映画を観る前に知っておきたいこと

【サクラ花~桜花最期の特攻~】知られざる“人間爆弾”の真実

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サクラ花 桜花最後の特攻

第二次世界大戦末期に生み出された「桜花」という小型特攻機に纏わる戦争ドラマ。テレビ局や映画会社などが関わっていない、多くのボランティアの人の手によって作られた映画。

監督は『オールナイトロング』、『天心』などで知られる松村克弥。人の心の深淵を見つめ、時代のタブーに対して挑戦的な作品を撮ることで有名な人物だ。

主演は『恋空』でデビューした後、テレビドラマ「永遠の0」で戦時中の兵士を演じた大和田健介。他、緒形直人、磯山さやか、林家三平、三瓶など、バラエティ豊かな俳優陣にも注目。

  • 製作:2015年,日本
  • 日本公開:2015年11月2日

予告

あらすじ

第二次大戦末期、一つの兵器が生み出された。かつて「人間爆弾」と呼ばれた、知られざる特攻兵器。たくさんの若者を「人」ではなく「爆弾」に変えたその兵器の名は、「桜花(おうか)」。

プロペラも、車輪も、燃料も積んでいない。敵に向かって突撃するためだけに作られた小型特攻機だ。一度乗れば二度と生きては戻れない。

茨城県・神之池基地、現在の神栖・鹿嶋市には「桜花」の秘密訓練基地があった。終戦直前の昭和20年6月22日、大型爆撃機「一式陸攻機」に搭載され、桜花と8人の乗員は激戦の地、沖縄に向かう。

それは桜花の最初で最後の出撃だった。

その8人の中に、恐怖と緊張に震える新米兵士の尾崎がいた。沖縄まで2時間半。桜花を搭載した上、防御機能に劣る一式陸攻は、並外れたスピードと破壊的な攻撃力で“地獄の使い”と恐れられた敵機グラマンにすればただの的。やがて機内は凄惨な“戦場”と化した。

戦場は、尾崎の想像をはるかに超えていた。新妻と幸せな家庭をもつ者、将来の夢に燃えていた者。一人、また一人と散っていく仲間たち。

そして桜花出撃の時は来た――。

映画を見る前に知っておきたいこと

記録として

桜花プロデューサーの城之内景子によると、この映画は映画会社やテレビ局なども関わっていない、多くのボランティアの人による手作りだという。

その思いはやはり映画のテーマと同様に、戦争の悲惨さと残酷さ、平和や命の尊さに主軸が置かれている。特攻という人を人と思わぬ無茶な作戦の中に、“ありのままの人間”を描いた作品だ。

戦後70年ということもあり、戦争の悲惨さをテーマにした映画は数多く公開されている。僕はその度に戦争を感情論で語るのは危険なのではないか、と疑問を投げかけてきたわけだが、日本人であるならば「桜花」のことは“人間らしい感情を伴って”知らねばなるまい。

最近、一般人によるヒトラー暗殺を描いた映画『顔のないヒトラーたち』の記事を書いた際に、現独首相であるアンゲラ・メルケルの演説を紹介した。

「ナチスは、ユダヤ人への虐殺によって人間の文明を否定し、その象徴がアウシュヴィッツである。私たちドイツ人は、恥の気持ちでいっぱいです。何百万人もの人々を殺害した犯罪を見て見ぬふりをしたのはドイツ人自身だったからです。

私たちドイツ人は過去を忘れてはならない。数百万人の犠牲者のために、過去を記憶していく責任があります。」
ドイツ首相、アンゲラ・メルケル

我々日本人にとっては、この“特攻隊”がまさしくアウシュヴィッツのそれではないだろうか。どんな大義名分があろうとも、これは人間の手による虐殺と変わりない。

「日本の技術者全体の名誉の為にも、桜花は我が技術史から抹殺されるべきである」

これは、桜花の開発に深く携わった三木忠直が、1952年に刊行された雑誌「世界の航空機」に証言を依頼された際の拒否の言葉である。戦後復興の折には鉄道業界に大きく貢献したことでも知られる彼は、桜花を作り出したことを生涯に渡って深く後悔していた。

しかし、成人として戦争を体験した世代が90歳を超えようとしている今、新しい世代を生きる我々は、絶対に「桜花」から目を逸らしてはならない。

ただの凄惨な作戦としてではなく、過去の戦争の歴史ではなく、国のあり方を間違えてしまった恥の気持ちとして、一人一人が過去を記憶していく責任があるのではないか。

『サクラ花~桜花最期の特攻~』には、映画としてよりも「記録」として、まずは賛辞を送りたい。そして、この映画が一人でも多くの人の目に触れる機会の一助となれたなら幸いである。

-戦争, 洋画

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