英国ミステリー界騒然のベストセラー小説『わたしが眠りにつく前に』をニコール・キッドマンとコリン・ファースの2大オスカー俳優で映画化。毎朝目覚めるたびに記憶を失う女性。毎日の出来事を記録するため彼女は映像日記を撮影し始めるが、昨日の私から語られたのは衝撃の真実だった。記憶障害をテーマにしたミステリー。
- 製作:2014年,イギリス・フランス・スウェーデン合作
- 日本公開:2015年5月23日
- 原題:『Before I Go to Sleep』
- 上映時間:92分
- 原作:小説『わたしが眠りにつく前に』SJ・ワトソン
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 ネタバレ厳禁のミステリー
- 3.2 映画と小説
予告
あらすじ
クリスティーンは事故の後遺症によって、毎朝目が覚めるたびに前日までの記憶を失ってしまう特殊な記憶障害を負ってしまう。夫のベンは、自分のことや結婚していることすら忘れてしまう彼女を献身的な愛で支えていた。
ある日、ベンの留守中に医師を名乗る男から電話がかかってくる。そして自分は夫に内緒で、毎日の出来事を記録するため映像日記を撮影するという治療をしていることを知るのだった。その医師から映像の隠し場所を教えられたクリスティーンは日記を再生する。
そこに映っていた自分からのメッセージで彼女は、誰かに襲われ瀕死の重傷を負ったことが記憶障害の原因だと知る。夫と医師の食い違う言葉。何を信じればいいのか分からなくなった彼女は、昨日の自分からのメッセージを頼りに核心へと迫っていく。そして、そこに待っていた真実は想像もできないものだった・・・。
映画を見る前に知っておきたいこと
ネタバレ厳禁のミステリー
ミステリー小説を読むときによく言われているのが「8割読んで半分と思え」ということ。結末に向かうラストスパートまでは、読者を惑わせるトラップゾーンの様なものだ。つまり、ミステリー小説がベストセラーになったということは、そのトラップゾーンに見事に嵌められた人が大勢いるということ。
当然、この手の話はネタバレしてしまうと半分も楽しめないだろう。ネタバレしてしまうと、トラップゾーンに嵌まりようがない。ネット上のレビューにはネタバレを含む記事が多くあるので、これから『リピーテッド』を見ようと思っている人は特に注意したい。
映画と小説
少し作品の内容とは離れてしまうかもしれないが、本作はベストセラー小説が原作となっているので、しばしば語られる映画と小説の違いについて書きたいと思う。
もしあなたが小説を書いて「彼女は古今東西の小説のなかに現れた女性のなかで第一の美人であった」と書けば、それが第一の美人になるのです。言語のこのように抽象的性質によって、小説中の美人の本質が規定されます。これが劇や映画と小説との本質的ちがいであります。
三島由紀夫『文章読本』より
これは三島由紀夫の言葉だが、ようするに映画より小説の方が想像力を必要とするということだ。例えば美人の定義は人それぞれであり、小説では読み手の想像によってその美人の容姿が決定されるが、映画では観た人全員にとってクリスティーンはニコール・キッドマンなのだ。小説は読み手自身の中から世界観が広がっていくが、映画は外から世界を眺め強制的に物語が進んでいく。この点においては映画より小説が崇高だとされる論調をよく目にする。
しかし、『リピーテッド』のような作品では映画のほうがより緊迫感を感じることができる。原作での売り文句は「ラスト80ページの衝撃!」だが、クリスティーンが思いもよらない真実に辿り着いていく様子は、自分のペースで読むより他者によって強制的に進められていくほうが衝撃が強い。こんな視点からも原作との違いを楽しんでみてはどうだろうか。