映画を観る前に知っておきたいこと

ザ・ウォーク
その純粋な狂気が美しい

投稿日:2016年1月12日 更新日:

命綱なし
一生に一度の
狂った世界を楽しめ

「それは史上、最も美しい犯罪」のキャッチコピーで製作された2008年の映画『マン・オン・ワイヤー』。この作品は、1974年にワールド・トレード・センターのツインタワーの間に繋いだワイヤーを命綱なしで渡ったフランスの大道芸人フィリップ・プティを映したドキュメンタリーである。その年、アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を始め、世界中のドキュメンタリー部門を総なめにした。

しかし、この映画でもフィリップの実際の挑戦は再現映像に留まった。彼のこの狂気じみたチャレンジには映像が残されていないのだ。

本作では、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など常に最先端のVFX技術を駆使して映画を撮ってきたロバート・ゼメキス監督が自身の集大成として、このフィリップ・プティの命懸けの挑戦を完全に映像化する。

地上110階、高さ411m、フィリップ・プティの狂気を3Dで体感せよ!

予告

あらすじ

フィリップ・プティ(ジョセフ・ゴードン=レビット)は8歳の時、世界一の綱渡りサーカス団である“白い悪魔たち”の妙技に魅せられた。以来,彼は独学で修練を重ね“白い悪魔たち”の門を叩く。しかし、座長のパパ・ルディ(ベン・キングズレー)と決裂してしまったフィリップはパリで大道芸人として綱渡りを披露していた。

1973年、世界最高層のワールド・トレード・センタービル建設のニュースを知ったフィリップは、このツインタワーの間にワイヤーを架けて綱渡りすることに心を捕われてしまう。そして、彼はその違法な挑戦の実現に向けて動き出す。

ザ・ウォーク

美術学校生のアニー(シャルロット・ルボン)とカメラマン志望の青年ジャン・ルイ(クレマン・シボニー)の協力を得たフィリップは、正しいワイヤーの張り方を習得するため、パパ・ルディに頭を下げて“白い悪魔たち”の下で改めて修練を積むことになる。そして、ノートルダム寺院の二つの塔の間にワイヤーを架けた綱渡りを敢行し、パリっ子たちの喝采を浴びた。

ザ・ウォーク

いよいよ、ニューヨークへ。フィリップは夢の実現のためした準備を始める。建築作業員や松葉杖のケガ人を装ってタワーに侵入し、警備員の巡回やトラックの搬入時間をチェック。タワー間の正確な距離を調べ、ワイヤーを通す方法を模索。仲間と共に準備を進めてゆくのだった。

決行の日は1974年8月6日朝6時。その前夜に搬入作業員を装ったフィリップたちはワールド・トレード・センターの屋上へと向かうが、思わぬトラブルがに見舞われる……

映画を見る前に知っておきたいこと

フィリップ・プティの挑戦は結構有名な話だが、ロバート・ゼメキス監督がこの映画を撮るまで、実際の映像が残されていないことは知らなかった。ふと冷静になってこれが何を意味しているのか考えてみた……

その純粋な狂気が美しい

フィリップ・プティは狂っている。ツインタワーの間を命綱なしで渡る時点で狂っているが、そんな話ではない。動機があまりに衝動的で純粋なことに最もその狂気を感じるのだ。

実際の映像が残されていないことが、彼の願望が有名になりたいといった類のものではないことを証明している。ましてや注目を浴びたいなら決行時間に朝6時は選ばないだろう。売名行為でないのなら、この挑戦を理解できる人がいるだろうか?

30年以上経った今になって、ゼメキス監督によって映画化されるということは、フィリップ・プティの狂気に多くの人が魅せられている証拠でもある。もし彼の目的が売名行為であれば、こうはならなかっただろう。

このイカれた挑戦は、いま芸術的で美しいものに見えるのだ。最も本人は芸術なんて思っちゃいないだろうが……

ロバート・ゼメキスも世に出ていない1974年、フィリップ・プティ自身も含め、いったい誰がこの挑戦が映画化されると思っただろう?

「夢を実現させるための死なら、それも美しい」

フィリップ・プティ

評価

『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』の中に登場した3D映像で、実際にゼメキス監督の映画が観られる時代がやってきた。常に最先端の映像技術を取り入れようとする彼が挑んだこの映画にある臨場感は、想像力を一切必要としないほどリアルだ。

そして、実際の映像が残さていないことが何よりもこの映画の価値を高めていく。

ゼメキス監督の脚本と映像世界は、批評家たちの間でも「スリリングな視覚効果と実話に基づいた人間ドラマのバランスが絶妙」と絶賛された。

-伝記, 洋画
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