ケンカもない。部活もしない。壁ドンもない。喋るだけの青春映画。
原作の「セトウツミ」は、塾通いのインテリ眼鏡・内海と、元サッカー部のお調子者・瀬戸の2人による会話劇だけで人気を博した斬新な漫画。そこにはウィットに富んだ会話と独特の“間”しかない。
池松壮亮と菅田将暉の若手実力派よるW主演。ヒロイン役には中条あやみ。
- 製作:2016年,日本
- 日本公開:2016年7月2日
- 上映時間:75分
- 原作:マンガ「セトウツミ」此元和津也
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3 感想(ネタバレなし)
予告
あらすじ
高校二年生の内海想と瀬戸小吉は、学校が終わるといつもの河原で他愛もない話をして過ごすのが日課だった。
塾通いのインテリでクールな内海と、元サッカー部のお調子者で天然な瀬戸、性格は真逆の二人だが、中身があるようでないような会話は尽きない。くだらない言葉遊びをしたり、好きな女の子に送るメールを真剣に悩んだり、たまには深いことも語り合ったり……
そんな二人を影ながら見守っているのは校内で一番人気で由緒あるお寺の長女・樫村一期だ。瀬戸は樫村に恋し、樫村は内海が気になる、しかし内海はそんな樫村につれない素振りの三角関係。
二人の日常にちょっとだけ波風を立てるのはヤンキーの先輩鳴山や謎のバルーンアーティストたち。
まったりと流れる時間の中で移り行く季節。瀬戸と内海の無駄話は止まらない……
Sponsored Link登場人物&キャスト
池松壮亮(内海想役)
塾通いのクールなインテリ眼鏡。瀬戸の親友。樫村につれない素振りを見せる。
菅田将暉(瀬戸小吉役)
元サッカー部のお調子者。内海の親友。樫村に片思い。
中条あやみ(樫村一期役)
校内一の人気を誇るマドンナ的存在。由緒あるお寺の長女。内海に片想い。
感想(ネタバレなし)
漫画「セトウツミ」の感想(ネタバレなし)
原作の漫画「セトウツミ」は、基本的には内海と瀬戸によるシニカルな会話だけが見所の漫画だが、これがなかなか斬新で面白い。
設定だけ聞くと、何が?と思うかもしれないが、ウィットに富んだ会話で笑いを誘いながら、内容と似つかわしくない画風と独特の“間”がこの会話劇に漫画らしいシュールさを与えている。
「セトウツミ」は普段は「別冊少年チャンピオン」で連載されているのだが、一度だけ「月刊少年チャンピオン」で同誌の人気マンガ「クローズ」の25周年を記念したトリビュート企画で「セトウツミ外伝」を掲載している。
この話を知って、あの独特の“間”の正体が分かった気がした。「クローズ」の“間”と「セトウツミ」の“間”がそっくりなのである。
ただ「クローズ」は不良漫画なので、この独特の“間”はシリアスな緊張感を生むのだが、「セトウツミ」でやると何とも言えない緊張感になってしまっている。
勿体付けたあげくに、くだらないことを言うというのが実にシュールで、妙な緊張と緩和が繰り返されるとクセになる。
映画『セトウツミ』の感想(ネタバレなし)
しかし、これを映像化するとなると話は違ってくる。特に映画というフォーマットは笑いが遠のくイメージがある。
普通のコメディなら良いのだが、「セトウツミ」は内海と瀬戸の会話劇が中心なので、感覚的には映画を見ていると言うよりは漫才を見ている感覚に近い。特報映像を見てもらえば分かると思う。
映画『セトウツミ』 特報①「けん玉 」
池松壮亮と菅田将暉の二人が好きな人は楽しめるかもしれないが、そうでない人にとっては俯瞰して見てしまう事になるかもしれない。
もちろん二人の掛け合いは単純に面白いが、映画だと肝心のシュールさが少し足りないように感じる。
ウィットに富んだ会話も独特の“間”も、原作に忠実に映画化されていると思うが、この違いは何だろう?
原作の漫画は、やはり漫画として計算されたバランスの上に成り立っている。ウィットに富んだ会話や独特の“間”だけでなく、画風というものも相まっている。コマ割りや描写に関しては映画でいう監督の役割だと思うが、この画風は映画にはないものだ。
大体漫画を選ぶ時、多くの人はまず絵を見て、読むかどうか最初の判断をすると思う。絵が好みでなければ読む気が失せるし、逆の場合はそれだけで読んでみたくなる。
それだけ漫画にとってこの画風というのは作品の雰囲気を担う重要な要素になっている。例えば、歴史漫画や少女漫画など、画風だけでいかにもという雰囲気を演出できる。
「セトウツミ」はあの画風だけでシュールな雰囲気を持たせる事に成功しているのだ。
しかしその分、映画は漫画にはない情報量を持っている。BGMや声や音響など音による演出も可能だし、実写というのは漫画以上のリアリティを生む。
ただ、これらの要素は「セトウツミ」に関してはあまり意味を成さないように思う。映画らしい演出をすればする程「セトウツミ」の持つシュールさが損なわれてしまう。
そういう意味では、出過ぎた演出をしなかった秀逸な映画化だと思うが、やはり「セトウツミ」は漫画で読む方が面白い。