映画を観る前に知っておきたいこと

【白い帽子の女】アンジェリーナ・ジョリーの自伝的映画

投稿日:2016年9月4日 更新日:

白い帽子の女

どれだけ愛に傷ついても、愛でしか癒せない傷があるー

これはクラシカルなリゾートホテルを舞台にすれ違うある夫婦の軌跡である。

ブラッド・ピット×アンジェリーナ・ジョリー・ピット、二人が出会った『Mr.&Mrs.スミス』(05)以来10年ぶりの共演が実現。アカデミー賞女優のアンジェリーナが自ら出演・監督・脚本・製作を務め、ブラッドがそれを公私共に全面的にサポートした。

映画の舞台となる南フランスは、かつて二人のハネムーンの地。そして官能的に綴るビターでエモーショナルな大人のラブストーリーに、観客は二人の関係性を重ねずにはいられない。

本作からアンジェリーナは”アンジェリーナ・ジョリー・ピット”の名前でクレジットしている。

「『白い帽子の女』は何かを失い、すれ違ってしまった夫婦が、粘り強い愛によって自分たちを取り戻し、粘り強い愛によって自分たちを取り戻し、お互いを受け入れるようになるまでを描く物語です。」

アンジェリーナ・ジョリー・ピット

© 公式サイト

予告

あらすじ

1970年代、南フランスのリゾート地。アメリカ人の小説家ローランド(ブラッド・ピット)と、その妻ヴァネッサ(アンジェリーナ・ジョリー・ピット)はバカンスに訪れていた。
白い帽子の女

© 2015 UNIVERSAL STUDIOS

カフェに入り浸ったままのローランドと、ほとんどの時間をホテルの部屋で過ごすヴァネッサ。過去に起きたある出来事がきっかけで二人の心は離れてしまっていた。

ある日、ヴァネッサは部屋の壁にある小さな穴を見つける。好奇心から覗いてみると、そこにはハネムーンで滞在している若いカップル(メラニー・ロラン、メルヴィル・プポー)の寝室が見えた。
白い帽子の女

© 2015 UNIVERSAL STUDIOS

愛情から生まれる優しい言葉や親密なしぐさを、壁越しに観察するヴァネッサ。またローランドも愛を謳歌する若いカップルに魅了され、二組の夫婦の距離は自然と近づいていく。
白い帽子の女

© 2015 UNIVERSAL STUDIOS

二人は彼らを介入させることで自分たちの夫婦関係を改善しようと試みる。しかし、深い孤独を抱えるヴァネッサは混乱してしまう。

「君は幸せになることを拒んでいる。」

ローランドは過去を乗り越え、また一緒に歩みたいとヴァネッサに寄り添うが……

映画を観る前に知っておきたいこと

本作はアメリカ本国で決して評価が高かったわけではありません。しかし、それは映画の見方にもよるかもしれません。アンジェリーナ・ジョリー自身の人生が作品の背景にあるように思います。そこで彼女の人生や、夫であるブラッド・ピットとの関係性を紹介しておきます。少しだけ予習すれば、映画のトーンも美しいものに映ると思います。

アンジェリーナ・ジョリーの自伝的映画

ブラッド・ピット×アンジェリーナ・ジョリー・ピット、10年ぶりの共演と紹介される機会がほとんどだろうが、『Mr.&Mrs.スミス』(05)を期待したり、関連付けるには少し無理のある作品だ。

アンジェリーナ自身がひとりの女性として抱える苛立ちや不安を赤裸々にさらけ出し、出演・監督・脚本・製作までを務めたこの映画には自伝的な意味合いが込められているように感じる。決して公式なアナウンスがあったわけではないが、映画のトーンと彼女の人生が重なり合ってしまう。

生後間もない1976年に両親が別居し、母親に引き取られた彼女の思春期は自殺傾向のある鬱状態に悩まされていた。。決して裕福ではない家庭環境は富裕層の生徒が多いビバリーヒルズ高等学校の中で彼女を孤立させていったという。またドラッグを経験した暗い日々や、SMやレズビアン的な性行動などのスキャンダルも多い。

2015年には卵巣癌の手術を受けていることも彼女の人生に暗い影を落としている。彼女の人生を形成しているのはトップスターとしてのアンジェリーナ・ジョリーだけではない。

映画が彼女自身を投影させたものだとするなら、観客もそういう視点で観なければ正当な評価を下すことはできないだろう。

「私は今でも…そしてこれからも…心の中では、刺青をしたつまらない子供に過ぎません」

「ナイフで自分を傷付けると生きているという実感が沸き、開放感に満たされ、なぜか癒しのようにを感じるのです」

アンジェリーナ・ジョリー・ピット

© Wikipedia

夫ブラッド・ピットの存在

今、アンジェリーナを支えているのは間違いなく夫であるブラッド・ピットの存在だ。妻の病気について彼が語った言葉には、絶望と希望の間で葛藤する夫としての姿があった。それは映画のローランドとヴァネッサの関係性を思い起こさせるような言葉だ。

「凄く痩せ、絶えず泣いていた。絶え間ない頭痛、胸の痛み神経過敏な背中と肋骨に苦しんでいた。僕達の関係も崩壊寸前だった。彼女は自分のことを大切にしなくなった。映画の撮影、全ての役を断るようになった。僕は希望を失いすぐに別れることになるだろうと思った。しかし、そのとき僕は何とかすると決意した。だって、世界で一番美しい女性を僕は得たんだ。」

ブラッド・ピット

© 妻アンジェリーナの病気についてブラッド・ピット語る

絶望を乗り越えたブラッドは、アンジェリーナに花やキスや褒め言葉を送り、人前では彼女のことだけを話すようになったという。そして彼は本作に出演し、映画制作を公私共に全面的にサポートする立場を取っている。

二人の感情や関係性を知ることで映画の見え方は随分と変わってくる。

公式サイトでもわざわざ、本作からアンジェリーナが”アンジェリーナ・ジョリー・ピット”の名前でクレジットしていることを伝えている。それこそが映画に彼女が自身を投影させたという証拠だろう。

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