映画を観る前に知っておきたいこと

モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由
純血のフランス産恋愛映画

投稿日:2017年1月21日 更新日:

モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由

感じあうことだけが、
ふたりの真実

自身も女優として活躍するマイウェン監督が、2015年カンヌ国際映画祭でエマニュエル・ベルコを女優賞へと導いた、官能的な大人のための恋愛映画。10年に渡る愛の行方を女の視点から見つめることで、運命という言葉に酔いしれながら、ロクデナシに溺れてゆく女の燃えるような愛と欲望を映し出す。

女性弁護士トニーをエマニュエル・ベルコ、彼女の元夫ジョルジオをヴァンサン・カッセル。二人の熟年俳優が、愛の始まりと愛の終りに横たわる男女の普遍的な感情をつぶさに捉えてみせる。さらに、『パリ、恋人たちの影』(15)の名匠フィリップ・ガレルの息子ルイ・ガレルも出演する。

2015年、フランスのアカデミー賞とされるセザール賞で主要8部門(作品賞/監督賞/主演男優賞/主演女優賞/助演男優賞/音楽賞/音響賞/編集賞)にノミネートされたフランス映画の現在を感じることができる秀作だ。

予告

あらすじ

スキー事故で重傷を負った女性弁護士のトニー(エマニュエル・ベルコ)は、リハビリセンターに入院することになった。膝の痛みを抱えながらリハビリに励む彼女は、かつての夫ジョルジオ(ヴァンサン・カッセル)との日々を思い出す。

モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由

© 2015 / LES PRODUCTIONS DU TRESOR – STUDIOCANAL

10年前、夜ふけ過ぎのクラブ。憧れの存在だったレストラン経営者ジョルジオと偶然の再会を果たしたトニー。お互いに激しく惹かれ合い、一瞬で恋に落ちた二人は運命のままに結婚した。しかし、トニーは想像以上に遊び人だったジョルジオの過去に不安を隠せない。

モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由

© 2015 / LES PRODUCTIONS DU TRESOR – STUDIOCANAL

やがて、トニーのお腹には新たな命が宿ったが、ジョルジオの昔の恋人アニエス(クリステル・サン=ルイ・オーギュスタン)は、そのことを気に病んで自殺未遂をはかる。責任を感じたジョルジオは、アニエスのもとへと通うようになり……

映画を観る前に知っておきたいこと

ヌーヴェルヴァーグ以後のフランス映画界において、その流れを汲み“恐るべき子供たち”と呼ばれた世代。ジャン=ジャック・ベネックスの代表作『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』(86)や、レオス・カラックスの『ポンヌフの恋人』(91)に代表するアレックス三部作は、あまりにも刹那的で激し過ぎる男女の愛を映し出した。

現代に再びあの頃の激情を感じさせる本作は、そこを通過した全ての女性に捧げられる、まさに純血のフランス産恋愛映画だ。

女性のためのフランス恋愛映画

女性監督マイウェンによって紡ぎ出される愛の物語は、“恐るべき子供たち”と呼ばれた世代のフランス恋愛映画以上に、女性の心に響くのではないだろうか。エマニュエル・ベルコ演じるトニーの一人称の目線で展開される構成が、特にそれを印象付ける。

他の女の影がチラつくほど、ジョルジオは魅力的な男となり、トニーが激情に駆られるほど、二人の距離は離れていく。トニーが見つめるジョルジオは、女性には理解し難い男性像として描かれ、そこにロクデナシを理解しようともがく女性の無能さが映し出される。

いくら年齢を重ねようと、すれ違い続けるのが男と女であるというたわいもない真理は、『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』以上にリアルな女性の喜怒哀楽によって、フランス映画らしい官能的な真実の愛として語られるのである。

愛の終焉によって付けられた傷が、常に男女平等でないように、この映画は存在しているのだ。

“恐るべき子供たち”の一人にして、マイウェン監督のかつての夫リュック・ベッソンも、ジョルジオのように魅力的なロクデナシだったのだろうか……

-ラブストーリー
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