それは、残酷なまでの女の“性”
イタリアの前身であるナポリ王国で生まれたヨーロッパにおける最初の本格的な民話集「ペンタメローネ(五日物語)」、それは17世紀初頭に生み出された世界最初のおとぎ話とされる。後の時代で「白雪姫」・「シンデレラ」・「長靴をはいた猫」などの原型となったこの物語にあるのは、400年を経た現代でも変わることのない残酷なまでの女の“性(さが)”だった。
3つの王国が君臨する世界。ある王国では、女王が“母となること”を追い求め、また、ある王国では、老婆が“若さと美貌”を熱望し、そして、もう1つの王国では、王女がまだ見ぬ“大人の世界への憧れ”を抱いていた……
『ゴモラ』(08)『リアリティー』(12)で、カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを2度受賞したイタリアの鬼才マッテオ・ガローネが美しい映像で「ペンタメローネ(五日物語)」を大人のファンタジーとして現代によみがえらせる。
Contents
予告
あらすじ
3つの王国が君臨する世界。
ある国では、“母になること”を渇望する女王が魔法使いの言葉に従い、国王の命と引き換えに美しい男児を出産する。
またある国では、老婆が熱望する“若さと美貌”を不思議な力で取り戻し、妃の座に収まった。
そしてもうひとつの王国では、まだ見ぬ“大人の世界への憧れ”を抱く王女の結婚相手が決められようとしていた。
しかし、3人の女たちが追い求める欲望の果てには皮肉な運命の裏切りが待っていた……
Episode.1
ロングトレリス国の不妊の女王

© 2015 ARCHIMEDE S.R.L. – LE PACTE SAS
子を熱望するロングトレリス国女王(サルマ・ハエック)は魔法使いの言葉に従い、国王(ジョン・C・ライリー)の命と引き換えに怪物の心臓を食し、美しい男児を出産した。成長した王子は、自分と同じ怪物の心臓のもと生まれた下女の息子と兄弟同然の固い友情で結ばれていく。女王にはそれが我慢ならなかった……
Episode.2
ストロングクリフ国の二人の老婆

© 2015 ARCHIMEDE S.R.L. – LE PACTE SAS
人目を避けて暮らす老婆の姉妹。好色なストロングクリフ国の王(ヴァンサン・カッセル)にその美しい声を見初められた姉。不思議な力で若さと美貌を取り戻し、妃の座に収まるが、見捨てられた妹もまた若さと美貌を渇望する……
Episode.3
ハイヒルズ国の夢みる王女

© 2015 ARCHIMEDE S.R.L. – LE PACTE SAS
まだ見ぬ大人の世界への憧れを抱きながら王(トビー・ジョーンズ)と城で暮らすハイヒルズ国の王女。城の外に出ることを切望する王女にあてがわれた結婚相手は屈強で醜いオーガだった。華やかな城から連れ出され、鬼の住処で暮らすこととなった王女は逃げ出す機会をうかがっていた……
Sponsored Link映画を観る前に知っておきたいこと
予告を観ただけで、その映像美が目に留まる。カンヌで2度のグランプリ、日本ではまだあまり知られていないイタリアの鬼才マッテオ・ガローネとは何者なのか!?
鬼才マッテオ・ガローネ
カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを2度にわたって受賞するという快挙を成し遂げた監督だが、その作風は実に多彩である。
最初の受賞は2008年。犯罪組織カモッラを題材に、その暗部と実態をセンセーショナルに映し出した『ゴモラ』だった。
この作品の原作者であるロベルト・サヴィアーノは、マフィアから殺害予告を受け、常に警察の保護下での生活を余儀なくされている。また、出演俳優の一人が指名手配中のカモッラの一員であることが判明し、逮捕に至るという事件まであった。社会派作品としての重量感を物語るこれらのエピソードも、ガローネ監督が鬼才と評される一因かもしれない。
この作品でも、本作のような複数のエピソードを並行して描く手法が使われていた。
2度目の受賞を果たしたのは2012年の『リアリティー』だった。こちらは一転、リアリティ番組に出演し、徐々に夢と現実の区別がつかなくなる男を描いたブラック・コメディだ。この作品は日本で一般公開されることはなかった。
そして本作ではファンタジーに挑んでいるわけだ。「白雪姫」・「シンデレラ」などを題材にした映画は多くある中、「ペンタメローネ(五日物語)」を選ぶ着眼点や、物語が内包する残酷なまでの女の“性”を現代的な映像美で普遍的なテーマに昇華する手腕は見事である。
確かな腕と、この捉えどころのなさが鬼才たる所以だろう。
「ペンタメローネ(五日物語)」とは?
17世紀初頭、ナポリ王国。それはイタリアが統一される以前の国家。この国の軍人・詩人であったジャンバティスタ・バジーレがジャン・アレッシオ・アッパトゥーティスという筆名を用いて執筆した民話集が「ペンタメローネ(五日物語)」である。
この物語のモデルとなったジョヴァンニ・ボッカッチョの「十日物語(デカメロン)」に因んで『五日物語』、すなわち『ペンタメローネ』と呼ばれるようになった。物語全体の枠となる1話と、1日分ごとに10の物語が5日分、合わせて全51話から成る(「十日物語(デカメロン)」は全100話)。一見すると、これらは全く別の物語のようにも映るが、実際には50話の語りと枠物語の展開が関連付けられて物語が進んでいく仕掛けとなっている。
ヨーロッパにおける最初の本格的な民話集で、「白雪姫」・「シンデレラ」・「長靴をはいた猫」など、後にシャルル・ペローやグリム兄弟によって取り上げられた物語の原形であると考えられている。
映画の公式サイトで“世界最初のおとぎ話”と紹介されてはいるが、その定義は曖昧で難しい。
「ペンタメローネ(五日物語)」のモデルとなった1348年の「十日物語(デカメロン)」や、さらに古くは8世紀頃の『千一夜物語(アラビアンナイト)』なども説話集である。
おとぎ話(御伽話)という呼び方は、太閤秀吉が抱えた御伽衆の語った面白話に起源があるとされる。御伽という風習そのものは、古くからある徹夜で語り明かす伝統に基づいているため、その晩に話される話を夜伽話、転じて御伽話とされるに至ったとされる。
よっておとぎ話の語源は御伽にあり、寝る前に語って聞かせる話であれば、あらゆる昔話がおとぎ話と言える。
作品データ
原題 | 『Il racconto dei racconti』 |
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製作国 | イタリア・フランス |
製作年 | 2015年 |
公開日 | 2016年11月25日 |
上映時間 | 133分 |
映倫区分 | PG12 |
原作 | 民話集「ペンタメローネ(五日物語)」 ジャンバティスタ・バジーレ |
キャスト
キャスト | サルマ・ハエック |
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ヴァンサン・カッセル | |
トビー・ジョーンズ | |
シャーリー・ヘンダーソン | |
ヘイリー・カーミッシェル | |
ジョン・C・ライリー |
監督・スタッフ
監督 | マッテオ・ガローネ |
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脚本 | ウーゴ・キーティ |
マッテオ・ガローネ | |
マッシモ・ガウディオソ | |
製作 | マッテオ・ガローネ |
ジェレミー・トーマス | |
ジャン・ラバディ | |
製作総指揮 | ピーター・ワトソン |
シェリル・クラウン |