映画を観る前に知っておきたいこと

きみはいい子 きっと誰かを抱きしめたくなる―

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きみはいい子

「人を愛する」ってどういうことなんだろう?そんな普遍的なテーマをもとに綴られ、ベストセラーとなった中脇初枝の同名短編小説を映画化。監督は『そこのみにて光輝く』でモントリオール世界映画祭の最優秀監督賞を受賞した呉美保。

誰かに愛されること、それは傷みに気付いてもらえること、手を差し伸べられること、認めてもらうこと、褒めてもらえること、抱きしめられること―。本作は、様々な人が抱える悩みや苦悩の中に、一筋の希望の光を描くストーリーテリングで、「愛」という漠然とした概念にハッキリとした輪郭をもたせている。「愛とは何だろう?」と悩める人におすすめの一本だ。

  • 製作:2015年,日本
  • 日本公開:2015年6月27日
  • 上映時間:121分
  • 原作:小説『きみはいい子』中脇初枝
  • きみはいい子 (一般書)

予告

あらすじ

岡野

きみはいい子岡野(高良健吾)は、桜ヶ丘小学校の新米教師。真面目だけど優柔不断。問題に正面から向き合えない性格で、日々の生活に悩んでいた。児童たちはなかなか言うことを聞いてくれず、恋人との仲もうまく言っているとは言えないようだ。

雅美

きみはいい子雅美(尾野真千子)は、夫が海外に単身赴任中で3歳の娘・あやねと2人で暮らしている。ママ友らに見せる笑顔の陰で、雅美は自宅で度々あやねに手をあげていた。雅美自身もまた、幼い頃に親に暴力を振るわれていた過去を持っている。

あきこ

きみはいい子あきこ(喜多道枝)は、小学校へと続く坂道の家で一人暮らしをしている老女。買い物に行ったスーパーで支払いを済まさずに店を出たことを、店員の櫻井(富田靖子)に咎められ、認知症が始まったのではないかという不安に襲われながら毎日を過ごしている。

どこにでもある町とどこにでもいる人達。彼らはさまざまなシーンで交差しながら、人と人の繋がりに前向きに一筋の希望を見出していく―。

映画を見る前に知っておきたいこと

愛の輪郭

きみはいい子
大切に思っているはずなのに、傷つけてしまう。大事にしているつもりなのに、上手くいかない。恋人同士の、家族の、絆って一体何なんだろう?どうすれば上手くいくんだろう・・・。そんなふうに愛の形やあり方に悩む人は多い。

”愛”についてはそれこそ紀元前から続く、いや、それこそ人類史が始まってからずーっと語られている壮大なテーマだ。だが、今日まで誰一人としてそれを一般的に常識となるまで昇華させられた人物はまだいない。人類の愛の象徴といえばイエス・キリストだ。彼の言葉ですら「解釈」という形で様々な角度から捉えられているに過ぎない。

つまり、人間は”愛”については”それぞれの答え”を持っているだけで、愛という言葉から連想される想いや行動は、なかなか共有出来るものではないのだ。

冒頭で、『きみはいい子』はそんな漠然とした”愛”というテーマにハッキリとした輪郭を与えると書いた。本作を見て帰路に付く時、きっと誰もが周りのものをいとおしく感じることだろう。

誰もが優しくされたい。傷みに気付いてもらいたいし、手を差し伸べられたい。誰かに認めてもらいたいし、褒めてもらいたい。抱きしめてもらいたい。だが、この映画を見ると、きっと誰かを抱きしめてあげたくなる。誰かに優しくしたくなる。愛する事に消極的だった気持ちが、きっと積極的になる。言葉では漠然としか表現出来ない”愛”という概念に、映画を通して心がハッキリと輪郭を残してくれる大切な経験になると思う。

誰もがそんな気持ちを抱き共有出来る所に、映画の底力を感じずにはいられない。

-ヒューマンドラマ, 邦画

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