“それ”はひとにうつすことができる
“それ”はゆっくりと歩いてくる
“それ”に捕まると必ず死ぬ
“それ”はずっとずっと、憑いてくる
他の誰かとセックスしなければ、殺されてしまう……!?全米でわずか4館から、瞬く間に1600館まで拡大公開されていった超・新感覚ホラー。
監督は処女作『アメリカン・スリープオーバー』(10)でアメリカ映画5年ぶりのカンヌ批評家週間出品を果たしたデビッド・ロバート・ミッチェル。長編2作目で早くも社会現象を巻き起こす。
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を観る前に知っておきたいこと
- 3.1 Rotten tomatoes脅威の満足度96%!
- 3.2 映画の本質
- 3.3 ホラー映画らしからぬ映像美
予告
あらすじ
19歳の少女ジェイはボーイフレンドのヒューとのデートの帰り、人生で初めてのセックスをした。
気が付くとなぜか車椅子に縛られているジェイ。訳もわからず困惑するジェイに、ヒューは衝撃の告白をするのだった。

© 2014 It Will Follow. Inc,
「今、セックスをしたことで君を人間ではない何かがつけてくる。どこに逃げても“それ”は君を歩いて追ってくる。そしてそれに捕まると死んでしまう。助かるには他の誰かとセックスをして移さなければならない。」
ヒューはそう告げると、ジェイに自分たちに近づいてくる怪しげな人影を見せる。
以来、ジェイはゆっくりと歩いて近づいてくる奇妙な人物を目にするようになる。その姿は、ある時は女、ある時は男、そしてある時は老婆……
急に襲ってくる様子もなく、ただゆっくり歩いて近づいてくる。他の人には決して見えない。誰かとセックスしなければ殺されてしまう。恐怖に怯える様子を心配する友人に、ジェイはすべてを打ち明ける。
“それ”から逃れる方法はあるのか?“それ”の正体とは一体!?
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映画を観る前に知っておきたいこと
この異常に評価の高いホラー映画には一体何があるのか、映画に込められたメッセージから作品の本質を紐解きます。設定の斬新さを評価する声が多いですが、デビッド・ロバート・ミッチェル監督の意図が見えてくれば、映画はまた違う表情を覗かせると思います。ネタバレはしないので、映画を観る参考にしてみてください。
Rotten tomatoes脅威の満足度96%!
世界一有名な映画批評サイトRotten tomatoesでは200件近いレビューが投稿され、総合点8.1、96%フレッシュ(満足度)という驚きの評価だった。これは映画が斬新なアイデアだけのB級ホラーではないことを物語っている。
ホラー映画にしては珍しく、映画に込められたメッセージを読み解こうとする人が後を絶たない。
全米で社会現象にまで発展したこの映画には一体何があるのか?
映画の本質
興行的な成功の要因は、やはりこの映画の斬新な設定だろう。あのクエンティン・タランティーノ監督もこの奇抜なアイデアに惹かれた一人だ。
「とにかく恐い!こんな設定のホラーは観たことがない。」
映画監督 クエンティン・タランティーノ
しかし、こうした評価が作品の本質を見失わせている。映画に込められたメッセージも、性病に対するメタファー(隠喩)と捉えられていることが多い。セックスで感染するという過激な設定に多くの人が過剰な反応を示すのも無理はない。それだけデリケートな部分を切り口にしているのだから。
しかし、デビッド・ロバート・ミッチェル監督はこうした評価や作品に対する解釈をミスリードだと指摘する。あくまで、セックスは「生きている」ことの一側面に過ぎないとし、映画の根底にあるのは「死の運命」だという。
事実、映画の中でセックスをしている時に“それ”は決して襲って来ない。セックスと愛は「死の運命」を静める方法として映画の中に存在しているのだ。
ミッチェル監督の前作『アメリカン・スリープオーバー』との共通点をこの映画に見つけるとするなら、それは若者の成長過程が描かれている点だ。
人間は成長過程でいつか自分も死ぬことに気付いていく。「死の運命」に気付くことで初めて「生きている」ことを意識できる。
映画の本質は、こうした死生観にある。
その一方で、ミッチェル監督は作品と性との関係性について語りたがらなかった。監督自らここに言及してしまうと、映画は途端に安っぽいB級ホラーに成り下がってしまうからだ。そこには、制作者として歯がゆい想いがあったのではないだろうか。
この映画では性が大きな役割を果たしていると思いますか?
「僕がそのことを説明しようとすればするほど、映画からマジックが消えていくように思う。でも、人生のある時点で、性を恐ろしいと思うような時期があると思うんだ。人の人生には得体の知れないあらゆる不安が押し寄せてくる時がある。それを、別のレベルで表現してみるのも面白いと感じたとだけ伝えておくよ。」
デビッド・ロバート・ミッチェル監督インタビューより
ホラー映画らしからぬ映像美

© 2014 It Will Follow. Inc,
映画にある斬新さは、セックスで感染するという設定によるものだけではない。むしろこの設定は、ホラー映画では使い古されたものだ。
いわゆる不幸の手紙形式だ。日本のホラー映画でも『リング』(98)や『着信アリ』(03)がこれに当たる。
“セックスで”という部分は確かに斬新だが、これは映画の本質を表現するための設定であり、ホラー映画としての斬新な設定と解釈するには多少違和感を感じる。
この映画が真の意味で斬新だと評価されるのは、死生観という重要なメッセージをホラー映画に落とし込んだことだ。そして、それを表現するための独特の映像感覚だ。時にそれは、ホラー映画らしからぬ美しさを見せる。
作品データ
原題 | 『It Follows』 |
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製作国 | アメリカ |
製作年 | 2014年 |
公開日 | 2016年1月8日 |
上映時間 | 100分 |
映倫区分 | R15+ |
キャスト
キャスト | マイカ・モンロ |
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キーア・ギルクリスト | |
ダニエル・ゾバット | |
ジェイク・ウィアリー | |
オリビア・ルッカルディ | |
リリー・セーペ |
監督・スタッフ
監督 | デビッド・ロバート・ミッチェル |
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脚本 | デビッド・ロバート・ミッチェル |
製作 | デビッド・ロバート・ミッチェル |
製作総指揮 | ジョシュア・アストラカン |