1983年に実際に起こった巨大ビール企業の「ハイネケン」の経営者、フレディ・ハイネケンの誘拐事件。その真相を追った犯罪ジャーナリスト、ピーター・R・デ・ヴリーズのベストセラーを基に映画化されたサスペンス・ミステリー。
誘拐されたにも関わらず犯人たちを翻弄していくフレディ・ハイネケンをアンソニー・ホプキンスが演じる。『羊たちの沈黙』のレクター博士を思わせる底知れないキャラクターは彼にぴったりだ。対する誘拐犯グループの幼馴染5人を演じるのは、ジム・スタージェス、サム・ワーシントン、ライアン・クワンテン、マーク・ファン・イーウェン、トーマス・コックレルなど、国を越えた名優達が物語に深みを与える。
- 製作:2015年,ベルギー・イギリス・オランダ合作
- 日本公開:2015年6月13日
- 上映時間:95分
- 原題:『Kidnapping Mr. Heineken』
- 原作:小説『The Kidnapping of Alfred Heineken(未訳)』ピーター・R・デ・ブリーズ
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 多くの謎を残したハイネケン誘拐事件
- 3.2 善意ある誘拐犯
予告
あらすじ
1983年、オランダ・アムステルダム。ビールで有名な巨大企業「ハイネケン」の経営者、フレディ・ハイネケンが誘拐されるという事件が起こる。あまりに大胆な事件に、警察は巨大組織による犯行を疑うが、犯人は犯罪経験すらない幼馴染5人の若者だった。
犯行グループは綿密に計画を立て、歴史上最高額(当時)の3,500万ギルダー(現在の日本円では約23億円)もの身代金を要求する。全て上手く行くはずだった。ところが、人質であるはずのハイネケンの不遜な態度に、完璧だったはずの犯行の歯車は狂いだしていく・・・。
誘拐されたハイネケンと誘拐した5人の若者達、そして警察。それぞれの策略や思いが交錯し、行き着いた先で支払われなければならない”誘拐の代償”とは――。
映画を見る前に知っておきたいこと
多くの謎を残したハイネケン誘拐事件
善意ある誘拐犯
5人の犯行グループは、仲間と共同経営していた建設会社が不況の煽りを受けて倒産、さらに銀行から融資を断られ、完全に人生に行き詰っていた。彼らは追い詰められた末に、「もう犯罪に手を染めるしかない」と決心する。
彼らにも良心があり、誰も傷つけたくはなかった。誘拐したハイネケンにも、肉体的な外傷を与えることはなかったという。
「もし彼らが非情だったら、うまく成功させ金も手に入れ、捕まることもなかったと思う。装っていたものとは全然違う人間だったんだ。そこを警察に嗅ぎ取られたんだよ。」
―脚本担当 ウィリアム・ブルックフィールド
「彼らはどこにでもいる労働者階級の若者なんだ。でも彼らはごく普通の若者が考えられないことをした。しかもうまくいくと本気で信じて。一体どれ程の度胸が必要だったのかを考えてみたら、それを実行した彼らにある意味で敬意を抱いたよ。」
―リーダー・コル役 ジム・スタージェス
「ヴィレムは私生活で多くの問題を抱えていたんだ、頂点に達した不満が誘拐という行動に表れてしまっただけだと思う。だからハイネケンに個人的な恨みはなくて、彼らの置かれた状況への不満なんだ。だから俳優陣は善意ある人間として彼らを演じたんだよ。そうは見えないかもしれないけどね。」
―コルの親友・ヴィレム役 サム・ワーシントン
ギャングでもマフィアでもない、誘拐事件という非日常に堕ちた”普通の人間”の心の動き。製作陣は誘拐を計画した5人のそういう所に、非常に興味を引かれたようだ。
人生に行き詰まり、何とか明日を生きるために犯罪を犯した5人の若者達。彼らの行為が、こうしてエンターテイメントとなって経済性を持つというのも、なかなかに皮肉で悲しい話である。