世界の映画祭で高い評価を得る是枝裕和(これえだ ひろかず)監督は『DISTANCE/ディスタンス』(2001)『誰も知らない』(2004)『空気人形』(2009)『そして父になる』(2013)『海街diary』(2015)に続き本作でカンヌ国際映画祭への正式出品は6作目となった。また主演の阿部寛とは『歩いても 歩いても』(2008)『奇跡』(2011)に続いて3度目のタッグとなる。さらに母親役を樹木希林をはじめ、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキーと豪華なキャストが顔を揃えた。
大人になりきれない男と年老いた母を中心に、夢見ていた未来とは違う現在を生きる家族の姿を描いた人間ドラマ。
第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品作品。
- 製作:2016年,日本
- 日本公開:2016年5月21日
- 上映時間:117分
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3 映画を見る前に知っておきたいこと
予告
あらすじ
15年前に文学賞を一度取ったが、それっきり売れない作家の良多は生活のため探偵事務所で働いていた。しかし、周囲には「小説のための取材」と言い訳を繰り返していた。そんな良多に愛想を尽かして離婚した響子との間には11歳の息子・真悟がいた。養育費もまともに払えない良多であったが、別れた息子との時間が唯一の楽しみだった。しかし、響子には月に一度の父親ごっこと言われてしまう。
響子に未練たっぷりの良多は探偵事務所で働いて身につけた技術で響子を張り込む。そして響子に新しい恋人ができたことを知ってしまうのだった。
良多の母・淑子は苦労させられた夫を突然の病で亡くしてからは、団地で気楽な独り暮らしをしていた。
良多がショックを受けていたある日、たまたま良多と響子と真悟が母・淑子の家に集まることに。台風で翌朝まで帰れなくなった4人は一つ屋根の下で一晩を過ごすことになるのだった……
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映画を見る前に知っておきたいこと
是枝裕和(これえだ ひろかず)監督
本作で最も重要なのは是枝裕和(これえだ ひろかず)監督の作品だということだ。それは第一に国内外での評価の高さが理由である。彼が新作を撮る度にカンヌをはじめ、多くの国際映画祭に招待される。そしてその受賞歴の多さも彼の作品の注目度を物語っている。
是枝裕和監督の作品の中でも『そして父になる』(2013)は国内外の評価、興行収入ともに大きな成功を収めた。福山雅治が父親役で主演したことからも日本国内では話題性もあり、映画観客動員ランキング2週連続第1位を記録した。今でも多くの人の記憶に残っている映画だと思う。
『そして父になる』は第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されたが、上映後に約10分間に渡ってスタンディングオベーションが起こった。結果、審査員賞を受賞する快挙を達成した。話題性などまったくない異国の地でのこうした評価はこの映画には普遍的な感動があることを意味した。
『そして父になる』の素晴らしいところは、カンヌ国際映画祭で評価されるようなアート系の映画でありながら国内で大ヒットを記録していることだ。内容的には割と淡々とした人間ドラマであるが、そこに是枝裕和監督の考察の深さや表現力の高さが伺える。そして本作『海よりもまだ深く』も同系の作品であると思う。日本を代表する監督の真骨頂がここにあるはずだ!
もう少しだけ是枝裕和監督の素晴らしさを紹介するならば、彼の作品のほとんどは自身が脚本も手掛けているということだ。『海街diary』など原作があるものもあるが、『そして父になる』をはじめオリジナル脚本の多さには驚かされる。もちろん本作も是枝裕和監督のオリジナル脚本となっている。
自身で脚本も手掛けることができるので彼の作品は是枝裕和という色をより濃くしている。一度ファンになれば期待を裏切らない監督ではないだろうか。