マイク・ファン・ディム監督が長編デビュー作『キャラクター/孤独な人の肖像』で第70回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したのは1997年のこと。それ以降ハリウッドから殺到したオファーを、「ミシュランで星を獲ったのにハンバーガーなんか焼くもんか」と頑なに拒み続けたファン・ディム監督待望の2作目!
感情をなくし自殺願望のある若き大富豪ヤーコブは謎の代理店にサプライズな死を依頼する。しかし、同じサプライズな死を待つアンネに出会ったことがヤーコブの決心を揺らがせる。解約不可、成功率100%のサプライズな死から二人は逃れることができるのか?
コーエン兄弟を彷彿とさせるオランダ製ブラック・コメディ!
- 製作:2015年,オランダ
- 日本公開:2016年5月28日
- 上映時間:105分
- 原題:『De Surprise』
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3 映画を見る前に知っておきたいこと
予告
あらすじ
天涯孤独の身になり感情をなくした大富豪ヤーコブは、ある計画を実行する。それは巨額の資産を慈善団体へ寄付し、あとはさっさと死ぬだけという自殺計画だった。ヤーコブが幼い頃から家に仕える庭師のムラーは普段と違う様子をいぶかしむが、ご主人様の自殺計画は見抜けなかった……自殺にピッタリの断崖絶壁を訪れたヤーコブは、とんでもない光景を目撃する。霊柩車が現れ、運転手の男と車いすの老人が崖の向こうに行くのだが、数分後、崖から戻ってきた運転手の押す車いすは空だったのだ!現場に残されたマッチを手に、ヤーコブはブリュッセルにある謎の会社「エリュシオン」をアポなし訪問する。そこは、葬儀屋が裏稼業として営む「顧客のあの世への“旅立ち”を手助けする」謎の代理店だった。
社長のジョーンズはヤーコブの願望を察して、いつ、どのように“旅立つ”かはおまかせのサプライズコースを提案するのだった。
すぐに契約を交わしたヤーコブであったが、その直後に同じサプライズを待つアンネと運命的に出会ってしまう。解約不可、成功率100%のサプライズな死から二人は逃げ切ることができるのか!?
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映画を見る前に知っておきたいこと
オランダ映画
オランダ映画というのはあまり馴染みがないと思う。それもオランダという国の映画産業は比較的小規模であるため、日本で公開される作品はほとんどないので当然と言えば当然である。
しかし、そんなオランダ映画の中でも才能ある監督はいる。1970年代のオランダ映画の繁栄をもたらしたのはポール・ヴァーホーヴェンという一人の監督であった。彼がこの頃に監督した映画はことごとくヒットを記録している。その後はハリウッドに渡り、映画を撮り続けている。よってオランダ映画というわけではないが、ポール・ヴァーホーヴェンが監督した『ロボコップ』(1987)『トータル・リコール』(1990)『氷の微笑』(1992)は日本でも御馴染みの映画である。
また、オランダ映画は最近では『素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店』のようなコメディが人気を集めている。例えば、2004年の『Hush Hush Baby』 (Shouf Shouf Habibi) と2005年の 『Schnitzel Paradise』 (Het Schnitzelparadijs) は日本で公開されていないが、ベルリン国際映画祭でも上映され、国内で成功を収めたコメディ映画である。
本作はあのコーエン兄弟を引き合いに出して紹介されているブラック・コメディであり、長編デビュー作『キャラクター/孤独な人の肖像』で第70回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したマイク・ファン・ディム監督の待望の2作目なので話題性も十分ある。現在のオランダ映画を知る上でこれ以上ない作品ではないだろうか。
ちなみに『キャラクター/孤独な人の肖像』は悪評高い執政官の父と息子との長年に渡る確執と愛憎を描いたヒューマンドラマでコメディ映画ではない。1920年代の街並を再現するため、オランダ、ベルギー、ドイツ、ポーランドの4カ国9都市でロケを行うなど、ビジュアル的にも見所のある映画だ。またアカデミー賞外国語映画賞だけでなく、カンヌ国際映画祭批評家週間での観客賞や主演のフェジャ・ファン・フエットがジュネーヴ映画祭で最優秀男優賞を受賞するなど、国際的な評価も高い。
これだけの映画を撮っておきながら、2作目となる本作まで18年もの間ファン・ディム監督はなぜ映画を撮らなかったのかだろう。普通に撮り続けていれば巨匠と言われる類いの監督だったのではないだろうか。だがそれだけに本作は期待感も膨らんでしまう。