1959年に市川崑により映画化された大岡昇平の同名小説を塚本晋也の監督、脚本、製作、主演により再び映画化。共演にリリー・フランキー、俳優デビュー作の「バレット・バレエ」以来の塚本監督作品への参加となるドラマーの中村達也。
塚本監督は本作をリメイク作品ではなく、あくまで原作から感じたものを映画にしたと語る。また原作を初めて読んだ時、本当の戦場にいるような恐ろしさがあり頭から離れなかったとも。映画ならなおさら本当の戦場にいるような恐ろしさを感じれるはずだ。
- 製作:2014年,日本
- 日本公開:2015年7月25日
- 上映時間:87分
- 原作:小説『野火』大岡昇平
Contents
- 1 特報動画
- 2 予告
- 3 あらすじ
- 4
映画を見る前に知っておきたいこと
- 4.1 塚本晋也監督の想い
- 4.2 いわゆる戦争映画ではない
特報動画
予告
あらすじ
日本軍の敗北が濃厚となった第二次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。そんな過酷な戦況のなか、一等兵・田村は結核を患い部隊を追放される。野戦病院へと送られた田村は食糧不足を理由に入院を拒絶される。行く当てを失い再び部隊に戻るも、そこでも入隊を拒否されてしまう。
空腹と孤独と戦いながら、レイテ島の暑さの中をさまよい続ける田村は、かつての仲間たちと再会する。戦場という異常な空間で極限状態に追い込まれた人間たちが描かれる。
映画を見る前に知っておきたいこと
塚本晋也監督の想い
最初は20年前、塚本晋也監督は当時35歳の時に大岡昇平の小説『野火』の映画化を思い立った。次は10年前の45歳の時に再び制作の可能性を模索した。しかしどちらのタイミングも資金繰りができずに断念した。2度目に思い立った10年前は戦場に行った方々が80歳を越え始めていた時であった。塚本監督はそうした戦争を体験した方々の貴重な生の声を求め、インタビューを始めた。そして相変わらず資金繰りの厳しい中、今作らなければもうこの先作るチャンスはないという強い想いによってこの映画を完成させた。それは戦争の痛みを知る人がいよいよ少なくなるという焦りであった。
いわゆる戦争映画ではない
塚本監督の想いはあくまで、戦争体験者の肉声を体にしみ込ませ反映させたこの映画を、今の若い人をはじめ少しでも多くの方に見てもらい、いろいろなことを感じてもらいたいというものだ。それは多くの戦争映画に込められた想いと同じだと思う。しかしこの作品はいわゆる戦争映画ではない。
通常、戦争映画は実際に戦場で起こるその悲惨さや残酷さを伝え、観客は映画館という安全な場所でその非日常的な現実を体験する。しかし『野火』はそうした悲惨さや残酷さより、実際の戦場で兵士が何を思い感じているのかということに焦点が置かれている。観客は映画館で、ちょっとしたことで現地人を銃殺するだろうこと、挙げ句は「猿の肉」を人肉と知りつつ喰らうだろうことに適応していくのだ。いわゆる戦争映画とは別の視点で戦争がどんなものかを伝えてくれる。
そしてそれが、1959年に市川崑により映画化された『野火』との大きな違いでもある。