無垢な夢が邪悪な毒に染まる
2011年カンヌ国際映画祭監督賞に輝いたのは新しい才能だった。『ドライヴ』(11)は鮮やかな色彩で見せる映像美と本能に訴えかける音楽がスタイリッシュに融合した、これまでにないクライム・サスペンスとしてニコラス・ウィンディング・レフン監督の名を世界に知らしめたのだ。
そしてレフン監督は再び、『ドライヴ』を彷彿とさせる映像美とスタイリッシュな音楽を引っ下げて、華麗で危険なファッション界の裏側に渦巻く欲望を描き出す。16歳の少女の純粋な野心と、美にとり憑かれた女たちの狂気が激しく妖しくぶつかり合うサスペンススリラー!
ディズニー製作の『マレフィセント』(14)で透明感溢れるオーロラ姫を演じてみせたエル・ファニングが、今度は純真な少女が欲望に囚われていく様を鮮烈に演じきる。レフン監督が絶賛したキアヌ・リーヴスの演技にも注目だ。
Contents
予告
あらすじ
誰もが目を奪われる特別な美しさに恵まれた16歳の少女ジェシーは、トップモデルになる夢を叶えるために田舎町からロスへとやって来る。すぐに一流デザイナーやカメラマンの心を捉え、チャンスを掴んだジェシーにライバルたちは異常な嫉妬を覚えていった。そしてジェシーに仕事を奪われた彼女たちは、常軌を逸した復讐を仕掛ける。

© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch
そんな欲望渦巻くファッション業界にジェシーもまた染まってゆく。純粋な少女の中に眠っていた激しい野心がついに解き放たれる。永遠の美のためなら……
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2011年カンヌ国際映画祭での『ドライヴ』の評価から一転、本作は今年のカンヌを真っ二つに引き裂いた。会場にあったのは絶賛の拍手喝采と非難の嵐だった。
カンヌのこのリアクションは、一般公開後の映画の評価を象徴したものとなった。ニコラス・ウィンディング・レフン監督最新作に魅せられて劇場に足を運んだファンたちはカンヌと同様の評価を下したのだ。
この映画に『ドライヴ』のようなスピード感はない。しかし、レフン監督が長い間切望した“現代女性の美への執着”をテーマにしたこの作品は『ドライヴ』以上にニコラス・ウィンディング・レフンらしさが生える1本だ。
ニコラス・ウィンディング・レフンの世界
ニコラス・ウィンディング・レフン監督が見せる映像美は、一目でそれとわかるほど鮮やかな色彩を持っている。しかし、一見計算し尽くされたかのようなこれらの映像は、レフン監督の色覚障害に由来している。中間色が見えづらい彼にとって、色彩コントラストの強い鮮やか過ぎるこのビジュアルは偶然生み出された手法なのかもしれない。
ともあれ映画監督として致命的とも言えるハンディキャップを持ち味にまで昇華していることに違いはない。この映像美と『ドライヴ』のクリフ・マルティネスによる音楽が融合した時、これまでにないようなスタイリッシュな映画が生まれるのだ。
また本作では自ら脚本を手がけ、ファッション業界を舞台としたことで、『ドライヴ』以上にスタイリッシュな仕上がりを見せている。
鮮やかな色彩で、華やかな業界とそこに生きる女たちの妖しさを同時に表現し、観客は白昼夢のような幻想的な世界に引っ張り込まれてゆく。そして純粋な少女の夢が野心に変わる時、吐き気がするほどの緊迫感に見舞われるのだ。
カンヌが持て余したこの映画、あなたはどう評価する?
作品データ
原題 | 『The Neon Demon』 |
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製作国 | フランス・アメリカ・デンマーク |
製作年 | 2016年 |
公開日 | 2017年1月13日 |
上映時間 | 118分 |
映倫区分 | R15+ |
キャスト
キャスト | エル・ファニング |
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キアヌ・リーブス | |
カール・グルスマン | |
クリスティーナ・ヘンドリックス | |
ジェナ・マローン | |
アビー・リー | |
ベラ・ヒースコート |
監督・スタッフ
監督 | ニコラス・ウィンディング・レフン |
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脚本 | ニコラス・ウィンディング・レフン |
製作 | シドニー・デュマ |
バンサン・マラバル | |
製作総指揮 | クリストフ・ランデ |
ブラヒム・シウア | |
クリストファー・ウッドロウ | |
スティーブン・マーシャル | |
ミシェル・リトバクetc. | |
音楽 | クリフ・マルティネス |