マリオネット大国チェコで生まれた、捨てられたテディベアが繰り広げる不思議な冒険。監督は「コーリャ 愛のプラハ」で第69回アカデミー外国語映画賞を受賞したヤン・スベラーク。心温まるへなちょこテディベア・クーキーの冒険は、チェコで空前の大ヒットを記録。チェコ版アカデミー賞と言われているチェコ・ライオン賞で見事4冠に輝いた作品だ。
- 製作:2010年,チェコ
- 日本公開:2015年8月15日
- 上映時間:95分
- 原題:『Kuky se vraci』
予告
あらすじ
クーキーはオンドラという男の子のテディベア。ぜんそく持ちのオンドラは、小さいころからずっとクーキーと一緒に遊んできた。ところがある日、オンドラの母親はクーキーを「古くなったし、汚れがぜんそくにも悪いわ」と、ゴミと一緒に捨ててしまう。
オンドラが住む町からは遠く離れたゴミ捨て場へと運ばれてしまったクーキーだが、ショベルカーに潰されそうになった瞬間、ひょっこり動き出してゴミの山を駆け下り森の中へ逃げ込むのだった。そうして、クーキーのオンドラの元へ帰るための大冒険が始まる。
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映画を見る前に知っておきたいこと
チェコの映画
チェコの映画が日本で配給されることは珍しい。チェコ共和国が生まれたのは1993年。ここ数十年で国が大きく動き、チェコの映画界も大きく変化した。そんなチェコの映画界にあり、近年国際的な評価を受けたもので代表的な作品『コーリャ 愛のプラハ』を撮ったのがヤン・スベラーク監督。
『コーリャ 愛のプラハ』は偽装結婚、亡命、お金とあまり穏やかじゃない単語が並ぶ映画だけに、今回のポップな作風はかなり意外ではある。一体どういう風の吹き回しなのか。ともあれ、本国では『トイストーリー3』『エクリプス/トワイライト・サーガ』など、ハリウッドの大作を抑えて興行収入1位を記録。空前の大ヒットとなった。
チェコと人形劇
チェコは人形劇が有名な国だ。チェコの人形劇は娯楽ではなく、文化として国民に愛されている。その繁栄の裏側には、永きに渡ってオーストリア・ハンガリー帝国からの支配を受けてきた背景がある。オーストリアの言葉はドイツ語。チェコではドイツ語を話すことが強制されていた。
自分たちの言葉を奪われ、文化を奪われ、他国の政治を身勝手に押し付けられてきたチェコの人々が、自らの拠り所としたのが人形劇。人形劇だけはチェコ語の使用が認められていたのだ。そうした背景の中、唯一残された自由にすがり付く様にチェコでは人形劇が盛んに行われるようになった。
そうした歴史的な背景を考えると、今日こうしてチェコのマリオネットが映画の中で自由に暴れまわる姿は感慨深いものがある。
老人から若者へ
子供向けのストーリーであるようで、この作品のテーマは大人の心にも響くものがある。少年の下へ帰ろうとするクーキーは、右も左も分からないへなちょこ。彼をサポートする村長は、酸いも甘いも知り尽くしてリタイア直前。クーキーと村長は、それぞれ若者と老人をシンボルとして描かれている。
人生の荒波に立ち向かおうとする若者と、それを手助けする老人という構図。クーキーは村長から強さや勇気、やさしさを受け継いで行くのだ。こういった伝承のモチーフは『コーリャ 愛のプラハ』以降のヤン・スベラーク監督の作品ではよく見られる。
アマニタ・デザイン
大自然をテーマにしたゲームを作ることで有名な、チェコを代表するゲームクリエイター集団。それがアマニタ・デザインだ。
クーキーのイラストデザインだけでなく、“森の自然の神様”というコンセプトから、独特の風貌のキャラクターをデザイン。アマニタ・デザインが本作に関わっていることは、本国では早くから話題になっていたようだ。
彼らの作るゲームの魅力は、ミステリアスでアナログな独特な世界観。国際的な知名度も凄まじく、世界中にたくさんのファンを持っている。
2009年発表 MACHINARIUM
https://youtu.be/OxzefP1ebIQ
クーキー観たいです!