃんの幸せ」が生まれ、テレビで放送されると大反響となった。むっちゃんの声を担当したのが小林聡美だった。映像に映し出される保護犬たちと彼らを救おうとする人々に感銘を受けた小林は、山田が準備をしていた本作に参加することになった。小林は実際に保護施設に行き、台本もないまま、取材者を演じ、200時間を超えるドキュメンタリー映像に、取材する側=久野かなみ(小林聡美)を主人公としたドラマが加わった新しいタイプのドキュメンタリードラマとなった。

犬の幸せはどんな人と出会うかで決まる。犬の名前をつけるということは命に責任をもつということ・・・

  • 製作:2015年,日本
  • 日本公開:2015年10月31日
  • 上映時間:107分

予告

あらすじ

愛犬・ゴールデンレトリーバーのナツを重い病気で亡くし、傷心のテレビディレクターの久野かなみ(小林聡美)は、何をしようにも気力が湧かない。そんなとき、大先輩の映画監督渋谷昶子さんに「悲しむ暇があるなら、犬の映画を撮れ」と励まされ、犬の命をテーマにした映画を撮り始める。

飼い主のいない犬と猫は、「動物愛護センター」で一定期間保護され、飼い主や引き取り手が見つからなければ殺処分されてしまう。かなみは、センターで殺処分される犬猫や、2011年の東日本大震災後、福島の原発20キロ圏内に取り残された犬猫の姿を目の当たりにして大きなショックを受ける。しかし、取材するうち、過酷な状況から一頭でも多くの命を救おうとする人たちと出会う。

「ちばわん」は、千葉県を中心に、愛護センターに持ち込まれた犬や猫の里親捜しをする保護団体。代表の扇田桂代さんは、崩壊したブリーダーの店から46頭の犬を救い出したり、被災地の犬猫に無償で不妊去勢手術を行っている。副代表の吉田美枝子さんは、毎週愛護センターに通い、2015年までに5000頭の犬と猫の命を救ってきた。犬に名前をつける日一方、広島に本拠地を置く、「犬猫みなしご救援隊」は、シェルターを構え、1000頭以上の犬と猫を保護している。震災後には、福島の原発20キロ圏内から1400頭の犬猫を救い出した。代表・中谷百里さんは「人間のエゴで動物を殺すのは間違い。助けられる命は全部救う」と言う。彼女たちの真剣な取り組みを知ったかなみは、「自分には何ができるのか」を問いかける。

そんな折、離婚して10年になる元夫・前田勇祐(上川隆也)から連絡が来る。かなみは、犬たちの悲惨な状況を取材するだけで何もできない自分のふがいなさを告白。カメラマンの前田は、「自分たちの役目はそれを撮って伝えることではないか」と励ます。彼に背中を押されたかなみは保護されたあとの犬たちの取材を始める。震災を生き抜いた犬と飼い主の絆、保護犬を積極的に受け入れる老人ホーム「さくらの里山科」のお年寄りと犬との愛情あふれる暮らし。犬に名前をつける日行き場のなかった犬たちが新たに出会った人たちと支え合いながら生きている姿を見て、犬と人のつながりにもいろいろな形があることを知る。「嘆くだけでなく、自分でできることをしよう」そう気づいたかなみは、ある決心をするのだった。

映画を見る前に知っておきたいこと

新感覚のドキュメンタリー

この作品、実際に見ると少し困惑してしまうかもしれない。それは、ドキュメンタリー映像の中で俳優が演技をするからである。それによって、リアルな問題提起とドラマが両立しているのだが、理解してから映画を見ないとそこに困惑して映画に集中できなくなるかもしれないので、新感覚のドキュメンタリー作品であることだけ頭に入れておいてもらいたい。

動物愛護後進国・日本

少し映画とは離れた話になってしまうが、こうした動物の殺処分をめぐるドキュメンタリーはテレビでも見掛ける。その度に人間の無責任さにがっかりしてしまう。だがそれと同時に助ける側の努力も映されるので、最終的には複雑な心境になってしまう。

実際この問題には、どうしようもないという部分が含まれているのはわかる。保健所があるから成り立っている秩序は維持されている。保健所の職員だってやりたくてやっているわけではない。それでも僕たちにはできることがあるということはわかってほしい・・・

例えば、動物をペットショップなどで買うことはやめるべきだ。本当に動物が好きなら、保健所や保護団体を訪ねて里親となったり、捨てられた動物を拾ってあげたりする方が断然いいはずだ。そうすれば、販売目的で動物を増やすこともなくなり、捨てられる動物も減るはずだ。本来動物の可愛さに血統書なんかは必要ないはずだ。本作でも「動物はバッグや服じゃない」という台詞があるが本当にその通りだと思う。

日本は動物愛護に関しては後進国であり、ペットショップなど動物愛護に関する法律をもっと強化するべきだ。先進国であるドイツ、イギリス、スイス、スウェーデン、アメリカ、EU、台湾では厳しい規制のもと動物取り扱い業者が免許制で、日本は一定の条件を満たせばブリーダーになれてしまう届出制だった。最近では多少は改正されて、許可制(登録制)になり、「夜間のペット陳列販売が禁止」された。少しづつ変わってきているものの、まだまだ動物愛護の先進国とは差がある。

個人的にはペットの販売そのものがなくなっていいと思っているのだが。もちろん世界中でだ。

-ドキュメンタリー, 邦画

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