そこは、人間が喰われる地獄 ──
34年前ルッジェロ・デオダート監督が撮ったホラー映画の金字塔『食人族』が、イーライ・ロス監督が描く残酷無慈悲な食人エンターテインメントとして帰ってくる!
容赦なき描写で観客を圧倒した『ホステル』(05)でホラー映画界のカリスマにまで上り詰めたイーライ・ロス監督の6年ぶりとなる監督作品。
主演はイーライ・ロスの妻であり女優のロレンツァ・イッツォ。そして食人族は99%が先住民によって怪演される。
次々に人間が喰われていく阿鼻叫喚の残酷シーンから、あなたは目を背けずにいられるか!?
Contents
予告
あらすじ
ジャスティン(ロレンツァ・イッツォ)は大学の講義の中で“割礼を強制され、女性が過酷な状態に置かれる野蛮な部族”の存在を知る。その時、彼女は思わず、国連の弁護士である父親が何とかしてくれるはずと訴えてしまった。
そのことがきっかけで、彼女は過激な慈善活動をする学生グループの集会へ誘われる。ジャスティンはカリスマ性のある学生グループのリーダーのアレハンドロ(アリエル・レビ)に惹かれ、集会に参加することに。
アレハンドロは消えゆく部族を救う計画を立てていた。ある企業団体の地下天然ガス開発によって、ペルーの未開のジャングルが次々と破壊され、危機に瀕している先住民のヤハ族を救おうというのだ。
現地の状況の一部始終を撮影し、それをTwitterにアップすることでメディアの関心を集めようとジャスティンたちはペルーへと飛び立った。
© 2013 Worldview Entertainment Capital LLC & Dragonfly EntertainmentInc.
現地に到着した彼らは、企業団体を襲撃し「ヤハ族の故郷!自然を壊すな!」と訴え、さらにアレハンドロはジャスティンが国連職員の娘だということを利用し企業を糾弾する。彼らのゲリラ戦は大成功に終えるも、そのまま強制送還されることに。
帰りのセスナ機の中、彼らは自分たちが撮影した動画が検索トップとなり、違法な森林伐採が世界中に暴露されたことを喜んでいた。その時、セスナ機は突然エンジントラブルに見舞われ、そのままアマゾンの中に墜落してしまう。
生き残った者たちの前に現れたのは、彼らが救おうとしていたヤハ族だった。しかし、ヤハ族は学生たちを毒矢で気絶させ捕らえていく。
© 2013 Worldview Entertainment Capital LLC & Dragonfly EntertainmentInc.
目を覚ました学生たちが目の当たりにしたのは、仲間の一人が生きたまま解体され喰われていく驚愕の光景だった……
Sponsored Link映画を見る前に知っておきたいこと
1981年に公開されたルッジェロ・デオダート監督の『食人族』で使われたP.O.V.ショットとは、登場人物の視線に合わせたカメラワークで撮影する手法のことである。あの『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99)以降、ホラー映画では一般的な手法としてしばしば見られるようになった。
また、『食人族』はP.O.V.ショットを駆使した作品の元祖と言われている。しかし本作では『食人族』をモチーフにしながら、P.O.V.ショットは用いられなかった。イーライ・ロス監督のこの選択が、新たな『食人族』を生み出す大きな要因となっている。
P.O.V.ショットが発揮する無類の臨場感やリアリティを捨てた先には何があるのか?
エンターテイメントとして生まれ変わった『食人族』
P.O.V.ショットは観客がその場にいるような疑似体験ができる反面、映画的な見易さ、エンターテイメント性は損なわれる傾向にある。
ロス監督があえてP.O.V.ショットを排したのは、残酷無慈悲な描写をより鮮明に観客に強要するためだ。これにより『グリーン・インフェルノ』は、観客が思わず目を背けてしまうようなエンターテイメント作品へと書き換えられている。
イーライ・ロス版『食人族』
決してロス監督自身が本作を現代版『食人族』とか、イーライ・ロス版『食人族』だと明言しているわけではない。しかしこの作品には、モチーフでもリメイクでもない新たなやり口による『食人族』へのアプローチがなされている。
劇中に登場する食人族(ヤハ族)には、映画という存在すら知らない本物の先住民であるカラナヤク族が起用されている。
ロス監督は撮影に入る前に映画というものを彼らに理解してもらうため、わざわざ映像機材を現地に持ち込んでまで『食人族』を観せたという。メジャーな映画など一切観せることなく、彼らに『食人族』だけを与えて撮影を開始したのだ。
カラナヤク族の中では“映画=『食人族』”となったこの状態で撮影することには意味があった。
彼らは映画を『食人族』しか知らないのだから、必死に『食人族』の食人族を演じようとする。ロス監督の手腕によって『グリーン・インフェルノ』は、出演者たちのうかがい知れないところで自然とイーライ・ロス版『食人族』へと変わっていったのだ。
