映画を観る前に知っておきたいこと

【白い沈黙】娘が失踪して8年。試されるのは父の愛―。

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白い沈黙

愛する娘が目を離した数分間に忽然と消えてしまった。それから8年、ネット上で見つかった手がかりから、事件の謎が徐々に明らかになっていく。事件に隠された真相と残された家族の葛藤を描いたサスペンスドラマ。

監督は、「スウィート ヒアアフター」のアトム・エゴヤン。主人公のマシューに「デンジャラス・ラン」のライアン・レイノルズ。「デビルズ・ノット」のミレイユ・イーノス、「トランス」のロザリオ・ドーソン、「アンダーワールド」のスコット・スピードマンらが脇を固める。

  • 製作:2014年,カナダ
  • 日本公開:2015年10月16日
  • 上映時間:112分
  • 原題:『The Captive』

予告

あらすじ

消えた娘

カナダ・ナイアガラフォールズ。雪で覆われた真っ白な景観が美しいこの街で、美しい妻・ティナとスケート選手を夢見る9歳の愛娘・キャスの3人で幸せな生活を送っていたマシュー。白い沈黙 あらすじある吹雪の日、キャスをスケート場に迎えに行った帰り道。その日もいつもの日常のはずだった。車の後部座席に残し、行きつけのダイナーに立ち寄ったほんの数分の間にキャスが忽然と姿を消してしまった。白い沈黙 あらすじ何者かに誘拐されたと主張するマシューだったが、具体的な証拠や目撃情報は一切なく、刑事たちからも疑惑の目を向けられてしまう。さらに、娘の失踪に取り乱した妻からも猛烈な非難を浴びてしまう。

8年後

あれから8年。捜査は完全に行き詰っていた。マシューは娘を守れなかった自分を責め、毎日あてどなく車を走らせてキャスを捜し廻っていた。

そんな中、ある刑事がネット上でキャスに似た少女の画像を発見した。そしてその後も消えた彼女の生存を仄めかす手がかりが次々と浮上してくる。いったい誰が、何のために。

キャスは本当に今も生きているのか。手がかりを追っていくマシューを待ち受けていたのは、空白の8年間をめぐる想像を絶する真実だった――。

映画を見る前に知っておきたいこと

アトム・エゴヤン監督

アトム・エゴヤンカナダの国際映画祭の常連監督である。亡命したアルメニア人の両親のもとに生まれ、3歳のころにカナダに移住してきた。父は画家で母は劇作家。静謐な映像美と、複雑な時系列で畳み掛ける演出を得意とする監督で、独特の視点から社会を眺め、マイノリティな題材を扱う。

代表作はラッセル・バンクスの小説「この世を離れて」を原作とした『スウィート ヒアアフター』。カンヌ国際映画祭の審査員特別グランプリを受賞している。自身のルーツでもあるアルメニアの歴史の中のオスマン帝国によるアルメニア人虐殺について扱った『アララトの聖母』も賛否両論ながら高い評価を得ている。

酷評の理由

カンヌ国際映画祭で上映された際には批評家からずいぶんと酷評を受けたようだ。酷評文を見ていると、表現したかったことと見る側の期待するものが大きく食い違っているのが理由であるように思う。

エゴヤン監督は、この作品についてこう語っている。

テクノロジーは視覚的なアクセスを与えてくれました。私たちは繋がっているという感覚を与えてくれますが、これ以上ないほどに物理的には分断されています。誘拐された子供達を見ることはできるけれど、どこにいるかわからない。犯罪があるとわかっている、見えているけれど、どこにあるかわからない。この映画はそんな奇妙さに触発されました

このように、映画の作りそのものが観客が期待するサスペンスミステリーとは少し違っている。エゴヤン監督がフォーカスしたのは、見えているけどそこにいないという奇妙さ。しかし、観客が期待しているのは深まる謎とそれが明らかになった時の得も言えぬカタルシス。そういう意味では、どうしてもバランスの悪い映画になってしまったのではないかと思われる。

一方で、同じく酷評された前作『デビルズ・ノット』に比べると、エゴヤン監督らしさが戻ってきた感じを受けたという意見もあり酷評ばかりではなかった。脚本とは別に、演出や映像美に舌を巻く人も多い。

以上のことから予告編を見て『白い沈黙』を見たいと思った人は、少し視点の調整が必要かもしれない。そのための手助けになるであろう出演者のコメントを集めてみたので、この映画を見ようと思う人は参考にして欲しい。

最終的にあきらめるまで、どのくらいの間、いつか子供に会えるという考えを持ち続けるのか。この映画で興味深いのは、ギリギリのところまで見せる点だ。人間として可能なところまでその考えを持ち続け、登場人物たちが交差する時に興味深い出来事が展開する。
マシュー役:ライアン・レイノルズ

マシューのそばにいると、ティナは怒りで麻痺してしまう。誘拐が起きた一因はマシューにもあると思うから、事件後は夫を見ることすらできないのよ。夫を見ればキャスを思い出してしまう。彼を許したいと心では思っていても、顔を合わせれば怒りがこみ上げ、ひどいことを言ってしまう。お互いを見ることさえ、彼らには不可能なのよ。映画の最初から最後まで、彼らは強く結ばれている。でもお互いの顔を見ることができない。ティナがマシューを避けているんだと思う。マシューは自ら去って、彼女が息がつけるようにしてあげるのよ。
ティナ役:ミレイユ・イーノス

虐待の加害者は、彼ら自身が被害者だったことも多いから、彼らに手を差し伸べることが重要なのよ。アトムはこうした犯罪に手を染める人たちは当然、犯罪者だということを強調しながら、彼らも人間であるということを言おうとしたの
刑事ニコール役:ロザリオ・ドーソン

これらのコメントは公式サイトで紹介されているので、『白い沈黙』を見ようと思う人はまず熟読してから見ることをお勧めする。
『白い沈黙』公式サイト

-ミステリー・サスペンス, 洋画

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