映画を観る前に知っておきたいこと

【首相官邸の前で】決して報道されない原発の真実

投稿日:2015年8月5日 更新日:

首相官邸の前で

2012年夏、脱原発と民主主義の再建を求め­た約20万人によって、官邸前は埋め尽くされた。それは福島第一原発事故後の政府の対応に抗議するためのものだった。しかし、これだけの規模にも関わらず、その全貌はほとんど報道されることなく、人々が知らない歴史となってしまった。

歴史社会学者・小熊英二が初監督を務め、無償提供された自主撮影映像と8人の証言から失われた歴史を記憶する。映画ならではの力が真実を描いたドキュメンタリー作品。それは人々の力が日本を変えた希望の瞬間だった。

  • 製作:2015年,日本
  • 日本公開:2015年9月19日
  • 上映時間:109分

予告

あらすじ

首相官邸の前で2012年夏、脱原発と民主主義の再建を求め­た約20万人によって、官邸前は埋め尽くされた。2011年3月11日に発生した福島第一原発の事故前は全く別々の立場にいた、性別も世代も地位も国籍も出身地も志向もばらばらな人たちが、「脱原発」と「民主主義の危機」という共通の言葉をもって首相官邸前に集まり、事故後の原発政策に対する抗議の声をあげた。首相官邸の前で“日本を変えるため”という同じ一つの目的を持つ、菅直人をはじめとする立場の異なる8人へのインタビューを通して、原発事故の恐怖や抗議運動の台頭、首相との会談までの経緯が映し出される。また無償提供された自主撮影映像は現場映像だけが持つ生の迫力を伝えてくれる。

映画を見る前に知っておきたいこと

映画しかできないこと

本作の監督を務めたのは慶應義塾大学総合政策学部教授であり歴史社会学者の小熊英二だが、彼はこれまで映画を撮ったことはなかった。映画作りに関心を持ったこともなかった。そんな彼が映画を撮ろうと思ったのが、歴史家であり社会学者として、このデモを記録し、後世に残すことだった。

彼にとって映像作品は初だったが、これまで著作では多くの賞を獲っている。過去の資料の断片を集めて、一つの世界を織りあげることに関してはスペシャリストだ。そしてあえて映画という手段を選んだのは、デモの迫力をよりダイレクトに伝えることができるからだろう。

また20万人という規模のデモでありながら、ほとんど報道されることがなかったこのデモを記録するのに映画が最適であったといえる。一般のマスメディアを使わず、そして多くの人が共有できる。

「いろいろな見方のできる映画だと思う。見た後で、隣の人と、率直な感想を話しあってほしい。映画に意味を与えるのは観客であり、その集合体としての社会である。そこから、あなたにとって、また社会にとって、新しいことが生まれるはずだ。」

小熊英二

黙殺され続ける民意

首相官邸の前で本作で扱われた2012年夏のデモ以降も、「脱原発」と「民主主義の危機」という同じテーマのデモは多く行われている。その中でも2013年8月2日に行われた大飯原発の停止を求めるデモには多くの人が集まった。しかし、こうしたデモが大きく報道されることはなかなかない。

この人数を見れば何が民意なのかわかるはずだ。それでも報道は規制され、強引に再稼働へと進んでいく。本作はそうした“黙殺され続ける民意”を止める意味でも重要な役割を果たしてくれるはずだ。少しでも多くの人に伝わり、日本が変わることを願う。これも映画にしかない力だと思う。

ちなみに大飯原発3、4号機は2012年7月~2013年9月まで再稼働したが、現在は稼働していない。だが地元住民と関西電力の闘いは今も続いている。

click ※原発に対する個人的な意見
僕は、「脱原発」は日本の民意だと思っている。でも原発が生活の一部となっている人もたくさんいるだろうし、一言で民意と言ってしまうのが難しいのもわかる。

しかし本当に思うことは民意うんぬんではなく、人間として原発は止めるべきだということだ。事故が起これば人間の限られた土地が奪われるし、事故が起きなくても放射性廃棄物によって土地は奪われている。まったく人間には制御しきれないものだと思う。

70年代、オイルショックもあり原発は人々にとって夢のエネルギーであったと思う。そこに多くの税金をつぎ込み引き返せない現実もある。しかし、時代は変わった。僕たちは過ちに気付くべきだ。引き返す勇気が必要なところまで来ている。

間違いを認め、さらに多くの税金を使って廃炉にしようではないか。全員で痛みを分かち合うべきだと思っている。引き返すなら1秒でも早い方が、引き返し易いのだから。

さらに付け加えれば、外国に原発の技術を輸出するのも止めてほしい。日本が原発先進国として味わった苦しさを他の国に辿らせていいはずがない。これに関しては自国のことではないし、ましてや日本に利益を生むので関心は低いと思うが、これは利益やお金の問題ではない。人間として向き合わなければいけない問題なのだ。

-ドキュメンタリー, 邦画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。