またこのやり方は、同時にP.O.V.ショットを排したことで失ったリアリティまで補っている。先住民による怪演は、ゾンビ映画のゾンビをゾンビが演じるようなものだ。
「カラナヤク族の中で映画とは何なのかという基準が『食人族』になっている。」
イーライ・ロス監督
イーライ・ロス監督が映画に込めた想い
2012年、“インビジブル・チルドレン”と呼ばれる団体がウガンダの反政府勢力「KONY2012」の指導者ジョゼフ・コニーの打倒を呼びかける動画をネット上にアップした。しかしその動画は1億回以上再生されたにもかかわらず、実際に軍勢力を止める力などなかった。
こうした運動は、人間が自分たちで制御しきれない悪事に対して何か正しいことをしているというただの自己満足であることを露呈してしまった。
『食人族』が公開された1981年当時にはなかったインターネットにより、現代人のこうした強迫観念が次々と浮き彫りになっている。
しかし僕たちは、現実的な恐ろしい問題よりも恐ろしい映画を観ることで、問題に対する無力さから一旦解放される。それは政治的なことに限らず、僕たちの日常に潜んでいる強迫観念に対してもそうだ。
映画に実際の問題を直接解決するような力はないかもしれないが、現代人のこうした強迫観念のはけ口となるためイーライ・ロス監督はホラー映画を追求しているのだ。
「世界中の誰もが、YouTubeのビデオを見て知ったことをツイートした。おまけに、賛同してツイートしなければ人として何かが欠けているとし、半ば強制的にツイートをするよう促されたんだ。」
「僕は人を怖がらせるのが好きだ。物事が悪い方向に向かうと、人々は物事を制御できなくなったと感じる。だからそれよりも怖いと思えるはけ口や場所が必要になるんだ。これはホラー映画以上に最適なものはないよね!」
イーライ・ロス監督
作品データ
原題 | 『The Green Inferno』 |
---|---|
製作国 | アメリカ・チリ |
製作年 | 2013年 |
公開日 | 2015年11月28日 |
上映時間 | 101分 |
映倫区分 | R18+ |
原作 | 映画「食人族」 ルッジェロ・デオダート |
キャスト
キャスト | ロレンツァ・イッツォ |
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アリエル・レビ | |
ダリル・サバラ | |
カービー・ブリス・ブラントン | |
スカイ・フェレイラ | |
マグダ・アパノビッチ | |
ニコラス・マルティネス | |
アーロン・バーンズ |
監督・スタッフ
監督 | イーライ・ロス |
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脚本 | イーライ・ロス |
ギレルモ・アモエド | |
製作 | イーライ・ロス |
ミゲル・アセンシオ・ジャマス | |
ニコラス・ロペスetc. | |
製作総指揮 | マリア・セストーン |
サラ・ジョンソン・リードリヒ | |
ホイト・デビッド・モーガン | |
ジェイソン・ブラム |
やはりアレハンドロの最期がちょっと残念でした(>_<) でも面白かったです!
来月はキアヌ・リーブスを主演に迎えたイーライ・ロスの新作『ノック・ノック』が公開されますよ。なかなか面白そうです。
正直すごく残念な出来でした。
エンターテイメントとしてもメッセージ作品としても中途半端です。
アレハンドロと其の彼女は、兎も角
他のヤハ族に捕まり、喰われた学生さん達は嫌な人じゃないのに
彼処迄、悲惨な最期を遂げた挙げ句、彼程、馬鹿にされて、迚も、気の毒ですね
そんな奴等何か、虐め返して遣るよ
映画というものを知らない先住民にいきなりそんなもん見せて大丈夫なんですかね
むしろそっちの話にびびりますが
記事とても楽しく読ませて頂きました!
グリーンインフェルノに過去作のリスペクトに留まらない、監督独自の“ホラー”へ対する眼差しがあるとの考察にグッと来ました。
特にアレハンドロの自慰シーンには、そのメッセージ性が鋭く表現されていたものと考えています。マヌケ顔で映画を見ている自分自身を見ている様で大好きなシーンです(僕自身、実際に抜いている訳ではありませんが)。
恐怖は面白い感情ですね。実生活では自尊心が邪魔をして直視や自認が困難で、またそれを原因に紐づけて様々な問題を内外から読み取れたりもします。その様な感情との向き合い方に様々な可能性を示唆してくれるであろう“ホラー”は、個人にとっても社会にとっても、より良い未来を切り開く為のヒントに成り得ると考えています。もちろんその逆の可能性のある事まで考慮すれば色々と難しい訳ですがその時、こちらのサイトの様な記事があれば状況が冷静さを保ってくれるものと感じます。
あらためて素晴らしい記事をありがとうございました。
ありがとうございます。
そのように言って頂けると、これからも多くの映画を紹介していく励みになります。
映画を見る視点だけではなく、記事を読んでくれる人の視点や、サイトの役割を改めて考えるきっかけになりました。
是非、また遊びにきて下さい。