アカデミー賞ノミネート作品『ペルセポリス』と『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』を手掛けたイランの女性監督マルジャン・サトラピによって、型にはまらない全くオリジナルなジャンル、キュートでポップなスリラー“CP(キューピー)スリラー”が誕生した。普段は自分が脚本を書いた作品しか手掛けないマルジャン・サトラピ監督は優れたビジュアリストであり、本作の脚本家マイケル・R・ペリーのジャンルの枠にはまらないスタイルを忠実に表現してみせた。
『デンジャラス・ラン』のライアン・レイノルズを主演に迎え、『ピッチ・パーフェクト』のアナ・ケンドリック、『007 慰めの報酬』のジェマ・アータートンが共演する。
- 製作:2014年,アメリカ
- 日本公開:2015年9月19日
- 上映時間:103分
- 原題:『The Voices』
- 映倫区分:PG12
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 マルジャン・サトラピ監督、実は漫画家
- 3.2 アングレーム国際漫画祭とは
予告
あらすじ
ジェリー・ヒックファンはバスタブ工場に勤める、風変わりな青年。なぜかペットの猫と犬がしゃべる。邪悪な猫と慈悲深い犬にそそのかされながら、裁判所が任命した精神科医ウォーレン博士の助けを借り、真っ当な道を歩もうとしている。彼は職場で気になっている女性フィオナに接近する。だがその関係は、彼女がデートをすっぽかしたことをきっかけに、突如殺人事件へと発展してしまう。慌てて証拠の隠滅を図るが、ジェリーはさらに暴力の世界へと引きずり込まれていく。
そんな折、彼が本当に愛したたったひとりの女性リサと仲良くなる。
しかし、またしても邪悪な猫と慈悲深い犬という2匹のペットに導かれ、選択を迫られる。正気を保つために努力するか、それともはるかに邪悪な道に溺れていくか・・・
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映画を見る前に知っておきたいこと
マルジャン・サトラピ監督、実は漫画家
本作はかなり異色のスリラーで、公式サイトでも“CP(キューピー)スリラー”という聞いたこともないような紹介がされている。本作の脚本家マイケル・R・ペリーは『パラノーマル・アクティビティ2』などのホラー作品を手掛けている。執筆の際は、出来る限りリサーチを行う事を信条としている。マイケルの脚本がいくら型にはまらないといっても、本作を“CP(キューピー)スリラー”にしてしまったのは、マルジャン・サトラピ監督の映像によるところが大きいと思う。
このマルジャン・サトラピという女性監督は、実は映画監督というよりは、漫画家としての評価のほうが高い。これまで映画は『ペルセポリス』と『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』という2作品を手掛けているが、原作はどちらも自身の漫画だ。
イランでの幼少期とヨーロッパでの少女時代を描いた自伝的作品『ペルセポリス』の第2巻は、2002年のアングレーム国際漫画祭で最優秀脚本賞を受賞している。そして、マルジャン・サトラピの共同監督で長編アニメーション映画が製作され、プレミア上映となったカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、フランスで大ヒットを記録した。『ペルセポリス』で漫画・映画ともに世界的な名声を得た。
さらに『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』では、アングレーム国際漫画祭の最高賞である最優秀作品賞を受賞している。この作品は自身が監督を務め実写映画化された。バイオリンを壊されて死ぬ決意をした天才音楽家が、自身の人生を振り返る様を幻想的な映像で綴った切ないラブストーリーとなっている。
マルジャン・サトラピはキャリアを漫画家としてスタートし、映画は本作でまだ3作目だが、実に幅広いジャンルでそのキャリアも濃密だ。まだ映画監督としてどう評価していいかわからないが、すでにその映像感覚は優れたビジュアリストであることを証明していると思う。個人的にはこれからの活躍に注目したい監督である。
アングレーム国際漫画祭とは
マルジャン・サトラピが『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』で最高賞である最優秀作品賞を受賞しアングレーム国際漫画祭とは、あまり聞き慣れないかもしれないが、フランスで最も古い漫画関連のイベントであり、漫画におけるカンヌとも言われるほど権威あるものなのだ。そこでの最高賞は、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞するようなものと思ってもらえればわかるだろうか。
マルジャン・サトラピ監督には、いつかパルムドールと2冠を達成してもらいたい。おそらく未だかつて
いないはずだ。世間的にはあまり評価されることではないかもしれないが、個人的には映画も漫画も大好きなので、偉業と呼べる。
そんなマルジャン・サトラピの漫画作品『ペルセポリス』と『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』は日本版が出版されているので、マルジャン・サトラピ監督の世界を知りたい人はぜひ読んでみてほしい。日本は世界的な漫画大国だが、世界には他にもおもしろい漫画が存在している。